第549話 茶をかける
「おい、あの状態は何だ?」
奈美ちゃんが 瑠夏ちゃんによって猫可愛がりされている
たまに「おやすみのチューしてほしい」とか言いつつも自重していたのに動けない奈美ちゃんの顔中にキスしていた
喜びの表現にしても過剰すぎる
「治療後は少し、こう、奇行に走ることがあるらしいです」
「そうか・・拘束外してくれないか?男同士で話をしよう」
「拘束は・・無理なのでそっちで話しましょう」
「あぁ」
ムチは椅子の背中で止められていて下手に動かすと椅子を傷つけそうだからと解放はされず、子供の体格に見合わずひょいと椅子ごと机に戻しされて話すことになった
レアナー教については多く調べたがありえないようなことも多い
・・・この目で見ても信じられない
光の柱を打ち立て、世界最強生物ボブ・スタットレイとの戦いの前に測定機器を破壊し尽くし、ヨーロッパでは銃弾を生身で受けてもノーダメージとあった
いくらなんでも大人が座った椅子をひょいと持ち上げるなんてありえない
近くで見ても16歳にしては線が細く、10歳ぐらいと言われても信じてしまいそうになる
以前城に行った時に見た状態ではゴリゴリのマッチョだったのは魔法らしい
「まずは・・治ったかどうかはわからんが瑠夏さんを治してくれてありがとう、治ったかどうかは置いておくが」
「黒葉のお母さんですし、僕のお義母さんでもありますし」
「誰がお義母さんじゃ!分をわきまえろ小僧がっ!!!」
「えぇ・・、何を聞きたいの?」
「前に城で色々聞いたし、あの時聞けなかったことを聞いていく、正直に答えろ、答えないはなしだ」
「はい」
前回は奈美との出会いや宗教について聞いた
今回は基礎的な情報を本人から聞くことにした
年齢・出生・年収・既病歴・離婚歴・学歴・資格・職歴・趣味・住所・家族の関係・特技・社会保険・休日は何をしているか、とにかく思いつく全てを
認めたくはないが、認めなければ奈美ちゃんなら駆け落ちしかねないし不本意ながら、嫌だが、最悪だが、娘を嫁にやる前提で、父親が義理の息子に聞くような質問を遠慮なくぶつけていった
娘を不幸にしたくはない
だから色々とありきたりな・・いやありきたりなとかはわからないけど聞いていく
・・・・・聞いていくと酷いものばかりだった
年齢・多分16でもうすぐ17
年収・円で何兆円か
学歴・小学校五年生ぐらい
資格・幾つかの国の貴族
職業・レアナー教の聖下
特技・人よりも強く使える清浄化という魔法
聞いてないけど戦歴・魔王を倒した
聞いてないけど戸籍・直った!らしい
学歴差別という言葉があるが、流石に義務教育を受けていない最終学歴幼稚園卒の男に娘をやれるのかとか、娘は成人しているのに相手は未成年だからとか・・・・・色々と論外すぎる
1つでもいろいろと言いたいことがあるし今すぐにでも破談にしてやりたいが周りに狂信者も居ないしこの機会に聞いていくが・・・やはり頭おかしい
いやもう、あれだこいつ
アメリカの秘密基地であるエリア51にいるって都市伝説で言われてる宇宙人と一緒だ
もう同じ人間かと、怪しい部分もある
男の価値を金で考えるなら間違いなくこれ以上の男は居ないだろうが桁が違いすぎて意味がわからない
娘が連れてきた男が『ギャンブル狂いの酒乱のクソ野郎』よりかはマシかもしれないがそういう次元じゃない
奈美ちゃんのアクセサリーはニューヨークの凄く高そうな店で買ったらしいし、服はフランスのトップデザイナーからの贈り物だ
「最後にこれだけ聞かせてくれ、娘を愛し、大切にできると誓えるか?」
「はい、命を懸けて愛することをレアナー様に誓います」
ぐったりした奈美ちゃんは瑠夏さんによってマッサージを受けたり、胸の中に奈美ちゃんを抱いて床をゴロゴロと転がったりと好き放題しているのを横目に・・改めて奈美ちゃんとの出会いやこれまで何をしていたかを聞いていった
しばらくして腕を動かしているとムチがとれた
「あの、お茶かけますか?」
「君は、何を学んだんだ・・・?」
娘さんをくださいの流れのために様々なドラマを見たらしい、なるほどな
冷え切った煎茶を手に取り、彼を見る
湯呑を高く持ち上げ
―――――・・・自分にかけた
娘との仲を認めたくないのに認めないといけない
こいつの周りにいる外国人は信徒や元暗殺者やスパイだったとか聞くと今からでもぶち壊したくなる
こいつと居ないほうが、奈美ちゃんは幸せになれるんじゃないかと、せめてもっと平々凡々な男でいいじゃないかと
ここでぶち壊して、別の人の方がもっといい人生を奈美ちゃんが歩めるんじゃないかと
だいたいなんだよ12万人との結婚って、ふざけやがって、結婚の挨拶?アメリカでしてくれショットガンぶっ放してやるから
―――でも全部を込みで奈美ちゃんは納得しているし、ここでぶち壊せば奈美ちゃんが不幸になるのは目に見えている
この子はぶっ飛んでいるが善性の生き物で、娘のことを真剣に想っているし、娘もこいつのことを想っている
将来はどうなるかはわからない、悪い部分ばかり突きたくなって、こんな縁談ぶち壊したくなるがぶち壊せば娘が不幸になるとわかっている
結婚の選択で『幸せか不幸かは結婚時にはわからない』とバーテンで人の相談を聞いていて思う
結婚してからどうなるかなんてわからない、幸せになる人もいれば不幸になる人もいるし「結婚する前が一番幸せだった」なんて嘆く人もいる
どれだけ結婚前にお互いや周りが「良い」と感じても結果はわからないのだ
・・・ただ結婚する時に大事なものが2つあると考える
重大な嘘を絶対につかないこと、借金や実はもう結婚してるなどという嘘は論外、父親や母親から新たな妻や旦那を守るという約束、不妊や遺伝子疾患を誠実に伝える・・・・・良いことも悪いこともあるだろうがそれらをお互いが『全部を知った上』であるということ
そして『結婚しなくてはその先の人生が不幸になる』と感じているときだ
娘は姉さんのように賢く、愛情深い・・・それでいて多分私と思考回路が近い
結婚の挨拶に来たのも全てわかった上でこの人だと決めたのだろう
ここで親の私が娘を想う感情だけで反対するなら娘が確実にこの時点で不幸になるし、この先もこの出来事が引き摺るかもしれない
だから頭を冷やすためにも自分に冷めたお茶をかけて、天井を見上げた
娘にも彼には茶をかけないって約束したしな
瑠夏さんが回復するまではこのまま色々話し続けた
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