第43話 勇者ミトラの災難

 

・・

「なんということか よき星が巡られました

そなたには強い勇者の適性がありますぞ・・! これはめでたい・・!」

「え・・・、」

(ザワザワ)


そこは聖ソウル法典大神殿の祈りの間の祭壇に祀られた聖剣の前


輝花セント・エルモの花の中でも最も純白であるという

メリカドの地の白爪の花の元で育った白爪蝶の羽から集めた白の鱗粉と

聖なる魔力を帯びた世界樹の古い根の擦り粉

それに貴重な金と銀の少量の粉末を混ぜ合わせた上で

満月の月の光と太陽の夕日に交互にさらして作られた特殊な反応試薬

(  )

それが私の手の甲の上で星が流れた形を作って

祀られた聖剣と共鳴を起こしてキラキラと白く輝いていた



私はこの日から勇者ミトラと呼ばれるようになった

・・



わたしは勇者ミトラ

「ミトラ・ネスライト」よ

優秀な成績でこの聖セントラル中央魔法学園の中等部に編入してきたわ 

入学の式典では壇上であいさつもした


勇者の持つ力っていうのは危険な魔物も多く住むこの世界で

人々が安心して暮らしていくために欠かせないものなの


魔法使いの人もいるけれど勇者といわれる人間の持つ魔法は特別で

特に魔物に対して効きやすくて

普通ではない力の強い凶悪な魔物に対してもとてつもない有効打になる


だから勇者の才能を持つ人間は特別に扱われるのよ


私は聖なる光を扱う聖魔法が得意なの 

と、いうかそれしか魔法は得意じゃないんだけど・・


勇者だからよく剣もすすめられたけど 

私は得意じゃないのよね・・

でも光の魔法で剣をだすことはできるから今はそっちでいいわよね


勇者を支える力となるパーティメンバーの従者として 

知り合いの家からとんとん拍子にジャスパーとリードを側近につけられた

普段からお調子者だし無自覚に他の人に嫌味をいうから

私はあんまりそこのところは良く思っていないんだけど


私の側近になった2人は勇者パーティとして指定されて

聖ソウル法典の勇者の機関支部に登録されているし

家同士との関係性もあって私は貴族の出身で勇者だから立場上は上なんだけど

その2人も貴族の出身で家の格自体の方は

男爵家の私の家格より高いこともあって

なし崩し的に今の感じになってるかもしれないわね


それにね なにより彼らは

勇者パーティメンバーとして申し分なく役に立ってくれるし優秀なのよ 

世界で私と同じ勇者たちが力をつけていく中 


勇者としてはまだ未熟な私の勇者のランクというか

格をあげていくためによく協力してくれる


・・・

「ジャスパー」は剣士の中でも珍しい大剣士職の才能持ちで

常に家の自慢の家宝の剣を背中に背負っている


本名は「ジャスパー・ロウ」で

武勇で財を成した子爵位の貴族ロウ家の子息だ


お調子者だけど 

剣技に関しては癖がなくて訓練やダンジョンで覚えた強力な剣士のスキルを使って

やってくるモンスターたちを相手に切り拓いていく、

パーティの突破役のようなものを担っている

でも敵が自分より弱いとつまらないみたいで集中力が欠けたりするけど


基本的には気を付けてくれるし 

泥臭い雑用だって必要なときはしてくれる


・・・

「リード」は賢者職の才覚を持っていて、

これもすごく珍しい職業で普段から魔法全般をよく勉強していて

学園でも優秀な成績を修めている


回復魔法や補助魔法も申し分なく使えて

非常に勇者パーティの役に立ってくれる存在だ


本名は「リード・オスマル」

歴代で何人も偉大な宮廷魔導士を輩出している侯爵家の

名門上位魔法貴族オスマル家の子息だ



彼は祝福の魔法こそまだ使えないものの

祝福モードの起動そのものにはもう片足入っていて

上昇志向が強いため

行使できることが優秀な魔法使いの証である祝福魔法を扱えるようにするため

毎日よく修練をしている


優秀なのだけど 少し嫌味な性格をしていてあまり勉強ができない生徒や

才能がないと思った人間を前にすると遠慮のない言葉をだしたりする


でも基本的に頭が切れて困ったとき助けてくれる優秀な側近だ


・・・

私はこの学園に来れて勇者としては恵まれた環境にいると思う

この環境から自らの才能と努力で勇者として成り上がって

みんなを認めさせるわ


まあ・・私の家は一応貴族の家系だけどお金がないし家格も低い

おまけに私の上の兄さん達もまったく魔法の才がないの


最近は世界的に魔法使いの数が減っていて

有力貴族の家でも魔法の才を持っていない人が増えていて


私の生まれのネスライト家でも

強い魔力の才を最も引き継ぎやすいと言われている一番上の子息でも

魔力の才能には恵まれなかった


そんな中で普通の属性魔法は得意じゃなかったから

今まで隠れて鳴かず飛ばずだった一番下の私に

実は特別な力である聖属性魔法の強い才があることが分かって

あろうことかさらに勇者になんて選ばれてしまったから


血族としてはとても喜ばれたけど

密かにお前が力を奪ったんだろうって兄さんたちからは恨まれてしまって


それはまあ私が家から出ていけばいいんだろうけど


私が勇者で大成しないと私が没落しちゃうのよね

あてがないのよ


・・・・

・・・

恵まれた環境で成り上がるって気合をいれてたけど

いきなり学園で私があてがわれた寮ってなんなの?


私が事前に寮を決めてなかったのが悪いっていうわけ?

