第75話 例え大きな出来事が起こっても君にとっては真の目的のための材料に過ぎない
千佳の部屋にお邪魔し、オレは椅子へ千佳はベッドの上へとそれぞれ座った。
「で、話って?」
「もちろん、今朝の学年チャットでの騒ぎのことです。一樹君は、あれを見てどう思われましたか?」
「どうとは?」
「小野寺さんが濱野さんに嫌がらせをしていたというメッセージを信じているか信じていないかです」
これは、何か試されているのだろうか。おそらく千佳は、オレが濱野と小野寺に何があったのか知っていると気付いている。なら、ここは、信じていないと言うのは危険だ。
「どっちでもないな。無名であるメッセージの内容が本当かどうかなんてわからないし。千佳は、どうなんだ?」
「私は、信じてません。理由は、小野寺さんが優秀な生徒であり嫌がらせなんてしない生徒だと思うからです」
「そうか……」
おそらく嘘だろうけど。
「オレとしては、今回の学年チャットでの噂はかなり都合がいい。このまま噂が広がれば先輩や先生にも伝わり小野寺は、退学を選ぶ可能性がある」
オレが思うことを素直に話すと千佳は、嬉しそうに微笑む。
「そうですね。一樹君にとっては、この噂は、かなり都合がいいですもんね。ところでなぜ私にこの噂は都合がいいものと言ってくださったのですか?」
「無名であんな発言をしたのは、一人しか思い付かない」
オレは、イスから立ち上がり座っている千佳を軽くベッドへ押し倒した。千佳は想定していなかったので簡単に押し倒された。
「千佳、お前が無名でメッセージを送ったんだろ?」
オレは、顔色一つ変えず千佳に尋ねる。
「どうしてそう思うのですか?」
一瞬、この状況に驚いていたがいつもの余裕な笑みで目の前にいるオレを見る。
「千佳は、オレの計画を協力してくれている……それが何よりも証拠だ」
「なるほど。私が一樹君の望む小野寺さんを退学させようということのお手伝いを。正解です。私が今朝、学年チャットで噂を流しました。いえ、噂ではありませんね。事実を……」
千佳は、わざと訂正した。
「千佳は、濱野が小野寺に嫌がらせを受けていたことは、どこで知ったんだ?」
一番の疑問が残りオレは尋ねた。
「実は、一華さんへ大量のテストをポストに入れるという嫌がらせの件は、楓君が小野寺さんに協力していまして」
「松原?」
予想していなかった人物が出てきたな。
「もちろん、楓君が協力していたことは、小野寺さんを退学させるための材料に過ぎませんけど」
「つまり千佳は、濱野が小野寺に嫌がらせを受けていたことは松原から聞いてたんだな」
オレがそう確認すると千佳は、コクりと頷く。
「一樹君、私はあなたがしてほしいことならなんだってやりますよ」
そう言って寝転んだままの千佳は、オレの手の甲に手を添えてきた。
「千佳にとってオレはなんだ?」
「尊敬する人であり愛する人です。私がこんなリスクの高いことにわざわざ協力すると思いますか?」
「いや、思わない。オレだからこんなことをしたのか」
「その通りです。私の性格として、愛するものへの忠誠心は、かなり重く、どうでもいいものに対しては、興味を示しません」
「それは、知ってる。じゃあ、そろそろオレは、行く」
そう言ってオレは、部屋を出る準備をする。すると体を起こしながら千佳がムスッとした顔でこちらに向かって言ってきた。
「女の子を押し倒して放置ですか。一樹君もひどい方ですね」
「何か期待してたのか?」
好奇心で千佳をからかってみた。
「さぁ、どうでしょうか。男の方に押し倒されるなんて初めてだったのでいつもの表情が崩れそうになりましたよ。一樹君が不意打ちするなら私も何か考えなければなりませんね。そのポーカーフェイスを崩してみたいですし」
そう言った千佳は、オレを見た。
「一生無理だろうな……。ところで千佳も来るか?」
「来るとは……?」
「今から濱野に朝の件について聞きに行くんだ。お前も興味あるだろ?」
「自分がやったことが相手にどのように影響を与えたのかとても興味があります。ですが、私とあなたが一緒に行けば怪しくなります。ですから辞めておきますね」
「そうか……じゃあ、また学校で」
そう言ってオレは部屋を出た。
部屋を出た後、千佳は、一人窓の外を見つめ
「手伝うのもほどほどにしないと私も危ないですね……」
と小さく呟いた。
そして、千佳は、スマホをカバンから取り出し、電話をかけた。
「あっ、穂乃果さん。少しお願いが………」
──────────
「あなたが私を呼んだの?」
体育館前、小野寺は、何者かに呼び出されここへ訪れていた。
「まぁ、そうかな」
そう言ってスマホを見るのは、松原だった。
「私、来る必要ある?」
松原の隣で笠音は、呟く。
「リーダーが来るまでは、ここで待機だ」
松原は、笠音に小さな声で伝えた。
「わかったわよ……」
笠音は、松原からの言葉にイラッとしたのか舌打ちした。
「そう言えば、小野寺さんと話すのははじめてだったよな?」
松原は、初対面ではないがここでは、初対面を装い、小野寺に尋ねる。
「はい。そうですね……で、私はなぜここに呼ばれたのですか?」
小野寺は、松原と笠音のことを見て言う。
「えっと……」
松原が時間稼ぎのため何か雑談をしようと考えていたが、その時、足音がした。
「呼ばれた理由、それはあなたが一番よくわ
かっているのではないですか?」
「あ、雨野さん!? なんでここに……」
「私の名前を知っていてくれて嬉しいです。初めてまして、小野寺雪さん。私は、雨野千佳です」
雨野は、そう言って小野寺のいる方へと距離を詰める。
「理由って朝の学年チャットのこと?」
小野寺は、心当たりのあることを言う。
「えぇ、そうです。私が今日、あなたをお呼びした理由ですが小野寺雪さん、あなたを助けるためです」
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