第49話 プライベート
GW最終日、本来今日はバイトだったが剛が「沼津帰りなんだから最終日くらい休みな」と言うので彩葉はゆっくりすることにした。
だが、いざ休みになっても何をしていいのかわからないので彩葉はとりあえずリビングのTVをつけた。
TVを観ていると茨城のカフェが特集されていて、彩葉は少し気になったのかカフェの場所をスマホのマップで確認する。
「赤塚のカフェか」
家でボーッとしてるのも暇なので特集されていたカフェに行ってみることにした彩葉は、バイクに乗る服装に着替えると家の戸締りをしてガレージに停めてあるFXを外に運び出した。
彩葉はFXのエンジンを始動して5分〜10分程暖機をすると、赤塚に向かってFXを走らせる。
途中まで通学の時のルートを使い、赤塚まで家から35分くらいで目的カフェに到着した。
特にバイク向けの駐輪スペースがなかったので、1台だけポツンと停まっているタイガーカラーのz900rsの隣に停めた。
カフェの店内に入ると「いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ」と店員が言うので、彩葉がどこのテーブル席にするか選んでいると「あれ?あなたは確か…」と見知らぬ若い女性に話しかけられた。
「あーー!やっぱりこの間、私が停めたFX乗ってる子だ!えーと…如月彩葉ちゃん!」
女性がそう言うと彩葉は女性が誰なのか思い出した、以前に停められた白バイ隊員の人だった。
「あっ…白バイ隊員の…佐々木さん?でしたよね?」
彩葉がそう言うと「そうそう!佐々木莉子だよ!別に下の名前でいいよ」と気さくな感じで莉子はレモンティを飲みながら言った。
「まさかこんな形でまた会うなんてねぇ…彩葉ちゃんもよくこのカフェにくるの?」
莉子が聞いてきたので、彩葉は「いえ、初見です」と言うと莉子は「そうなんだ、あっ!良かったら向かいの席どうぞ」と言ってくれたのでせっかくなので同じテーブル席に座ることにした。
店員が注文を聞きに来たので、彩葉はアイスティーとチョコレートパフェを注文すると莉子がバイクのことについて話してきた。
どうやら莉子は、今日は休暇らしい。
「マフラーはちゃんと基準に適合したものに交換した?」
莉子が以前に彩葉を停めた際に少し注意をしたマフラーについて指摘すると、彩葉は首を横に振って交換してないというと「あーやっぱりね」と言った感じで笑っている。
「私はあのマフラーが気に入っていますので、それにインナーサイレンサーは入っているので車検は通るとは思いますよ…」
彩葉がそう言うと莉子は「別に違反切ることはしないよ」と少し彩葉をからかうように言った。
「私も立場上、改造車を見たら停めなくちゃいけないことになってるから停めるけどさ?警察官である前に私だってバイク好きの端くれだから自分好みにカスタムしたくなる気持ちはわかるんだよ」
莉子がそう言うと、彩葉は「外に停まってるバイクって…」と聞くと莉子は自分のバイクと答える。
彩葉はよく考えてみたら莉子のz900rsもマフラーがフルエキで交換されていて、結構音が響きそうだなーと思った。
「私のz900rsのマフラーは一応認証取ってるフルエキのショート管だよ!回すと良い音するけどアイドリングと低回転域はわりと静かかなー、彩葉ちゃんのFXの方が断然うるさいよ」
莉子が言うには、最近のマフラーの規制は厳しいみたいで認証された社外マフラーで定められた近接排気騒音内のマフラーしか車検が通らないらしい。
しかし、彩葉や愛琉のように年式が古いバイクは当時の規制が適用されるので現行のバイクと比べるとかなり規制が緩いのでインナーサイレンサーさえ入っていれば大抵の旧型のバイクは車検が通ってしまう。
2人でバイクの話をしていると注文したアイスティーが来たので、彩葉はミルクとガムシロップをアイスティーに投入するとストローでかき混ぜてミルクティーにした。
「ねぇ?彩葉ちゃん?せっかくだしLINE交換しない?今度は彩葉ちゃんともツーリングしてみたいし!女友達でバイク乗ってる子いなくてさー、ツーリング仲間が欲しかったんだよね」
莉子がそう言うと「構いませんよ」と彩葉は言いながらLINEのQRコードを莉子に見せると、莉子は自分のスマホでQRコードを読み取って友だち追加をすると彩葉も莉子のアカウントを追加した。
莉子がなぜ白バイ隊員になろうと思ったのか彩葉が聞いてみると、よくありがちな子供の頃に見た白バイ隊員のカッコ良さに憧れてーとか交通事故で友人や大切な人を失ったことがキッカケで白バイ隊員になったという訳ではなく、単純にバイクのテクニックを身に付けたかったからだと言う。
現在23歳の莉子がバイクの免許を取ったのは彩葉と同じ16歳の時だったらしい、子供の頃から父の影響でバイクが好きで特に好きだったのが大型のバイクだった。
「私としては16歳で大型二輪免許が欲しかったんだけどさー、あれって車と同じ18歳からでしょ?しかも大抵の教習所が中免(普通二輪)を持っていないと大型二輪教習を受けられないし…とりあえず16歳で中免を取って早く18歳になるのを400のバイクに乗って待っていたわ」
莉子がそう言うと彩葉は黙って頷きながら話を聞いていた、大型バイク好きの莉子が16歳の時に乗っていた車種は400ccのネイキッドバイクの中でも大きいSUZUKIのイナズマでマフラーや軽量化などのチューニングを施して400ccながらもナナハンに引けを取らないパワーだったらしい。
当時は白バイ隊員になろうなんて思わなかったらしく、18歳の誕生日を迎える目前の時に観た白バイ隊員の大会の動画を観て度肝を抜かれたという。
16歳で中免を取って峠などで走りのテクニックに磨きをかけていたのでそこそこ自分のテクニックに自信があった莉子だったが、白バイ隊員には足元にも及ばないと思った。
それならば自分も白バイ隊員を目指してもっとバイクのテクニックを身に付けようと思ったのがキッカケだったようだ。
「まぁ…実際に白バイ隊員になるには過酷な訓練と試験があるからめちゃくちゃ大変なんだけどね、自分で申し出て白バイ隊員になれるわけではないし…ほんとにバイクが好きじゃないと厳しいよ」
莉子はそう言うと、時刻が気になったのか腕時計を確認する。
これから用事があるらしく莉子は席を立ち上がると会計に向かった、彩葉もそろそろ帰ろうと思っていたので一緒に店を出ることにした。
「今日は私が奢るわ」
莉子がそう言うので「ありがとうございます」と彩葉はお言葉に甘えることにした。
2人は店の外に出ると、お互いにヘルメットとグローブを装着するとエンジンを始動した。
莉子の言ってた通りz900rsの認証のショート管は、冷間時はそこそこ響いているがアイドリングが落ち着いてしまえば静かだった。
「それじゃ、今日はありがとね!そのうちツーリングのお誘いのLINEをするね」
莉子はそう言うとバイクに跨って店の駐車場から走り去っていった。
まさか白バイ隊員と連絡先を交換するとは思わなかった、でもこれはこれで楽しいバイク仲間が出来たと彩葉は思った。
彩葉もバイクに跨ると自宅まで帰っていった。
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