第42話 魔女来襲
・・
そんな休憩は終えて
授業に向かう帰り道
「よかったわねえアスラ お友達ができて」
「・・お友達?」キョトン
「そうよ アスラが仲良くなった子は「お友達」っていうのよ」
「お友達・・!わあいわあい」
特訓もしたし アスラはマギハちゃんと初めてのお友達になって
たくさん話したので満足してご機嫌だ
「ふん♪ふん♪」
・・
午後の授業の後は 今日はネロの風車の家のところに戻る
アスラはそもそも気が弱っていたから私の部屋に一時的に
持って帰っただけだったからね
「やだ」
マギハちゃんと別れた後は教室に戻ったんだけど
その時 アスラが体のサイズを戻すのを嫌がったけど
「じゃあ外で待っとく?」というと
ご機嫌だったのが功を奏したのか
素直にまたスライム状態になってくれたので授業中は無事に過ごすことができた
・・・・
そういうわけで もうすぐネロの風車の家だ
授業が終わって 校舎を出た途端
やっぱりそっちがよかったようで
アスラは元の大きくなった状態に戻っている
(これ大きくなった姿を見てなんて言われるだろうなあ・・)
なんてちょっと心配していた
・・
でもネロの風車の家では別のことが起こっていたみたいだ
「リ、リズ大変だよ!!」
リズが戻ってくるなり慌てた表情で玄関にやってきたネロ
頭に水色スライム ミスラがのっている
「え、それ・・リズ・・それはアスラなの? なんか大きく・・
いや 今はそんなことどころじゃ」
(ええ、なにそれ不安になってくるんだけど・・)
「知らない人が家に我が物顔でいるんだ!」
「ええ・・!
なにそれ、 泥棒・・じゃないわよね だったらこんな感じで
出てこれないわよね」
「いいからリビングにきて!」
え、なんかここから一部が見えたけど 部屋に黒い羽の翼の一部がみえる
まさかゲンゴがこの家に・・?
って思ったけどちょっと大きい羽だから違う
(うわあ・・)
「あら こんにちは お邪魔してるわよ」
そこには魔女といっても過言でないような黒ずくめの衣の格好に
ほぼ人間だけど羽の生えた特徴的な天狗のような姿
だけど体のラインは女性らしく整っている
黒い翼を畳まずにソファーに放り出してその女性の長い髪がはみ出していた
リビングのソファーに完全に我が物顔で寝転がっており
背もたれにゆったり上体をおちつけて
そこで捕まえたとみられる抱きかかえた黄色スライムのキスラを撫でていた
ちょっとキスラは嫌がってプルプルスンスンしている
そこでさらにちょうどいいおやつを見つけたのか
「あら これ美味しいわね」(モゴモゴ・・)
近くの机に置いてあったネロのお菓子を勝手に遠慮なく手を付けて食べていた
「ああっ!それ僕が買ってきたおやつだよ!!」
「あらそうなの? いいじゃない減るものじゃないし」(モグモグ)
「いや減ってますよお!減ってますから!」
そんな感じで揉めていたのだった
(うわあ・・、なんて大人なんだ
こんな大人にはならないようにしないと・・)
リズがちょっと将来の決意をしたところで
「こんにちは・・あの、誰ですか?」
リズは単刀直入にきく
「そこの坊やが帰ってきたとき 言ったじゃない・・」
「私は今来たので・・」
「私はクロージュ」
「・・・」
「・・・リズ、この人こんな調子なんだよ」
「・・他にないんですか?」
「いや、だって名前を聞かれたから・・それにここは私の家だもの
私の自由にしていいはずよ」
(私の家・・?)
「この家は天狗のオジキさんから使っていいって言われて
今は私たちが使わせてもらっているんですけど」
「あらー 聞いてないわあ そんなの ここは私の家よ
確かに借りもの物件だけど・・」
(このひと見た目人間ぽいけどやっぱり天狗だよね・・?
オジキ・・昔ここがお弟子さんが使ってた家だって言ってたなあ
それで今朝 結界の補修に部下と弟子が呼ばれたってまさか・・)
「もしかして あなたはオジキさんの弟子の人ですか?」
「ちょっとぉ、弟子なんてやめてよ~ 気持ち悪いでしょ
まあ たしかにあの人に師事はしたけどね・・」
そういうとクロージュと名乗った魔女天狗はソファーから起きだす
立ち上がると スリムでかなり背が高い
大人の女・・!ってかんじだ
魔女に撫でられ続けていたキスラは
立ち上がった後も抱きかかえようとした魔女天狗クロージュの腕から逃れて
ネロにしがみついた
「あら・・逃げられちゃった」
「・・私があの人、ここじゃオジキって言われてたわね
そして この家は私の物よ 私がつかってたの
今日はお仕事で聖セントラル中央魔法学園の結界の張り直しで
はるばる駆り出されて大変だったから
この家を独占して休む権利があるの、 お分かり?」
(うっ、ちょっと威圧してきたなあ・・この人も結界を・・
美人だけど おっかないなあ・・
でも権利といえば・・)
「ちょっと・・待っててくださいね」
私はオジキからもらっていた、この家の権利の木版を
この家に置いてあった荷物の所まで急いで行ってきてササッと取り出す
「これがオジキさんに直接一筆書いてもらった、
私たちがこの家に住んでいい権利の木版です 見てみますか?」
「あら 口約束じゃないの? しょうがないわね・・」
渡された木版を手にして まじまじと眺める魔女天狗クロージュ
「・・・・」
「・・・・」
「・・・」
「(黙っちゃったね リズ)」
「(効いてるといいんだけどね)」
魔女天狗クロージュ
(はあ・・しっかりあの人本人の真名の魔力まで使ってあるじゃない・・
これはちょっと言い逃れできないわね・・
とはいえ本当に この家は私が昔に学園にいるときに
使っていいと言われたものだったのよ
何考えてるのかしらね あの偉そうな天狗じじいは
ちょっとわたしが長い間 留守にしただけじゃないの 嫌になるわあ)
「・・・」
(・・・だけど この木版ちょっと普通じゃないわね
まじないまでついてるわ
あの人がここまで他の機能を入れ込んだ木版は見たことがないわね
いれこんでる・・? この子達に?