まあ悪いんでしょうね でもあれはあまりにも・・


そのあとその寮は回避できたかもしれなかったけど

部屋の中身は良いとなぜか勘違いしてしまって 

そこに決め込んでしまったわ

なんでだったかしら


それでわたしたちは

いきなり和室の妖怪みたいな寮から学園生活を送ることになったわ


でも私はめげないもの

これを逆境にして大成してやるんだから



・・それにはまず近辺のダンジョン制覇ね


勇者の格をあげるためには 

冒険者のギルドの依頼や害獣指定魔物の討伐とか

特定の協会に推奨された魔法スキルの獲得とか

いろいろあるけど まずは

聖ソウル法典の指定のダンジョンの「制覇の証」これを集めることで

勇者として一段階認められて国から優遇が受けられたり支援が増えたりするわ


勇者の格があがっていくと 

最終的に勇者は「Sランク」などに階級ランク付けされて

そこまで上り詰めると「英雄」と呼ばれて

魔法使いや冒険者などとは格の違う地位を持つことができる


首都の広報新聞などでよく取り上げられ

一線で活躍する勇者「フルブライト」や 勇者「モルガン」などがそうだろう


北方の魔物領に派遣されたり それなりに危険な任務もあるけど 

任務は実力に見合ったものが選ばれるし

国を挙げた支援や聖ソウル法典の人員の手当ても尋常ではないため 

むしろ楽に任務が達成できるということもあるのだという



・・・・

そしてこれは勇者に選ばれた人間だけに

聖ソウル法典から秘密で教えられることなのだけど

実はその「Sランク」から上の階級も存在するというのだ


でもそれには条件がある 

この世界の上位の魔法「祝福魔法」を

「超」高度なレベルでの習得を確認され法典に認定された場合


その今までのランク階級や名声を法典の掟によって秘密裏に隠すことになるけど

その上限を取り払った特別な英雄階級のランクを授けられて

これは「殿堂入り」と呼ばれている


そして殿堂入りになると

「楽園」といわれる、この世界の上位にあると言われる場所に

特別な住民としてアクセスできる権限を持てるようになるのだという


・・

「楽園」は遥か過去に信仰されていたけど

閉じて失われてしまった昔の世界のこと


過去の人間同士の争いで世界が閉じる前は

そこがこの世界の上位の世界であって


私たちの暮らしていた世界は下界であり、

下界だから魔物や危険な悪魔がはこびる呪われた災いの世界なのであり

人間たちはそこで暮らしていくしかないのだとされていた


・・

そのことはもはや世間では遠い過去にあった歴史の一つの扱いだけど


ここがその秘密の根幹なんだけど

実はその閉じた楽園の世界の一部は今でも生きていて

特別な条件を満たせば

今の時代であっても法典だけが知る秘密の道を通じて渡ることが可能なのだという


その場所では過去のその場所に到達した英雄たちが

肉体の寿命から解放されて魔法を切磋琢磨している場所だと伝えられていたり

自分の好きな夢を見られて

好きな暮らしができる伝説の理想郷であると伝えられている


そこに行くと寿命や病苦からも解放されて

自分の全盛期の若い肉体の姿で過ごすこともできるそうだ


そんな上位の理想の世界と呼ばれた場所に渡って

ごくまれに到達した後に戻ってくる人もいるらしいけど

たいていの人は二度と戻ってくることはない


・・・

その情報は祝福の魔法に精通していなければ その国の王ですら

その事実を知らないまま一生を過ごしているのだという


そしてそれは勇者の人間には一応教えられているけど 

勇者でなくてもそこは元は人間に与えられた世界なので

祝福魔法を極めた上で

そこまでの秘密の道を知っていれば到達はできるという


