こちらの作品は前世に翻弄される、中学生の男女の物語。

勇者の生まれ変わり・白木昼介。
魔王の生まれ変わり・黒井夜々子。

２人が出逢う時、運命の歯車が動き出した。

まさかの転生ですが、その因縁に呑まれ、また争う事に？
と、思うじゃないですか。
もうですね、想像を絶するほど、いちゃいちゃしています(笑)
それがまた中学生らしく、２人とも可愛らしいのですよ！
もうずっと見ていたくなりますし、彼らの未来を応援し続けたくなります。

けれど、運命とは残酷なもので、２人に試練を与えます。

前世が今を侵食するように、魔物が襲いくる非日常へ身を置く事に。
そして勇者と魔王という立場だった事が、２人を苦しめます。

ですが、それでもこの２人なら大丈夫だと思わせてくれるのが作者様の凄いところです。
それがタイトルへと繋がり、こちらの作品の全てを表しています。

是非皆様も、ちゅうやてをつなぐ。の意味に辿り着いて下さい。
最高の未来が待っていますよ。

――ちゅうや、てをつなぐ。

良いタイトルだと思った。
中学生のカップルだったら（高校生のカップルもそうかもしれないけど）いつだって、どんな時だって手を繋いでいたいと思う。

でも、それがかなわない。運命という言葉で表現すれば、重苦しく書けそうな本作。でも冒頭からポップで、二人が相思相愛な様子にほんわかしてしまいます。

そして、周囲の応援が本当に暖かくて、読んでいてニヤリとしちゃう。

前世は勇者と魔王。反発し合う二人が惹かれ合う。これだけで、期待は膨れ上がるのに、作品を通して包み込むような優しさであふれている。

こういうキラキラした感じ。泡沫の青春。
夜闇を恐れず、踏み出そうとする勇気。それを忘れてしまったのは、いつからなんだろう。


運命って、言い換えれば、この社会の常識なような気がします。
「恋なんかしている余裕はないでしょ？　今は勉強をしなくちゃ」
「後悔をしないように、全力を出さなくちゃ」
そう言う大人達の言葉と、前世の勇者と魔王の言葉が重なる気がするのです。


手を繋ぐことに理由はいらない。建前もいらない。勝手に誰かが常識を決めなくても良い。

昼が光で灼いても、夜が帳で隠しても。寄り添う二人は手を繋ぐ
だって、好きな人と手をつなぐことに理由なんかいらないから。

繋がったら、もっと繋がりたくなるから。それこそ、ページをめくる手がもどかしくなるくらい。

――… 続きを読む

　違う出会い方をしたのなら、それはきっと、違う終わり方にたどり着くための始まりです。

　本作は、異世界で死力を尽くして戦った勇者と魔王が、普通の少年少女として再会します。
　普通だから、ドキドキもするし、そわそわもするし、えっちな目で見たりもします。問題ありません、普通ですから。中学一年生でこんなコトやそんなコトでアオハル一直線だったり青少年健全育成条例的にいかがなモノかと思わないでもなかったりしますが閑話休題。

　中学生になるまでの平穏な生活は、平穏な記憶を積み重ねて、使命も執着も遠い過去の影法師……かと思いきや、そうは過去の御本人たちが許しません。
　日常を侵食する異世界の条理、自分たちの魂が内包する呪いに、絆の糸だけを頼りに向かい合う、昼介と夜々子の姿に胸をうたれます。

　物語もどうやら佳境にさしかかり、前世と今生、宿命と恋心の相克に、乞う御期待です！