そういえばちょっと見ない不思議な目の色をした子ね
いや このスライムたちの可能性もあるわ
この子たちは小さいけど原始的な魔法生物の波長をもってる
女の子が帰ってくる前に坊やに聞いたけどダンジョンで拾ったって・・
外とは違ってダンジョンからやってきた魔物は
性質上自分から敵である人間に懐くことはないはずなのに
ふーむ・・)
・・
「まあ ここがあなたたちの権利があるとしても
私の家であることには変わりはないわ つまり私にも権利があります
だから私もここに住みます いいですね あなたたち」
魔女天狗クロージュは一方的にそういい放つと
(ニュウーン)
「! なあ」
魔法の念動力?をつかって黄色のキスラを再び捕まえて
自分の胸元に寄せるとぎゅっと抱きしめたのだった
キスラは いやいやってまたほっぺたをプルプルスンスンしている
(権利は認めたっぽい・・! けどこれはまさか人質か・・?)
「どうする?リズ?」
「どうするもなにもしょうがないんじゃない?
元々この人の借り家なのは間違いないみたいだし
それにまあ・・大丈夫でしょ キスラも傷つけてはないし」
それを聞いて魔女天狗クロージュさんは
「あら失礼ね この子は私が好きで来たのよねー」
「むぎゅ~」
(キスラは魔女の胸で スンスンプルプルもがいている)
どうやらキスラはこの天狗魔女に気に入られてしまった様子
(キスラはなんていうか他の子と違って
嫌がる時の反応が素早く動いてプルプルスンスン?してかわいいのよね
小鳥が頭を触られるのを嫌がるようなかんじの仕草をする
ちょっと気に入る気持ちは分かるけどね)
・・
「それに私も ここにずっといるわけじゃないから安心なさい
ただ ここにきたときに学園から生徒の指導も頼まれたから
その間は居ることになるわ」
「指導・・ですか?」
「そうよ、私は風魔流も修めてるけど 結構できる魔法使いなの
久しぶりに戻ってきたから学園につかまっちゃったわ
だいたいなんでも教えれるけど しばらくは
講師が少ないテイム術や人形操術の魔法を教えることになったわ」
「そうなんですね・・」
(はー 自称だけどなんかすごそう・・)
「私の家だけど
あなたたちは今まで通り ここで暮らしていて構わないわ
わたしはまあ・・どこの部屋も好きに使うけど
邪魔はしないつもりだから 楽にしてね」
・・・
そういうことで魔女天狗クロージュさんが休むときはこの家を
一緒につかうことになったのだった
話してみると性格は悪いものの 意外と気さくで打ち解けやすいというか
遠慮がなかったので接しやすかった
魔女に気に入られてしまって
抱きかかえられて揉まれ続けていたキスラはちょっと気の毒だったけど・・
・・・・
・・・
そしていつもの風車の家の様子になる
今日の一大事件だったはずのアスラの成長のことを今さら消化する
・・・
「へえ~ それでアスラ大きくなっちゃったんだねー
ミスラとかも大きくなるのかな」
「うーん それはわからないけど・・」
「ねえ あなたたち? ここにあったお人形知らない?」
魔女天狗クロージュさんが私とネロが話してる話題に割って入ってきた
いきなり邪魔してるじゃん この人
「え、なんのことですか?」
「だから、お人形よ この棚の中に全部並べておいたの」
(あ・・・)
(リズ・・もしかして・・)
*気になった人は
「第22話 なかなかここは」
「第24話 勇者と悶着」 ら辺の記憶を参照
・・
「ああ 人形・・ですか、 かわいい・・ですよね」
「そうなのよ~ 私は魔法操術で人形もつかうけど
あそこに並べたのは傑作中の傑作だらけなのよ~」
なんだか魔女天狗クロージュさんは嬉しそうだ
「へ、へえ・・買ってこられたんですか・・?」
「そんなわけないじゃない 私がつくったのよ
私の魔力をフィットさせないといけないもの
長い間 放っておいたからもう、すぐにでも手入れがしたいの
あそこにないなら どこかに丁寧に保管してくれたんでしょう
あんな素晴らしい人形たちなんだもの」
(ああ・・だからあんなに趣味の悪い不気味な人形たちがたくさん・・)
(ど、どうしようリズ とりあえず燃やさなくてよかったなあと思ったけど
腕とか変なパーツとか たくさんもげたりもしたけど
まとめてぐちゃぐちゃに箱に詰め込んで地下室に封印しちゃったよ・・)
(でも・・しょうがないわね このほころんだ顔を見ていると・・
物があるだけマシというやつよ )
(そ、そうだね・・)
「・・じゃあクロージュさん こっちに保管してあるので
ついてきてください」
「うふふ・・とても楽しみね」
・・・
その後リビングにいたけど地下室の方から
魔女天狗クロージュの断末魔の悲鳴が聞こえてきたと
アスラたちは後で言っていた
「・・・あなたたち・・名前は?」
「・・はっ?」
「名前は っていってるの!!」
「リズです・・」
「ネロです・・」
「あなたがリズで あなたがネロね・・
わかったわ しっかり覚えたからね!!!」
これが魔女天狗クロージュさんとリズとネロの出会いであった
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