けれど 祝福の魔法を使えるだけでも限られた上位の存在なのに

極めるまで自力だけで行きつくという者はまずいないだろう


・・・・

その世界や勇者にまつわる秘密とやらに触れたけど

私はとりあえず今は「Bランク」くらいの勇者になれればいいの


没落しないくらいに上位の勇者になれれば 何も生活には困らないもの

でも光魔法は好きだから とことん極めてみたいわ


それこそ勇者は大昔は

魔物たちの王で魔王っていう強い存在と戦い続ける存在だったみたいだけど

今はその魔王は世界からはとっくに昔にいなくなって魔物だけだから

危険度も低いし密かに安定した夢の職業・・なんていわれてるのよね

そのせいで私の競合もたくさんいるんだけど・・


その競い合いの一環で勇者のランクを上げるために

この近辺のダンジョンの証を集めることなんて 今の私たちの実力を考えれば

手間はかかるけど別に難しいことじゃないわ 


すぐに全部集めるわよ

勇者支部の説明でなにかいっていた気がするけど 私は急いでるの



・・・・

・・・・・・

第二の都市メリカドアドにある

聖ソウル法典所属の神殿を模した大きな準巡礼拝堂


私のような勇者たちは大半は聖ソウル法典に所属していることが多い


聖ソウル法典っていうのはこの国の第一宗教で

世界中に教会がありその教えを広めている


遥か大昔から存在していて

人々が困り果てているような魔物がよく活動するような土地に

率先そっせんして法典の教会を立てて

勇者を派遣して人々を救い導いて生活を豊かにしてきた成り立ちの歴史があって


国を問わず世界中の人々から支持されて

今でも多くの勇者を抱えているのだ


・・

そんな聖ソウル法典の勇者ランクの判定を審議できる場所に

休日にしっかり集めたダンジョン制覇の証を提出するために持っていくと

・・

「ふーむ それでは不十分ですな」

っていわれた


なんで・・

全部揃ってるじゃないの 言われた指定の全部の証を集めたのよ

なのに半分以下の評価ランクしか上がらないなんて・・


他の依頼でも上がるから そっちをしてみたらって・・

これ街のゴミ掃除とかじゃないの 冗談じゃないわ


・・・

帰ってふてくされていたら 

偶然、教室のクラスメイトの女の子からダンジョンのことを教えてもらえた


え、隠しダンジョン・・そんなのがあったの?

あそこは無人でモンスターもいないダンジョンだったのに

そういう裏があったの?



あっ・・リズっていう子 教室から出て行っちゃった・・

伯爵家のクリスフォード家の出身で

目の色が不思議な色合いですごく奇麗な女の子


わたしはちょっとその子と仲良くなりたいなあ・・、って思ってるんだけど

ジャスパーやリードがいつも口を挟んできて うまくいかないなあ・・


でも私が素直になれないのもいけないのかしら


でもリズっていう子も 

最初の出会い方が最悪だったっていうか

なんか私のこと笑ってる気がして

つい口調が挑発的になっちゃうのよね・・はあ・・


でもその子は全然勇者の私に対してもの怖気とかしたりしない

もうちょっとおしゃべりとか、できたらなあ・・


(はあ~~、お友達 ほしいぃ・・)


なんか勇者に選ばれてから私が勇者だって分かったら

仲良くなれそうかなって思ってた人もどこかよそよそしくなっちゃうし

私のこと最初から勇者だって知ってて距離をとって見てる人ばかりになってきたし

大人しめの子はもう寄ってすら来ないし


それでも私 勇者だから毅然きぜんとしてないといけないっていうか

勇者の模範にはそういう像が求められてるっていう話


だから元気にハキハキ声を出して話したりしてみたりするんだけど

やっぱりどこか無理しててずれてるんだろうなあ・・


(はあ・・)


