第43話 冒険者免許証

 うーん、マッチョな爺さんとボディビルについて熱く語る夢を見た気がする…


 いつも通り6時に起床。安楽座になり、できるだけ細く長く息を吸い、できるだけ細く長く息を吐く、これを10セット。次に1秒で息を吸って吐く、これを10セット。


 水を飲み、顔を洗い、ジャージに着替え近所の公園までジョギング。10分程走ったところにある大きめの公園で30分程体を動かし、同じ道のりをジョギングして帰宅。


 朝食は、昨日買っておいたクロワッサンをトースターでリベイク。シリアルとヨーグルトと野菜ジュースで準備完了です。いただきます。


 本日は10時から修了式です。家を出るまでまだ時間があるので、昨日手に入れた肩掛けカバン調べてみましょう。


 冷蔵庫に入れていた2Lのペットボトル2本とストックの2本合わせて8Lをカバンの中へ…まだまだ入りそうですね。


 次に口がどれくらい広がるかを確認すると、すごい、どこまでも口が広がります。試しに自分の身長くらいのビーズ入りのクッションを入れてみると、入りましたね。容量もまだまだありそうです。しかし、この肩掛けカバン、マジックバックだとしてもこれだけ口が広がるのは何か違和感があります。これはもしかしたら【手力男】スキルなのでは…。天手力男命と言えば天岩戸を抉じ開けた神様です。ならば、開けるという行為に何らかの力が宿っても不思議ではありません。このカバンと相性の良いスキルかもしれません。…んっ、どこかでこんな話を聞いたような…思い出せませんね。


 1時間経ちペットボトルを取り出してみると、冷やしていた方のペットボトルは少しぬるくなっていました。カバンの中の時間は止まっているわけではなさそうですね。


 おっと、そろそろ家を出る時間です。さっと着替えてギルドに向かうとしましょう。僕はツイードスーツに着替えると家を出ました。


「モンドさん、おはようございます」


「モンド、おはよう」


「おはようございます。二人とも早いですね」


「フフッ、だって今日から冒険者ですよ」


「暴れ放題」


 今日が楽しみだったのはよくわかります。1名ほど物騒なことを言ってますが。


 先週までほぼ毎日通っていた講義室に向かっていると山代担当官と会いました。


「「「おはようございます」」」


「ああ、君たちか。異常個体に遭遇したそうだが大丈夫だったかい?」


「はい、何とか生きて帰ってこれました」


「そうか、無事で良かった。無事と言えば、君たちと同じパーティだったチャン受講生、彼も昨日のうちに保護できたそうだ」


「「「あ」」」


「どうかしたかい?」


「「「いえ、なんでもありません!!」」」


 完全に忘れていました。マコトとアキラの方を見るとああ、そういえばというような顔をしていました。


「彼は臀部の裂傷が激しかったらしいが、ギルド備え付けのポーションで無事回復したそうだ」


 昨夜は赤メッシュ君のことが心配で一睡もできませんでしたが、無事が確認できてよかったです。(シレッ)


「馬場さん、おはよう。相変わらず美人2人侍らせて羨ましいね」


「いえいえ、火氷使いファイヤブリザードさんのご活躍に比べればまだまだです」


 講義室に入ると僕達を見かけた長髪君が声をかけてきました。長髪君はダンジョン適応で【火魔法】を手に入れ、ダンジョン探索で【氷魔法】を手に入れたうえ、今期1番の魔法の使い手として有名になりました。自身の経験を活かし、『重度の厨二病患者ほど魔法が強力になる』という論文をギルドに提出し、現在真剣に検討されています。


 勉強会をしていたメンバーで集まって話していると、どうやら僕とマコトとアキラとここにまだいないぽっちゃり君を除く6人でパーティを組む事にしたそうです。


 ふと視線を感じて振り向くと赤メッシュ君でした。こちらを指差し嘲笑しながら何かを話しています。俺のおかげであいつらは助かった、といったところですかね。まあ、一応無事を確認できたので、放っておこうと思っていたのですが、アキラが彼等に近づき何事かを囁きます。


「臀部の裂傷」


 赤メッシュ君は顔を青ざめお尻を押さえながら震え始めました。


 アキラがこちらに戻ってきて、褒めろと言わんばかりにドヤ顔をします。


「ほどほどでお願いします」


 教壇にナイスシニアと数人の担当官と見覚えのある人が現れました。


「権藤だ。諸君、冒険者講習修了おめでとう」


 いつもの元気がありませんね。教壇脇を見ると鈴木副ギルド長が中華鍋片手に目を光らせています。


「何名かは筆記試験の再試験、また、何名かは指導があるが、それ以外の者は今日から冒険者となる。冒険者となったからには我々ギルドもより一層のサポートを約束するので、何かあれば報告・連絡・相談を遠慮なくして欲しい。諸君のこれからの冒険者としての活躍を我々ギルドスタッフ一同は心より願っている。それではこれより修了証明書を渡すので名前を呼ばれた者から順番に受け取り、速やかに退室し、スタッフの指示に従い、免許証発行に向かってくれ」


 証明書を受け取り、スタッフの案内で免許発行の受付へ向かい写真を撮影、発行を待つ間に免許証の説明のため、さっきとは別の講義室へ案内されます。


「これから皆さんは三級丙種ランクの冒険者となります。ランクは上から特級、一級、二級、三級となり、それぞれの級の中でも上から甲種、乙種、丙種と分けられます。ランクはギルドへの貢献度によって上がっていきます。基本は魔石やギルド指定の物資の納入となり、他には遭難者の救助やダンジョンの調査等の特別依頼、新しい発見等によって貢献度が加算されます。ランクが上がると入ることが出来るダンジョンが増え、ギルドからの情報やサポートが優遇されます」


 免許証やランク等についてギルドスタッフが説明してくれました。まずはランクを上げ、行けるダンジョンを増やしていくことが課題ですね。


「最後に、免許証と一緒に冒険者規約を配布しますので、規約にはしっかりと目を通してください。それでは名前を呼ばれた人から免許証を取りに来てください。受け取ったら退室してください」


 これで今日から僕は冒険者ですね。

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