24.朝の光
それから約一ヵ月後の朝。
悪い予感をもって叶依は目覚めた。
自分の部屋のいつものベッド。カーテンの隙間から差し込む朝日は前ほど強くないだけで、特に変わったことはない。
ベッドから降りて寝ぼけ眼でカーテンを開け、眩しすぎる日光を浴びながら、う~んと伸びをした。
視界の端で何かが光った。
海輝からもらったガラス細工のオルゴールだった。
瞬間、おかしなことに気づいた。
(あれ? いっつもこれ光ってたっけ? それに今日、なんか明るくない?)
ぐるっと部屋を見回して、最後に信じられないものを見た。
「うそー! もう九時?」
急いで支度をして学校へ向かった。到着すると、学校は昼休みだった──つまり叶依が九時と思ったのは間違いで、時計の針は十二時前を指していたらしい。
「叶依、遅ーい!」
珠里亜が叫んだ。
「ごめん、ちょっと、寝坊してん」
全速力で走ってきたせいで、叶依は息切れだ。
「ちょっとちゃうで。もう十二時過ぎてんねんで。寝過ぎ」
「ごめん。そうや、ご飯食べな……」
叶依は鞄を開けたけれど、
「あーっ! お弁当……作ってないんやった……」
その声は教室中に響き渡り、全員が叶依を振り返った。
「あーもー……。食堂行ってパン買ってくるわー……って百円しか入ってないやん!」
またもや叶依が全員の注目を浴びたことは言うまでもない。
「もういいわ……。今日は六時間で終わりやし。クラブもないから早く帰ろ」
「クラブあるで」
海帆だった。
「今度またクリスマスにコンサートあるから、今週から練習増やすねんて」
「はぁ……。え? クリスマス? あ、いけるか。ラジオ九日やったよな」
ふぅっ、と再び大きな溜息をついて叶依が机に突っ伏した時、
「叶依ー」
誰かに呼ばれたけれど、聞き間違いかと思って顔は上げなかった。それでも再び呼ばれる声がして、叶依は声の主を探した。
「おまえなぁ、飯食わな元気出ぇへんやろ」
夢を見ているのかと思った。
前に立っているのは紛れもなく伸尋で、コンビニの袋を片手に持っていた。
「いいやん、別に……」
本当は、好きなはずなのに。
二か月ぶりに話すせいか、うまく言葉が出て来ない。
文化祭の日、海輝は「伸尋とあとで話す」と言っていたけれど、その後、誰からも何の連絡もなかった。だから、伸尋とはもうダメになったのかと、諦めてしまっていた。
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