第18話 緑魔法の覚醒

 ジュエガルド統一を目論むルビーの侵攻を止めに、緑の国へやって来たユウトとフィーナ。

 ふたりは陥落寸前の緑の城にたどり着く。

 緑の国でルビーを相手にするのは、第四王女のミクルーカしかいなかった。

 姉の王女達は、城を出払っていた。

 自分の窮地を救ってくれたユウトに、思わずキュンとするミクルーカ。

 そんなユウトをぞんざいに扱うフィーナに、敵愾心を抱くミクルーカであった。




 ミクルーカはユウトの手を握ったまま、緑の城の中をずかずか進む。

 その後をフィーナが追いかける。

「ちょっと待ちなさいよ、ミクー!」


 ユウトも、フィーナを怒らせたらどうなるかと、不安になる。

「あの、ミクさん、どこ行くんですか。」

「それは、ふたりの未来に、決まってるではありませんか。」

「はあ?何言ってるのよ!」

 ミクルーカの受け答えに、フィーナがキレる。

「さあ、着きましたわ。」

 フィーナを無視して、ミクルーカはある部屋の前で立ち止まる。


 そこは城内神殿だった。

 青の国の城と同じく、そこには女神像があって、水晶玉があった。


「待っておったぞ、君がユウト君だね。」

 部屋の中には、王冠をかぶったおじさんがいた。

 おそらく彼が、緑の国の王様だろう。

「あら、お父様もいらっしてたのですね。」

 とミクルーカは頬を赤らめる。

「うむ、青の国の国王にも、よろしく頼まれたからな。」

「まあ。」

 王様の言葉に、ミクルーカはさらに顔を赤らめる。

「青の国の王様も、私たちの事を祝福して下さるのですね。」


「何を言ってるのだ?」

「そんなはずないでしょ。」

 王様とフィーナは、ミクルーカの言葉を否定する。

「嫌ですわ、お父様ったら。

 何もレスフィーナさんの前だからって、気を使わなくても。」

 ミクルーカは王様の言葉も聞き入れない。


「あの、これは。」

 ユウトもミクルーカを無視して、話しを進める。

 ユウトは水晶玉の前に進み出る。

「ああ、君に緑の洗礼を受けさせてくれと、青の国王に頼まれてね。」

 と緑の王様が応じる。

「まあ、それで私とユウト様の結婚が成立するのですね、きゃー。」

 ミクルーカは、あくまでそっち方面で話しを進める。


「はあ?なんでそうなるのよ!」

 フィーナは思わず反論してしまう。

「もう、レスフィーナさんも、私とユウト様がお似合いだからって、妬かないで下さいよ。」

「誰が妬いてるですってぇ。」

 フィーナはこめかみをピクつかせる。


「すまぬの、この子は四女として、甘えた子に育ってしまったのだ。

 この子に話しを合わせてはくれぬかの。」

 と緑の王様はフィーナに耳打ちする。

「はあ?何で私がそんな事を、」

 と言ってフィーナは、ハッとする。

「まさか、これを国際問題に発展させるつもりですか?」

 フィーナの問いに、緑の王様は真面目な表情で答える。

「ユウト君が君のフィアンセである事は、重々承知。

 だがここは、ユウト君をミクルーカに譲ってはくださらぬか。」


「ふぃ、ふぃ、フィアンセですって。」

「ちょっとお父様、聞き捨てなりませんですわ。」

 フィーナが顔を赤くして返答につまる横で、ミクルーカが反論する。

「ユウト様を下僕にしてるレスフィーナさんが、フィアンセなはずはありません!」

「なんと、下僕とな?」

「いえ、それは、あの、その、えと、ちょっとユウトぉ。

 あんたがおかしな事言うから、おかしくなっちゃったじゃん!」

 フィーナはユウトを巻き込んだ。


「ええー。」

 いきなり話しを振られても、ユウトも困る。

「ほほほ、ユウト君はレスフィーナさんの尻に敷かれたいと、言うのですかな。」

 王様はにこやかに問いかける。

「いえ、それは、あの、その、えと、」

 ユウトは返答に困る。

 ちらりとフィーナに視線を向けるのだが、フィーナはプイっと顔をそむける。


「私、堪忍袋の緒がきれました。

 レスフィーナさんに、決闘を申し込みます!」

「はあ?なんでそうなるのよ。」

 ミクルーカはいきなりフィーナに決闘を申し込む。

「私が勝ったら、金輪際、ユウト様にはつきまとわないで下さい!

 ユウト様は私の物です!」

「ユウトがどうなろうと、こっちはどうでもいいけどねぇ。」

 凛とした表情のミクルーカに、フィーナはガンをとばす。

「あなたのその態度は、気に食わないわね。」


「やめてー、俺のために争わないでー。」

 ユウトは、一度言ってみたかったセリフを言ってみた。

 しかしフィーナとミクルーカはにらみあったまま、ユウトの言葉は耳に入っていない。


「こほん。

 ユウト君、今のうちに儀式を済ませるとするかの。」

「あ、はい。」

 王様の言葉に、ユウトはうなずく。

 元々ここへは、緑の洗礼を受けに来たのだ。

 緑の国の魔石獣からも、経験値が得られるように。

 そして、緑系の魔法が使えるように。


 フィーナとミクルーカとがガンを飛ばしあってる横で、ユウトは水晶玉に右手をかざして目を閉じる。

 王様もぶつくさと目を閉じて、意識を集中させる。

「緑の女神よ。勇者ユウトに眠りしチカラを目覚めさせたまえ。」


 水晶玉がほのかに緑色に輝く。

 ユウトは、身体の中に爽やかな風が流れ込むのを感じる。

 身体中を流れた風が、水晶玉にかざした右手に集束していくのを感じる。


 ユウトはそっと目を開ける。

 右手がうっすらと緑色の光りに包まれていたが、その光りが右手の中に収まっていく。

「本当に、緑の才能もあったんだな。」

 王様は驚きを隠しきれずにつぶやく。


 そう言えば、青の国の王様は、ユウトには青と緑と赤の才能があるような事を、言ってたっけ。


「これ、ミクルーカ。

 ユウト君に緑系魔法のレクチャーをしてくれないか。」

 王様は、フィーナとガンの飛ばしあいをしてるミクルーカに、声をかける。

「はい、お父様。」

 フィーナとガンを飛ばしあってたミクルーカは、何事も無かったかのように、にっこり微笑んだ。





次回予告

 はあーい、私、フィーナのママ様ですぅ。

 やったわ。このコーナーを取り戻す事が出来たわ。

 まだまだどこぞの小娘なんかに、負けてられないわね。

 それにしても、フィーナとユウト君って、お似合いのカップルよね。

 そこへミクさんを割り込ませようとするなんて、緑の国王も、なかなかやるわね。

 フィーナ、ポッと出の第四王女なんかに、負けるんじゃないわよ。

 それにしても、緑の国の王妃って、今何してるのかしら。

 多分、マスタージュエルを砕かれた影響が出てると思うんだけど。

 え、これが次回、明らかになるの?

 それは楽しみね。

 次回ジュエガルド混戦記激闘編、緑色の特訓。

 お楽しみに。

※今回のお話し作るのに一週間かかりました。その影響で、次回のお話しについてはまだ、何も考えられません。この予告とは違う可能性も十分ありえますが、ご了承ください。

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