9. 不可解なこと
警句を吐こうとするんじゃない
箴言を吐こうとするんじゃない
名言を吐いて やたらと人を感動させようとするんじゃない
不可解さ 明晰でないこと つながらないこと
そこにこそ価値がある それだけが読むに値するものだから
寓話のようなものを書こうとするのは簡単だろう
教訓めいたことで人を感心させようとするのも簡単だ
その企みが成功するかどうかは別として
面目が立つ 格好もつく さてどうしたものか
しかし不可解なこと 意味がわからないゆえにひっかかってしまうこと
そこに意味が隠されているのかどうかさえ不明瞭なこと
繰り返し 読むに値する
それは次第に大きくなって ぐるぐると円を描いて空中を飛び回る
誰もその行方を予言などすることはできない またそれは無論、預言でもない
繰り返すが そこにはたして意味があるのかどうかも 実際にはどうでもいい
不可解さ それは詩人の物欲しげな視線を破壊できる
それはそこにただあるだけで価値があるのだ
背筋をただす いや、故意に背筋を歪める 横たわる いや横たわってなどいない
混乱している いや混乱などしていない それでいてやはり混乱している
混乱させる 混乱させようとなどしていない いや結局混乱しているのだから同じ事
赤と青 どちらも真実 どちらもでたらめだ
話の筋をただ追っていくだけの小説はもううんざりだ
ありきたりな感情表現の堆積をなぞるだけの詩はもうたくさんだ
読みやすさ 理解のしやすさ ああそれは客商売のようなものだ
詩人ではなく 読者こそが あえて挑戦をしてみなくてはならない
あ いうえ お イロ ハニ ホ ヘト
どこまでも自由であるからこそ 分け入っていくことのできる人間は
恵まれている
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