・・いけないわ こんなこと些細な事

気持ちを切り替えないと


ダンジョンのことを考えるわ


こんなことで勇者は嘆いてもいられないの 隠しダンジョンとはいえ

魔法がほとんど使えなくても取ってこれるくらい

ダンジョン制覇は簡単だっていう話


今度休みを作って支度を整えて取りに行くわ



・・・・

・・・・・

そうしてやってきた学園南のダンジョン


側近の大剣士ジャスパー

「なんだよ ここから先があるんだろ

でもどう見ても前と同じ行き止まりじゃねえか」


側近の賢者リード

「この部屋の壁周りを全部念入りに叩いてみましたが・・

隠し通路はないみたいですね」


勇者ミトラ

「困ったわね・・」


しばらく祠の間を行ったり来たりしながら また空間を調べるミトラ


「はあ・・戦う前にへとへとだわ もう帰ろうかしら・・」

祠の脇にあったなんか変な石像に寄りかかるミトラ

(あれ、、なにこれ・・ずれて)


(ズズズ・・!)


「おお!隠し通路が! お手柄です、さすが勇者ミトラ」

「こうなってたのね・・」

「よっしゃあ!いこうぜ」


隠し通路をみつけ 洞窟の先に進む勇者一行


パーティの先を進む大剣士ジャスパー

「なんだここは あれはバカでかい虫の足か・・?

この分だとこの先には期待できるかもな」


(ええ・・虫は嫌よ)


そして渦のような洞窟の出口の横にある石碑を咥えた竜の石像の前


「竜の石像・・これも気味の悪い石碑ですねえ・・、

この僕でも解読できないですね」

「そんなもんいいから先にいこうぜ!」


・・

だけど洞窟を抜けると雰囲気はうってかわって 

ダンジョンの草原と森のエリアにでてくる


(ザシュッ!)

そこで現れた魔物を即座に剣で狩っていくジャスパー


「おいおい 隠しダンジョンていうからちょっと期待したのに

初心者ダンジョンまんまじゃねえか つまんねえなあ

やたら小柄だし力もやけに弱いぜ 

もう襲ってこないなら相手にするのをやめるかあ」


それを諭すように賢者リードは

「あのリズさんが証をとれたのですから

モンスターすらいない可能性も僕は考えていましたが

弱い魔物でも一応いるだけマシなんじゃないですか?


あのリズさんでもここのダンジョンの魔物くらいは狩れるようですね

ミトラの学友として 少し安心しましたよ」


「こういうことだったのね・・はやく奥にいって証だけ回収しましょう」


・・・

奥へ進んでいく勇者一行


「あれ 森を抜けましたよ やはりあまり広いダンジョンではなさそうですね」

「ゴールが近いってことか」

「いそぎましょうか」



するとそこには


どおおおおおん・・!ズシーン・・!

「・・・・!!?」


(え・・・・?竜・・?ど、どういうこと・・?

竜って確か軍隊で討伐するような魔物で・・

入り口に石像はあったけど こんなところにいるはずが・・)


「ミトラ!なんですかこれは こっちをみてますよ」

「で、でけえな・・でも血がたぎるぜ」


(ゴゴゴ・・)

勇者の前に現れた巨大な4つの首の竜

「おお・・人間だ」

「・・まともな人間か?」

「だが3人か・・しかし証を手にもっておる」


「お前たちは・・勇者か?」


(な、なにしゃべるの 完全に竜の上位種じゃないの・・これ?)

「わ、わたしが勇者ミトラよ・・!」

「俺は勇者パーティの大剣士ジャスパーだ!」

「僕は賢者リードです」


それを聞いて歓声に湧き立つ竜の首たち

「おお・・!勇者か」

「時代の勇者がとうとう現れたか」

「ならば試練を受けに来たのだな」

「試練をうけるか・・?勇者よ」


(え・・試練?うけるかってなに?もう始まってるんじゃないの?

断って帰れるの? でもこんなところで・・それにここは初心者用ダンジョンなのよ

ここもなにか裏があるんじゃ・・)


「試練だあ? そんなもん!受けるにきまってるだろおお!

