第46話 新めんばー?

「ダンジョンデートはどうでしたか?」


「大暴れ」


「いいなぁ、モンドさんの後ろにいて、守られてるって感じるのもいいんですけど、やっぱり隣に肩を並べての方が共同作業って感じでいいですよね!」


 マコトとアキラが作ってくれた夕食を食べながら、今日の出来事を話しています。


「今日は素手でダンジョンに入ったんですか。モンスターとの戦闘は大丈夫だったんですか?」


「二の打ち要らず」


「アキラは大活躍でしたが、僕は複数が相手だと足止めが精々ですね」


「武器なしで複数のモンスターを足止めできるだけでもすごいですよ!ボクの場合、武器がないとどうすればいいか…、できることは魔法くらい?」


 ごく自然に二人とも家で夕食を食べていますが、ご両親は大丈夫なんですかね?


「あ、魔法と言えば、大学で出来た友達も魔法が使えるんだけど……」


 どうやら、大学で出来た友人も同期の冒険者で魔法が使えるそうです。僕達とは違う場所で講習を受けていたそうで、そこでの人づきあいが上手くいかず、現在パーティメンバーがいなくて困っているそうです。


「それなら、ギルドにパーティの斡旋をしてもらえば良いのでは?」


「そうしたんだけど、講習の時に組んでたパーティメンバーにギルドスタッフや冒険者にあることないこと吹き込まれて、どうしようもないんだって」


「あることないことですか?」


「使えない魔法使いとか、守られてるくせに前衛を見下してるとか」


 僕も悪評を立てられましたが、運よく理解者が何人もいてくれたおかげで何事もありませんでした。同情はしますが、ご本人に会ったわけではないので評価は難しいですね。アキラも気になることがあったのか質問してきます。


「実力は?」


「魔法をメインにしてるから接近戦は苦手みたい。精度と威力は高いんだけど発動までに少し時間がかかる感じかな」


 聞いている感じでは、格上相手でも魔法発動まで前衛が守り切れば一発逆転を狙える逸材になりそうなのですが。


「性格は?」


「ちょっとオドオドしているけど、芯はしっかりしてる感じかな。魔法を少し過信しているところはあるけど、魔法を使えるのは前衛がいるからこそって言ってたよ」


 ちょっと癖のあるところを露骨に悪く言われている感じですかね。


「それで一度ボク達とパーティを組んでみて、何も問題はないと証明してあげたいんだけど、ダメかな?」


「マコトが信じたのなら、ウチはいい」


 少し考える時間が欲しかったのですが、アキラは即答してしまいましたね。


「僕もマコトを信じているのでその友達も信じます。でも、その友達は僕達を信用してくれますか?」


「そこはちゃんと話してみる」


「わかりました、マコトに任せます。なんでしたら、僕達の装備を揃えるところにその友達も来てもらって、顔合わせでもしますか?」


「そうだね、それも相談してみる」


「あと、魔法を使うのでしたら、北川君の論文を見せてもいいか確認してみたらどうですか?」


「うん、そうだね。火氷使いファイヤブリザードに連絡してみる」


 僕から言えるのはこれくらいでしょうか。


 それにしても高威力の魔法使いですか。マコトとアキラは魔法を補助に使うことが多く、敵に放つ時も威力より牽制を目的としているほうが多いです。その分、全員で速攻で殴り戦闘を素早く終わらせることができます。そう考えると僕達のパーティと相性が悪いのでは……いや、先制攻撃の高威力魔法で敵を殲滅し、魔力回復を待っている間は僕達が接近戦で戦う……うーん、実際に会ってお互いに出来ることを確認しないと全ては机上の空論ですね。


「マコト、アキラ、とても美味しかったです。ご馳走さまでした。それにしてもよく知ってましたね、スッポン料理なんて」


「お母さんの得意料理なんだ」


「ウチはお手伝いだけ」


「アキラさん、包丁さばきがとても上手ですごく助かったよ」


「それでは、後片付けをしますので二人はゆっくりしていてください」


「ウチが」


「ああ、ボクがするよ」


 使った食器を洗おうと立ち上がるとアキラとマコトが引き止めました。


「いえ、料理を作って貰ったのでこれくらいはさせてください」


「ボク達が好きでやってるから気にしなくてもいいよ」


 コクッコクッ


 何故か二人は必死に引き止めようとしますがここは譲れません。何かがこれを任せては駄目だと囁いています。第六感をも超えたナニかが……


 食器を持っていく時、二人に恨みがましい目で見られましたが気にせず後片付けをします。手早く片付けを済ませ明日の予定の確認をしないとです。


「ボクは明日も大学です。その時にパーティの件も確認します」


「僕達は今日ダンジョンに行って来ましたので明日は休憩ですね」


 僕達のパーティはダンジョンから帰って来た次の日はよっぽどの事がない限り休みにすると決めています。無理をしないようにするためと、ダンジョン以外にも目を向けるようにするためです。


「寝る」


 流し目しながら色っぽい声で言われたら、違う意味に聞こえるので勘弁して欲しいです。


「特にこれといったこともないので明日は自由行動ですかね」


 顔が赤くなったのを誤魔化すように話を切り上げます。


「そっか、それじゃあ、相談結果に何かあったら連絡するかも」


 パーティを組むと決めた以上、ケータイの連絡先は交換済みです。


「それじゃあ、ボクそろそろ帰るね。モンドさん、アキラさん、また明日。お休みなさい」


 マコトが帰るので玄関までお見送りです。玄関の扉が閉まるまで、僕とアキラは帰っていくマコトに小さく手を振っていました。あれ?


「お風呂」


 アキラはそう呟くと風呂場へと行ってしまいました。


 ああ、ダンジョンで汗をかいたのでさっぱりしてから帰るということですね。そう思っていたら、アキラが脱衣場から顔を出して言いました。


「一緒に入る?」


「いえ、遠慮します」


「覗いていいよ」


「いえ、遠慮します」


「そう」


 寂しそうな顔をして頭を引っ込めました。


 シャワー音が聞こえる中、煩悩退散させるためにヨーガをしています。


 鷲のポーズガルーダーサナをしているときにアキラが戻って来ました。


「えーと、アキラさん。その服は?」


「借りた」


 男物というか僕のパジャマを羽織ったアキラがいました。訳がわからず硬直していると、返事がないのは否定しているからと判断したのか一言呟き服を脱ごうとします。


「返す」


「いえ、大丈夫です、着ててください」


 それを慌てて止めます。


「着ていた服はどうしましたか?」


「脱いだ服は洗濯機の中。モンドのも洗うから早く脱いで」


 アキラに急かされて風呂に入ることになりました。脱いだ服をドラム式の洗濯機に放り込む時に、中にアキラの服が見え、一緒に洗濯しても良いものかと一瞬悩みましたがもうどうにでもなれと放り込みました。


 風呂から上がり、少しゆっくりしていると、洗濯が終わり、アキラの分を先に取るようにお願いすると、僕の分まできれいに畳んでくれていました。


「おやすみ」


 そう言ってアキラは寝室に行ってしまいました。


 据え膳食わぬは男の恥と言いますが…………


 この日は悶々としてなかなか寝付けずリビングのビーズ入りクッションの上に横になっていました。

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