第42話 浜名湖ツーリング
ツーリング当日の早朝5:00、天気は快晴。
彩葉は千代田PA上りにいた。
愛琉とルナはあと少しで合流できるとLINEが送られてきた。
彩葉はエナジードリンクを飲んで休憩スペースで待っていると、愛琉のヨンフォアとルナのゼファーの音が近づいてきた。
「おはよー、ごめん待った?」
ルナが聞いてきたので「私も10分程前に来たところ」と彩葉は言った。
愛琉とルナはトイレを済ませるとインカムを設定して3人は改めて浜名湖に向けて出発した。
先頭は彩葉、真ん中にルナ、最後尾に愛琉の順番で本線に向かっていく、本線合流の加速ポイントで彩葉は加速すると一気に本線に合流した。
ルナは「うわっ!はやっ!」とナナハンのパワーに驚きながらも彩葉の後ろについていく。
「このツーリングから戻ったらアタシは大型の免許を取りにいくよ、この間の町田ツーの時も思ったけどやっぱりナナハンのパワーを見てしまうと大型乗りたくてしょうがないわ」
愛琉が最後尾からインカムを通して言うと、「大型ツーリングできるのを楽しみにしてる」と彩葉は言った。
早朝なので渋滞もなく順調に三郷料金所まで来ると、首都高のC1経由で渋谷3号線を通過して東京料金所までくると東名高速に入った。
「海老名のSAに寄ろうよ」
ルナがそう言うので、東名の横浜町田JCTを過ぎると海老名SAが出てきたので3人はSAに入っていく。
流石にTVなどでも取り上げられるだけあってかなりの規模のSAで広い、3人はバイク駐車スペースに停めると海老名SAの散策を始めた。
海老名SAは全国的に見ても最大規模の商業施設があるSAで休日はいつも駐車場が混雑してる程だ。
まだ8:00前だというのに、駐輪場には結構な車が停まっている。
海老名SAはメロンパンが有名なので3人はメロンパンを買ってベンチに座って食べた。
「やばっ!メロンパンめっちゃうまっ!」
愛琉はもうひとつ買おうかなと言うので「2キロ太ったんじゃなかったの?」と彩葉がツッコむと愛琉は、食べたい欲を抑えて買いに行きそうになってる足を引き止めた。
「さ、さぁ!あまり長居すると食の誘惑がやばいからさっさと行くわよ!」
愛琉はそう言うと足早にバイクの駐車スペースに歩いていった、彩葉とルナは顔を見合わせてヤレヤレと苦笑いをしながら愛琉の後についていく。
3人はバイクのエンジンを始動すると、再び本線に向かって走り出した。
東名高速をひたすら進むと大井松田ICを過ぎて左ルートと右ルートが出てきたので、彩葉は「左と右どっち行く?」と2人に聞くと「右で」と偶然にも愛琉とルナが声を揃えて言うので今回は右ルートで行くことにした。
インカムでくだらないお喋りをしながら走っているうちにあっという間に御殿場までくると、彩葉達は御殿場JCTの新東名側に分岐すると法定速度が120キロ区間に突入する。
彩葉はギアを3速まで落とすと一気に加速してメーター読みで120キロまで加速すると新東名のトンネル内でFXのマフラー音が響き渡る。
ルナと愛琉も負けじと加速していくが120キロにもなってくると400ccの排気量では回転数が高くなってしまいエンジンが唸りあげている。
「うわぁ、この速度域だと5速でもかなり回転高くなっちゃって、めちゃくちゃ唸っててなんか壊れそう…」
ルナがゼファーのエンジンを心配してると、「剛さんに整備してもらったばかりだから大丈夫よ」と同じくエンジンが唸りあげているヨンフォアに乗っている愛琉が言う。
会話を聞いていた彩葉は少し意地悪したくなったのか、5速のままスロットルをさらに開けてスピードを上げると2人をグイグイ離していく。
「ちょっ!彩葉ぁ!そんなにスピード上げられるとアタシらはついていくのキツいんですけどぉ〜」
愛琉とルナはギアを落としてフルスロットルで彩葉についていくと、彩葉はスピードを緩めて2人に合わせてくれた。
「ごめんごめん、ちょっと意地悪したくなっちゃって」
彩葉が笑いながら言うと「性格最悪ね!」と愛琉は運転しながら大声で叫んだ。
その後は120キロ巡行で新東名高速をひたすら走り、浜松浜北ICで高速を降りた3人は国道362号線経由で浜名湖方面に向かった。