ミトラと俺たちはそのためにきたんだよおお!」


「バーニング!!」

「(ガッシャン!)」

剣を振りかぶって大きな音が出る 体を魔力で強化し 

その竜の巨体を恐れずに飛びかかっていく剣士ジャスパー


「え!ジャスパーちょっとまっ」



「くらえ!俺の技を!雷光斬破らいこうざんぱ!!」


「ガギイイイイイン!!」バリバリィ

しかしその斬撃は竜の頭の厚い装甲に阻まれる


「うっ、こいつかてえぞ! 初心者ダンジョンにいる魔物のレベルじゃねえ!」



「ふむ 承知 した」パリパリ・・

竜の頭のからジャスパーの斬撃を防いだ、その残塊の電流が走る



「・・その程度のいかづち、我がいかづちを見るがいい 勇者よ!」


急速に加速する莫大なエネルギーの上昇から竜の目が激しく光る


「え、この魔力の高まり・・まさか・・」




「 流 星 絶 威メテオライト・ 招 雷 サンダー!!!!!」



(い、いやあああああ!!)

「勇者ミトラ! ジャスパー!こっちへ」


「ハイフィールド・シールド!!」

賢者リードはとっさに守りの上位術を発動させる


「ミトラは早く強力な光の攻撃魔法の準備を! 出し惜しみできません

この術でもどこまで耐えられるか・・!」


「そ、そんなにつよい術なの?!」

「見てわかるでしょう とんでもない威力ですよ!しっかりしてください!」


・・・・

「あ、あれ・・衝撃はこないですね・・

運よく直撃を免れましたか

だけどあの規模の術です 連発できるとは思えません

チャンスかもしれません」


「おい 頭がこっちにきたぞ!」

「くっ・・隙をついた直接攻撃ですか

少し無理をしますが魔力を込め続けてシールドを維持します

なんとか迎撃してください」


「ガキイイイイン!」

シールドがやってきた2つの竜の頭をはじく


「おういくぜ!そら「大円斬りだいえんぎり」!!」

「ガギイイウ・・ン!」


「くっそ!2つには当たったけど やっぱ手ごたえがねえ

硬すぎる!」


その直後に

「(キイイン・・!)」

「で、できたわ 光魔法を撃つわ!」

勇者ミトラは魔法の詠唱を済ませ

光のアーマーを出すと勇者ミトラの黒髪が白く光って変化する


「おう かましてやれミトラ!」

「頼みましたよ!」



「セイグリッド・セラフ・ライト!!」


「(ピッキャアアアアン!!)」

勇者ミトラから 巨大な竜を丸ごと包むように光の大出力の魔法が放たれる


「ぐああああ!」



「ぐうう・・効くのう」プスプス・・

「さすがは勇者といったところか」

「4つ同時だからな」

「とはいえ魔法で助かったぞ」



「な、なんか余裕があるわ・・!」

「そ、そんな・・」

「ミトラのこの術をもってして・・?」



「ふふふ・・時間だな」

竜の頭のひとつがほくそ笑む


(じ、時間・・? なんのことなの・・!)


「まさか・・俺たちにとどめを刺す気じゃ」

「全力で魔力をつかいすぎてハイフィールド・シールドが

もう維持できません!」


(ゴゴゴゴゴゴ・・・)

竜の胴体からあふれる魔力が光りだし

また首から頭にそしてそれは目に向かって集中していく


「!!」

「い、い、いけません!勇者ミトラ!

逃げましょう! 奴が発動に力をためている隙しかありません!」


(え、ここまできて勇者であるこの私が逃げ・・)

「逃げるわ!!」

「おうよ!!」




「 流 星 絶 威メテオライト・ 招 炎ファイヤー !!!!!」


「ズギャアアアアアア!!!!」


(いっ、いやあああああ!!)



光のアーマーを出して足に光の魔力を集中させて

走って全力で大地を蹴りだしてその場から逃げていくミトラは思う


(こ、こんなのって、 絶対おかしいわよおおおお)



・・・

勇者が去った後の4つ頭の竜



「おや・・逃げてしまったぞ・・」

「ふむ今回の勇者はこんなものか」

「正しく情報が伝わっておるのか?」

「4人目が隠れていたわけではなかったな」


「しかし・・こうして勇者をいじめるのは心地がよいのう」

「ああ・・心が洗われるようじゃ」

「最近はまともなのが いなかったからのう 特にあの娘ときたら・・」

「言いつけ通り 悪いことをせず待っていた かいがあったな」


「しかしなぜ心地よいのか・・」

「わしらが昔悪いことをして 

ここに送ったのが勇者だったからではないのか」


「わしらはこうして勇者の子孫をいじめて反省の日々だ・・」

「ああ わしらが自由になれるときはくるのか・・」



「とりあえずは また大規模魔法のチャージだな・・」


(ズシンズシン・・)

4つ頭の竜はすごすごと 

また自分たちの元の住処の岩山の位置に戻っていった


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