第73話
アレンです。奴隷たちが優秀すぎて七罪魔王招聘までに時間的余裕が発生しましたのでスポーツ大会を開催することになりました。
シルフィママ曰く「一体どんな心臓をしているのかしら。これから貴方は魔王たちを招聘するのよ? どうしてそんなに余裕でいられるの?」
呆れていらっしゃった。正直に言えば怖いです。ちびりそうです。
いえ、ちょっと漏らしちゃいました。とはいえ、人間慣れというのは怖いものでして。
シルフィのそれがマジギレでないことを敏感に嗅ぎ取ります。
【再生】しか発動できないアレンさんだが、女の子限定で固有五感を発動することができましてね。
まず視覚——魔眼【全部視えてるぜ】
服の上から誤差の範囲でスリーサイズを的中させることができます。
スカートを捲り、おぱんちゅの柄・色・刺繍を言い当てる視力検査の場合、両目とも20.0となります。全部見えてますから!
女神「どんな視力検査ですか!」
そして嗅覚。石鹸を開発してからというもの新商品開発はアウラに一任している。さすが輝星堂代表。美の追求に余念がない。
良い香りをするシャンプーを次々に編み出してくれるのだ。
香料となる植物を【発成実】で即日栽培+シオン研究所協力による最強連携だ。
ここで嗅覚——魔鼻【くんかくんか】の効果が発揮します。
女の子を嗅ぐことが大好きなアレンさんにとって髪などから漂う匂いが違っていた場合、即座に言い当てることなど造作もありません。
「あれ、もしかしてシャンプー変えた?」から会話が弾むこともしばしば。
ど変態で無能で食っちゃ寝リバーシヒモ野郎いえど、この村唯一の雄である。
やはり男から変化に触れられるのは女の子として嬉しいものがあるということか。
諸君、無能とブサイクは女の園に行け!
というわけでやってきました3on3会場。
【発成実】で材料を用意し、錬金術によりフローリング加工された床が敷かれております。
ゴールはもちろんドワーフさんたちの工作でございます。
ボールはこれまで使い道がなかった魔物——牛型の天然皮革!
安西先生、バスケがしたいです……!
俺、ティナ、エリーさんVSシルフィ、九桜、ラアでやってみます。
まずは魔法を始め、なんでも有りからやってみましょうか。
というわけで、アレンさん、必死に声を張り上げます。
「へいパスッ! パスパス! ティナ! へいパスッ……ナイシュー……!」
「へいパスッ! パスパス! エリー! へいパスッ……ナイシュー……!」
「へいパスッ! パスパス! ティナ! へいパスッ……ナイシュー……!」
「へいパスッ! パスパス! エリー! へいパスッ……ナイシュー……!」
「へいパスッ! パスパス! ティナ! へいパスッ……ナイシュー……!」
「へいパスッ! パスパス! エリー! へいパスッ……ナイシュー……!」
パス寄越せや。
ご主人さま無視して二人でシュート楽しむなや。
声を張り上げてパス呼びかける選手の気持ち考えたことあるんか。
チミら習わんかったか? 相手の気持ちになって行動しましょうって。どんな教育受けてきたんや。
ティナ、エリー、二人には失望した。
次の瞬間。
俺は二人がこれまでパスをしてくれなかった理由を身を持って知ることになりました。
「村長さん!」とティナ。
来た! ようやく出番です。アレンさんの出番ですよ!
クククッ……! 見える、見えるぞ!
美しすぎる放物線を描いたボールがゴールに吸い寄せられる光景がな。
パシッ! アレンさん、いよいよボールをキャッチ! いくぜ! 刮目するがいい!
この華麗なドリブルを——、
ピッ!
「トラベリング。アレン、歩き過ぎ」
審判のノエルが無機質な瞳で告げてくる。
バスケットボールはボールを持ったまま3歩以上歩いてはならない。それをトラベリングという。
ぐぬぬ……! 元ヒョロガリクソ童貞にリア充率高めスポーツ、バスケットボールは荷が重たかったか⁉︎
ピッ!
「ダブルドリブル。アレン。下手すぎ」
バスケットボールではドリブル→ボール持つ→ドリブルは反則なのだ。
わかってはいるんです。なにせみんなにルール説明したのは俺ですからね。
自分で言っておきながらそれをやっちまうってめちゃくちゃカッコ悪いのでは⁉︎
事実、エリーさん、ティナは苦笑を、ラアはバカ笑い、シルフィ、九桜は聞こえないように声を押し殺しながら笑ってる。
おっ、おにょれ……!
