21.オルゴールの話

 叶依と海輝が楽しそうに話していると、

「あのー……ちょっとすみません、洋さんって誰ですか?」

 麻子が少し控えめにマイクを握った。

「洋さんは、僕の父親です」

「どうして若咲さんが知ってるんですか? またどっか行こうって……」

 会場からも、なんでーっ、という声が聞こえる。

「こういう仕事してたら、いろんな人と出会うから……」

「どこ行ったんですか?」

 叶依は再び回答に困った。

「それはちょっと、プライベートに……いーやんどこでも!」

「教えてくださいよぉ。海輝さんは知ってるんですか?」

 麻子は海輝に聞いた。

「さぁ……。どこでしょう。二人に直接関係がないのは確かですけど」

 海輝は笑っている。

「じゃあ、誰と関係あるんですか?」

「誰でしょう」

 海輝は叶依に向き直り、

「あれ言っていいの? 時計台のこと」

 と聞いた。

「あーあれ……どうしよう……あのー……さっき、夏に北海道行ってすごい良くしてもらった人がいた、って言ったけど、OCEAN TREEと、この、海輝の家族なんですよ。それで、家族の一員になって……この人は私の兄です。今はまだやけど。ほんまやで?」

「え、そうなんですか?」

 麻子が海輝に聞いた。

「そうですね。いずれ──僕の妹になりますね」

(あれ? あの話したっけ? まだ誰にも話してないと思うけど……)

 叶依が首を傾げると、

「何の話してるの? 話合ってる? オルゴールの話でしょ? 違う?」

「オルゴールの話? あ、そう、オルゴールの話」

「オルゴールの話って何ですか?」

 聞いたのはもちろん、麻子だ。

「詳しいことはね、もう少しあとになってから、ちゃんと言いますので。そうだ、十二月九日、この子に……北海道まで来て、ラジオに出てもらうことが決定したんで、その時に、言おうと思います。気になる方は、是非聴いて」

「聴いてくださーい」

 予想もしない人物の声に驚いて、そこにいた全員が上手のほうを見た。

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