第108話 生徒会室にて

 生徒会の会議が始まる30分前、先に生徒会室に来ていた生徒会長である村上と書記である日野は、沈黙でいた。


「おい、日野。言いたいことがあれば言え。昨日からお前がオレに対して何か言いたいことはわかってる」


 そう言って沈黙を破ったのは村上だった。


「言ってもいいのか?」


 日野は、村上に確認する。


「なんでも言え。オレと日野は、チームメイト。そうやって黙られるほうが困る」


 村上は、日野との関係を壊したくないため言う。


「わかった。オレが言いたいのはお前が決めたルールについてだ」


「ルール? あぁ、あの成績が悪い奴を退学されるやつか?」


「あぁ、それだ。オレは、そのルールを無くすべきだと思う。誰もがお前みたいに成績優秀なわけじゃないんだ。お前の好き嫌いで退学されられる生徒が可愛そうだ」


 日野がそう言うと村上は、ふっと笑った。


「日野、それは誤解だ。オレは、成績の悪い奴を嫌いだとは言ってない。そもそもあのルールを作ったのは、単なる遊びだ。日野がやめてくれというなら辞めよう」


「っ! お前、さっきの本気で言ってるのか?」


 キレた日野は、村上の胸ぐらを掴んだ。


「そんなカッカすんなよ。遊びって言ったのは、悪かった。だが、よく考えてみろ。あのルールが出来てからオレ達2年の成績は、全体的にぐんと伸びた。敵に塩を送るわけじゃないがオレは、嬉しい」


 村上が何を考えてその発言をしているのか日野には、理解出来なかった。なぜ敵チームの成績が上がって嬉しいのだろうかと。


「はぁ、お前の考えはよくわからん。お前に何か考えがあるのならルールは、残してもいい。どうなんだ?」


 日野は、村上に尋ねた。


「考えはある」


「そうか。ならこの話しは終わりだ」


 満足したのか日野は、村上と話すのをやめてイスへ座り生徒会会議の準備をし出した。すると生徒会室のドアが開き副会長の早見が入ってきた。


「こんにちは。あれ、2人とももしかしてまたケンカ?」


「心配するな琴梨。ケンカというよりいつもの言い合いだ」


 村上がそう言うと早見は、小さなため息をついた。


「それならいいですけど……。あっ、それよりさっき凜音ちゃんが後で陽翔君と話したいと言ってましたよ」


「凜音が……伝えてくれてありがとな琴梨」


「いえ。それより今日の会議は、私達三人でやるんでしたよね?」


「あぁ、そうだ。じゃあ、さっそく始めるぞ」


 村上がそう言うと早見と日野は、きりかえるのだった。


───────────


「さて、会議も終わったし遊びにいくか」


 村上は、一人生徒会室から出て廊下を歩く。


「あっ、陽翔君だ!」


「ほんとだ、陽翔~」


 同じ学年の女子二人は、村上を見つけるなり駆け寄ってきた。


「お~愛美と梨央じゃん。今日も部活お疲れ様」


 村上は、女子二人がユニフォーム姿なのを見て言う。


「ありがとう。そう言えばさ陽翔君、なんでバスケ部やめたの?」


「生徒会で忙しいからやめたんだ。心配かけたのならごめんな」


「ううん、急にやめちゃったから驚いたよ。生徒会頑張ってね」


「あぁ、頑張る。じゃあまたな愛美、梨央」


 村上は、女子二人に手を振りこの場を立ち去る。 


「ほんと、陽翔は人気者だな」


 立ち去り向かった先に髪が長い一人の女子が村上を見てクスッと笑った。


「人気者……か。まぁ、そのためにこの2年信頼されるよう努力してきたからな。凜音こそオレのこと信頼してるだろ?」


 村上は、チームメイトの宇田川凜音に言う。


「あぁ、信頼してるよ。けど、陽翔のチャラさには、少しひくよ。お前を本気で好きな奴が可愛そうだ。例えば琴梨とかね」


「琴梨か……」


「この前告白されたんだろ?付き合うつもりはないのか?」


「今は、誰とも付き合わない。だから琴梨には、返事は、卒業の後でと言っておいた。オレは今、チームのために精一杯なんだ」


「へぇ~精一杯ね。まぁいいや」


 凛音は、話題に飽きたのか背を向ける。


「話ってそれだけか?」


「あ~うん。そうだよ。じゃあね陽翔」


「さて、帰るか」


 どこか寄ろうとしたが、気分が変わり寮へ帰ることを決めた。






《プロフィール30》

日野佑馬ひのゆうま

・クラス       2年4組30番

・2学期期末考査    216人中9位

・その他

生徒会書記を勤めている。

村上とは、同じチームで去年から親しい関係。

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