パートナー試験編
第29話 偽りの自分
関係者以外誰も知らない場所、そんなところに『フォースプロミス』という場所がある。今では、lT企業として有名だが、それは、もう少し先の話。
IT企業といわれているが、そこでは密かにある計画が進められていた。その計画で必要とされたのが小さい子供から高校生といった幅広い年齢層の子供。その年齢層の子供だったら誰でもいいというわけでもない。人よりすぐれた才能を持つ者だけだ。
もちろんこの話を語れるということは、オレもその計画とやらに必要とされた。そしてその計画で、必要とされた子供達は、普通の学校に通うことはせず『フォースプロミス』という施設で親から離れ、過ごしていた。
だが、なにもせず過ごしていたわけではない。
1日の半分は、自分が得意なものをやり続ける。
つまり、得意なものを伸ばし続けるということだ。これに終わりはない。
オレの場合は、勉強だった。毎日毎日、椅子に座り勉強をする。勉強をしなかった日なんてなかった。だが、それを苦痛だとオレは、思わなかった。いや、思えないようになっていた。そんな日々をオレは、この星川高等学校に入る1ヶ月前まで繰り返していた。今思うとよくそんな生活を送れていたなと思ってしまう。
今は、この解放された状況で勉強をしたいなんてオレは、思わない。だから、オレは、誰かに勉強やれと言われない限りやらないし、手を抜く。
勉強なんて必要な時にだけすればいい。
自慢じゃないがオレには、周りの人より倍、知識はあるし、わからないものなんてほとんどない。知らないことといえば施設の外の世界のことだけだ。
───────────
「あの頃の自分には戻りたくないな……」
誰もいない教室でオレは、外を眺めながら呟いた。今日から2学期が始まりオレは、放課後に1人、教室でぼっーとしながら自分の過去を思い出していた。そんなオレを見かけた近藤が教室へ入ってきた。
「まだ残っていたの?」
「まぁ、少し考え事をしていたんだ」
「考え事? もしかして悩みとか……」
もしかして心配してくれているんだろうか。
「そうだな……じゃあ、近藤。少し質問してもいいか?」
「えぇ、いいわよ」
近藤は、自分の席、オレの隣へ座った。
「勉強は、好きか?」
「好きでも嫌いでもないわ。勉強は、自分のためにやっているものだから」
「そうか……じゃあ次の質問だ。自分のための勉強じゃなくやれといわれたものを勉強し続けることはできるか?」
「ものによるわ。必要の知識とあれば勉強するし、必要ないものは、やらない」
「そうだよな……オレもそう思う」
一体、何がいいたいの?と言いたげな目で近藤はオレを見てきた。
「あなたは、勉強することが嫌いなの?」
「どうだろう……好きか嫌いかなんてわからないな。やること事態は嫌いじゃない。だが、やりたいとは思わないな」
「なるほどね。あなたの成績がころころ変わることと関係あるのかしら?」
「そうかもしれないな。勉強ができる力なんて必要な時だけ発揮できればいいとオレは、思っている」
「必要ってこの学校ではいつでも必要よ。1位になるためにもその力をどのテストでも発揮してよ」
そんな無茶な……。必要か必要じゃないかは自分で決めたい。
「それは、断る。オレは、学力でトップになって目立つことはしたくない。何もない普通の高校生としていさせてくれ」
目立てば、オレは、あいつの思う壺だ。極力目立ちたくない。
「なによそれ……まぁ、あなたらしい発言だけど……」
「前から思ってたけど、あなた自分を偽りすぎじゃない?」
「そうしていないといろいろめんどうなんだ。近藤だって、すべてを表に出してる訳じゃないだろ?」
「そうね……。けど、残念だわ。私は、本当のあなたを知りたいのに」
「諦めてくれ、オレは自分のことを話す気はないし、本当の自分を表に出すつもりは全くない」
「そう……。ねぇ、大山君、さっきの話を聞いてて気になったことが1つあるの。なんで中間考査だけ、あなたは実力を発揮してくれたの?」
「近藤に10位以内に入れって言われたから」
「言われたらやるってこと?」
「あぁ、言われない限りオレは、動かない」
近藤には、本当のことは言わない。オレがなぜ今回10位以内に入ったのかは。
「あなたが何を考えてるかわからないわ。けど最後に1つだけ確認させて。あなたは、この私達のチームが1位になることを妨害したりしないわよね?」
妨害か……今のところするつもりはないが状況次第では妨害するかもしれない。
「あぁ、絶対にしない。わざと点数を落としてチーム順位を下げたりしないし、チームメイトを裏切ることもしない。オレは、このチームで1位を目指したい」
「わかったわ。あなたの言葉を信じる……」
近藤は、イスから立ち上がった。
そう、オレは、近藤が目指すものを邪魔したりしない……オレがお前の味方でいる限りは。
「ありがとな、近藤。お前のおかげで嫌なことを忘れことができた。さて、帰るか」
「最後の最後でよくわからない発言やめてくれないかしら? あなた、謎が多すぎるわ」
近藤は、そう言うがオレに発言の意味を聞くことはしなかった。
なぜなら、さっきオレが自分のことは、話さないとハッキリと近藤に伝えたからだろう。聞いても答えてくれないと知れば、当然聞いてはこない。
「近藤、何かを知りたいと思うならまず自分のことから話すのも必要だと思うぞ」
オレは、近藤に大切なことを伝え教室を出た。
「なっ、なんなのよ!」
後ろで近藤何か言っていたがオレは、無視して廊下を歩いて行った。
今思うとオレは、この学校で変わった気がする。せっかく自由を手にしたんだ……いろんなことを経験するのも悪くないな。
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