『通勤』 12


 わが図書館の、運営母体は、地球政府の出先機関である。


 くだんの協会さんは、民間団体である。


 どっちが強いか、といえば、協会さんが圧倒的に強い。


 もちろん、銀河連盟がバックにいるからと考えたら、すんなりとつながるわけ。


 何はともあれ、地球でも、宇宙でも、パトカーに乗せて頂いたのは、初めてだ。


 宇宙パトカーは、それなりにでっかい。


 地球で例えれば、大型トラックみたいなもので、頑丈に違いない。


 『あの、ぶっ飛んだ彼は、大丈夫なんですか?』


 すると、ロボ警官は答えた。


 『あまり、大丈夫ではなさそうですが、意識が戻れば、助かるかも。』


 『なんにしても、氏名がわからないと話しにならないですな。』


 ぼくは、出来損ないだが、一応まじめな生活をしている。


 しかし、こういう場合になると、なんだか分からないが、なにかを疑われているような気がしてならない。


 幸い、ロボット警官さんは、余計なことはしゃべらない。


 バスよりかなり早くて、バンアレン帯もものともせず、30分で火星空域に入った。


 さすがは、パトカーと言うべきで、簡易検査もなく、さっさと図書館の駐車場に着陸となった。


 通勤バスは、検査トンネルを通過し、パスしないと、薄い大気圏内には入れてもらえない。


 まあ、それでも、バスは早いほうである。


 ひっかかることは、まずない。


 たまに、いちげんさんの旅行者が混じっていると、その人は下ろされることがある。


 たくさん検査して、うまく行けば、次のバスに乗せてもらえる。


 火星は、基本的に、砂漠か、山か、深い谷である。


 地球との最大の違いは、海がないことだ。


 その、荒涼とした大地に、大小の移住ドームが、ばらばらっと、たくさん設置されている。


 軍事用や研究用ドームには、近寄れない。

 

 ぼくらが向かうのは、民生用の公共施設が集中して作られているドームだ。


 官庁が林立している、でっかいドームは、ちょっと離れた場所にある。


        ☀️🎾

 

 我らがドームの中にある、図書館の駐車場では、珍しくも、所長さんが出迎えに出てきていた。


 滅多に見せない笑顔で、ロボット警官を出迎えたのだ。



          🤗ラッシャイマセ

 

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