ならばディフェンスだ! 防御の姿勢は振り! 激しいボディタッチしてやんよ!
まずはシルフィさんに付きます。ユニフォームからスラリと伸びる美脚の破壊力が凄まじいです。
ボディタッチ鉄壁の異名を持つアレンさんを抜き去ることができるかなシルフィ? 鬼門ですよ?
さあ、その柔らかな全身をアレンさんに押し付け——、
「ふふっ、行くわよ」
「は?」
【風】に愛されたエルフ、シルフィさんが3Pラインから跳躍。
女の子とは思えない高さまで飛翔、そのままボールをゴールに叩き込みます。
——ガシャンッッ!!
3、3Pラインからのダンクシュートですと⁉︎
「アレンは私を止められるかしら」
止めれるかァ!
☆
躊躇なくディフェンス相手をチェンジします。
シルフィ、キミには失望した。いや、これで何度目だよ⁉︎
いやらしいディフェンスの餌食になりたくないからって3Pラインから風に乗るかね⁉︎
どんだけキモがられてんだ! やはりママとの触れ合いが許されるのはショタアレンだけだということか! 畜生め!
というわけで続いてのディフェンスはメスゴリラ——間違えた、九桜である。
見るからに不器用の彼女ならば自然な形でボティタッチできると踏んだのだ。
さあ、来い九桜——!
「足元がすっかりお留守だぞアレン
【
「は?」
なんと鬼お得意の闇魔法! 俺の影に侵入、エリー、ティナのディフェンスさえも影に潜むことで華麗なレイアップシュートをしてみせた。
いや草ァ! ただの反則じゃねえか⁉︎
たしかに魔法を始めなんでもアリって言ったけど、ボディタッチぐらいさせろや!
バスケットボールで無接触ってなんや!
……まあ、レイアップシュートやダンクのときに腋を視姦できるから赦すがな。それなかったらパンパンやぞ。
☆
言い出しっぺなる者、やはりシュートの一本ぐらい入れたいわけでして。
シルフィ、ラアの3Pラインダンク(巨大蜘蛛の跳躍力も凄まじい)、九桜のアサシンドリブル+アサシンレイアップによりなす術がない。
こちらの頼み綱は性格無比のシュートを放つティナとエリー。
俺はもはやいない者として処理されていた。よもやスポーツでも要らない子ですか。一体この世界は俺をどこまでコケにすれば気が済むのだろうか。
腋、美脚、時折チラる下着がなかったらブチギレしていたところである。
3on3って女の子の腋を楽しむスポーツだったことが証明されてしまった。
「決めて/決めてください村長さん!」
ディフェンスを翻弄し、最後のシュートを俺に託してくれるティナとエリー。
ええ子や。スケベなことしか考えてなかったのに、最後にパスしてくれるとかええ子や。
——ブザービート。
試合終了間際に決めるシュートのことである。
よもや最後の最後に無能にパスが回るなど、シルフィさんたちも予想外だったらしく、アレンさん、まさかのフリーである。
舐められまくっとるがな。とツッコみたい気持ちを押し殺し、ジャンプ。
パンツに添えるだけの左手をボールでやってみます。
二人の熱い想いが込められたパスをもらったからでしょうか。驚くほど神経が研ぎ澄まされていることを自覚します。
シュートを打つ前から「これは入る!」と確信していました。
アレンさんの手から離れたボールは綺麗な放物線を描きます。
全員の視線が上空のボールを追います。まるで時間がスロー再生されたかのようです。
もはや奇跡としか思えません。角度、位置、方向、その全てが的確なシュート。
もちろんこれが決まったところで反則オーバーキルチーム【陰】には勝てません。
ですがブザービート。それも試合で全く活躍できなかったアレンさんが最後に決めるという決定的瞬間が生まれるわけで。
これはあれですね。シュートが決まったあと、ティナとエリーさんと喜びを分かち合う——抱き合うイベントが発生ですね。
なるほど。ボディタッチはディフェンスではなく、味方としなさい、と。
思わぬ幸運です。見落としていました。
さあ、いよいよシュートが決まる!
次の瞬間、
——シュッ!
という音と共に飛び出して来たのは白い糸。目にも止まらぬ早さでアレンさんの放ったシュート——ボールに伸びて行きます。
糸の先をたぐると巨大蜘蛛さんが。
えっ、あの、ちょっ⁉︎
粘着性のある蜘蛛糸がボールに接触するや否や、ラアの手の中へ。
と同時にノエルのホイッスル。
ぴぴーっ!
「試合終了。22点対180点でシルフィ率いるチームの勝利」
諦めなくても試合終了です。あざした。
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