姫街道と呼ばれる浜名湖の北側を通ってる道までくると浜名湖が綺麗に見えた。
「おぉぉ!!浜名湖だぁぁ!!」
愛琉は小学生男子のように1人で大声で叫んでいる。
インカム越しに声が聞こえてくるのでめちゃくちゃうるさい。
彩葉が「もう少し声のボリュームを抑えて」と言ったそばからまた何か大声ではしゃいでいる。
しばらく走っていると浜名湖佐久米駅で何やら人が集まっていて、気になったルナが「ちょっとあの駅寄ってみない?」と言うのでせっかくなので休憩がてら寄ってみた。
浜名湖佐久米駅は天竜浜名湖鉄道の駅のひとつで、ホームまでいくと人が集まっている理由がわかった。
なんと駅の周りにかもめの大群が群がっていて、電車がくると一斉に飛び上がった。
「おぉ!すげぇーー!」
コイツは精神年齢が10歳程度なのかと言うくらい愛琉がはしゃいでいる中、ルナはスマホのカメラで写真や動画を撮っている。
10分程かもめで楽しむと3人はバイクの元へ戻ると同い年くらいの女の子が彩葉達のバイクを見ていた。
彩葉達が近づくと女の子は気づいたのか軽く会釈する。
「すみません!カッコいいバイクだったので、ついジロジロ見てしまって」
女の子が申しわけなさそうに言うと「別に大丈夫だよ」と彩葉が言う。
女の子の隣にはHONDAのエイプ100スペシャルに停まっていて恐らくこの子のバイクだろう。
「この3台の魅力がわかるなんてあなたいい趣味してるわね!そのエイプはあなたのよね?ドリームCB750FOURのカラーをイメージさせるエイプスペシャルに乗ってるだけあるね!ちなみに高校生?」
愛琉がそう聞くと女の子は「高校3年です」と言うので、ルナが「私達と同い年だね」と同級生だとわかるとすぐ打ち解けてバイクの話になった。
エイプ乗りの女の子は、この辺に住んでいるらしくこれから少ししたらバイトに向かうらしい。
気だるげな感じのタレ目で疲れてるように見えるが単純にそういう性格なんだろう。
高1の夏までは幼なじみの親友ががいたらしいが、親の都合で山梨に引っ越したらしく未だにLINEなどで連絡は取り合っているがたまにしか会えないみたいだ。
幼なじみの親友は引っ越した先の山梨で知り合った友人に影響されてキャンプにハマったらしく、以前に幼なじみと山梨の友人と3人で大井川でキャンプしたこともあるんだとか。
まだお昼前だが、彩葉達は浜松までひたすらバイクを運転してきたので相当お腹が空いたのか3人共お腹の虫が鳴っていた。
それを聞いたエイプ乗りの女の子はクスッと笑いながらオススメの食事処を教えてくれた。
「駅の目の前にある、あそこのうな重美味しいから是非食べてみて!ちょっとお値段張るけどね…あっ、そろそろバイトの時間だからそろそろ行くね!」
女の子はエイプのエンジンを始動するとゴーグルが取り付けられた白のジェットヘルメットを被り、エイプに跨ったまま後ろを向いて彩葉達に軽く手を振るとバイト先へ向かっていった。
彩葉は腕を組んでずっと何かを考えていると、ルナが「彩葉?何か考え事?」と聞いてきたので考えていることを話した。
「さっきの子さ?山梨に引っ越した幼なじみがいるって言ってたじゃん?一昨年のGWに山梨に行ったときの帰りの談合坂SAだったかな?そこで浜松から来たっていう姉妹と会って山梨に引っ越す話をしてたんだよねぇ、もしかしたらその子が…いや考えすぎかな…さ、うな重でも食べに行こうよ!」
彩葉はそう言うとFXのスタンドを払い、道路を挟んですぐ向かいのうなぎ屋までバイクを押していった、愛琉とルナも同じように彩葉についていく。
彩葉達はお店の前にバイクを停めると早速店内に入っていった。
浜名湖で取れた新鮮なうなぎなだけに1番量のある大で4000円以上する…
「せっかくここまで来たんだし、ケチらずに大を食べるしかないでしょ!」
愛琉がそう言いながら「すいませーん、大3つで〜」と頼んでしまった。
彩葉とルナは顔を見合わせて「まじか」と声にしてしまったが、確かにここまで来て中途半端なのは後悔しそう…
よし、ならば浜名湖のうなぎを存分に味わってやろうじゃないか!
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