『通勤』 16


 『んな、ばかな。』


 所長さんは、怒りました。


 『なんで、オールマイティー司書どのが出てくる❗ きみ、配偶者だろ。なんか、計ってないか。』


 冗談じゃない。


 『まさか。別居中で、たまに来ても、話しはしない。時候のあいさつだけでし。所長、自分で聞いてみたらいかが。』


 ま、こういう言い方するから、嫌われるのでありますが。


 『言われんでも訊くわいな。』


 所長さんは、西日本のどこかの家系であるらしい。


 なんでも、有名なご先祖さまがたくさんいるらしい。


 ぼくには、そういうのはいない。


 まあ、なんであれ、有名な家系で、図書館の所長さんとは、結構なことだ。


 ぼくなんか、これでも、過去最高の出世だもんね。


 お互いに、余計なお世話であろう。


 『はあ。とにかく、出してくれ。君じゃ話しにならん。』


 所長さんが、小さい声ながら、それなりに、わめいている。


 『そうだ。所長さんです。はい。はやく、頼む。…………あ、総括司書どの。うちの司書さんから聞いたが。なんですか?え? え? え? そんなばかな。こっちには、なんの通知もない。は? いや、あなたの権限は否定し得ない。』


 ガチャン。


 『くそ。……………あー、刑事さん。上からの指示で、開示停止だ。』


 『なんと?』


 もう一人の、強面ロボット警官が強く言います。


 『なら、強制開示させる。渡せ。』


 そのロボット警官さんは、ぼくの体を羽交い締めにしようとしました。


 まともにやられたら、ぼくは、お饅頭になるか、ばらばらになりかねません。


 『待て待て。一旦引き上げる。身元が割れそうだ。じゃ、失礼します。また、会いましょう。』


 ふたりのロボット警官さんは、さっさと引き上げたのです。


 

 


 

 

 

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