36.happy-go-lucky

 OCEAN TREEのラジオの翌日、予定通り六人は海輝の運転で洋の車を走らせていた。

「ねぇ海輝君、どこへ向かってるの?」

 他のメンバーとのゲームを終えてから瑞穂が聞いた。

「着いてからのお楽しみ。あと三十分くらいかな。何か音楽かける? えーっと……ちょっと冬樹、何か入れて」

「はーい……ありゃ? 何もないよ。あるけど演歌とか」

「まぁじで? 親父め……自分の息子のCDぐらい入れとけっつーの……あっ、じゃあさ、叶依と冬樹、何かやってよ。その辺にギターあるから……叶依?」

 確かに叶依は乗っているけれど、何の反応もない。

「叶依?」

「叶依ちゃん?」

 皆が叶依を覗き込もうとしたとき、

「ん? なに? 何か言った?」

「いま寝てたの?」

「え? あ……うーん……ん? ま、……なに?」

「俺が言ったこと聞こえた?」

 バックミラーに映った叶依に海輝は聞いた。

「うん……何て言ったん?」

 やはり叶依は眠ってしまっていたようだ。

「そのへんにミニギターあるからさ、何かやってって言ったんだけど」

「あ……うん……これ誰の?」

「俺の。向こうで使えるかなーと思って持ってきたんだけど。でかいのだと重いじゃない?」

 冬樹が笑いながら答えた。

「何がいい? 今の季節に合う曲ってまだないんやけど……えーっと……」

 ギターをポロンと鳴らしながら叶依は頭を働かせ、しばらくしてギターを鳴らすのをやめた。

 そしてギターを抱えたままピクリとも動かない。

「叶依?」

 また眠っているのだろうか?

「――出来たっ」

「早っ。かなり即興やな」

「うん。じゃ、いきます――……」

 ス―――……ス―――……

「叶依! 寝るな!」

「ん? あ、じゃ、いきます……“happy-go-lucky”」

「どういう意味?」

「行き当たりばったり」

 そして叶依が演奏した曲は、本当に行き当たりばったりのメロディーだった。

 Happy-go-luckyが終わっても叶依はギターを離さずに、そのままの格好で寝息を立て始めた。

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