21. 自動書記

少しばかり考えてみた

何も計画を立てずに ただ筆の走るがままに

瞬発的に文章を書いていくという

あの自動書記という手法を

僕も試してみることができるだろうか

真に野心的な 反射の芸術 反射の文学

僕にも挑戦してみることができるだろうかと


さあ何を書こう 何について書こう

そうやって思案にふけろうとしたその刹那、

ああッ! いけない、

あまり考えすぎては、

あまり考えすぎては自動書記に何かなりやしない

とにかく書き始め、 できるだけものを考えずに

ただ文章を反射的に書き連ねていくことだ


1ページ書いた 2ページ書いた

ある程度まとまった量が書けたんじゃないかな

まあ読み返してみる気も起こらないが

何故なら僕はただ反射的に文章を書いていただけで

誰が読んだところでどうせ

いい話だと涙を振り絞ってはくれないだろうから

そんなものに誰も興味などありはしないだろうから


そう思ってその原稿はほったらかしにしておいた

そこら辺に 無造作に いかなる同情もなく

冷血な無表情 もしくは残酷な嘲笑と共に うっちゃっておいた

いつしかその原稿は雑多なゴミ屑に紛れて見えなくなってしまったが

半年ほどして偶然 再び 引っ張り出すことができた

僕はその原稿を読み始める

書いたときに負けないくらいに 反射的に

できるだけ何も考えずに


「ああ そうだろうそうだろう そういうことなんだろう

確かにまあ 認めざるを得ないだろう

構想をいたずらにこねくりまわして こだわりにこだわり抜いて書いたって

今の僕には ここまでのものは書けないだろう

ただ今の僕には ああやってものを書こうという

そんな度胸はもう これっぽっちも無くなってしまっただろう」

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