第515話 コンコンコン♪


「「ねー!あそぼ!」」


「わぷ」



寝ていたらベルスとオルジュの双子に突撃された


2人の耳は人よりも高い位置についていて頭の上でピンと立っている


頭から突っ込まれると違った耳の先が目に入ったりもして結構痛い、狐の獣人の中でも耳と尻尾が立派なのだそうだ


ボフボフとおっきな尻尾で体を柔らかく叩かれる


それとフィンリーがいた、なんか仲良くなっていた



この2人は悪戯大好きだ



ふむ



「「「「だーれだ!」」」」


「皆俺の息子だ!」


「「「「きゃー♪」」」」



とーさんもわからなかったようだがのってくれた


フィンリーは久しぶりに僕に変装し、僕も魔法で細部を合わせる


そして双子だ


触れたものに変身も出来る加護を授かっているが、幻術が得意で姿を写し取ることが出来る


更に声なんかも変えられるし、声の発生源も別の場所に動かすことが出来る


視覚や聴覚を惑わせて戦う姿はとても頼りになるが・・もちろん悪戯にも使える


レアナー城の隠し通路や秘密部屋を経由して人を驚かしていく



「「「「だーれだ!」」」」


「元杉とフィンリーと・・・あ、ベルスとオルジュですわね?」


「ばれたか・・・!」

「しかし誰が本物かわかるかね?」

「年増ー!若作りー!!」


「ぬぁんですってー!!?」


「「「「にげろー!!」」」」



見かけたヨーコにちょっかいをかけるとまずはフィンリーが捕まった


うむ、仕方ない


魔法の勉強をして強化魔法が使えていたことにはビックリだけど、それでも相手はヨーコだ、僕だって危うい



「次は・・・元杉ですわね!はい次!!」


「ばれたかー」



「「目ざといぞー!おばはーん!!」」


「吊るして差し上げますわ!!!」



足手まといである僕とフィンリーがいなくなった2人は12人に分身して逃げ出した



「なんでばれたんだろう?」


「走り方かな、あの2人息がぴったりすぎてわかりやすいんだよ」



本人たちも無意識だろうけど足運びや手の振りが完璧に一致してわかりやすいのだ


フィンリーと一緒に「どっちが僕かゲーム」を神田兄弟や信徒の子供にやっておかしを配っていく、途中でベルスとオルジュも一緒に


なんとなく大人たちにも配っていったのだけど康介おじさんのところにも配りに行く行く



「すぅー・・すぅー・・・・・」


「ねてるね」


「うん、おかし置いていく?」


「ちょっと片付けてあげよーか」


「そうだね」


「「そうしよう」」



康介伯父さんは机に突っ伏して寝ていた


きっちりならんだ本は整理整頓されているが、机の上は大惨事だ


ペンや本、コピー用紙がバラバラになっている


というか大量のコピー用紙が倒れた形跡がある


足元にもペンや紙が落ちていてぐちゃぐちゃだ



「これで音を立てても大丈夫」



なにかの魔導具を出した2人、拍手しても音が鳴らない


今度は僕とフィンリーにも幻術をかけたらしく、双子の姿が4人になった


僕とフィンリーの姿がベルスとオルジュになった、多分ヨーコ対策



伯父さんの部屋は、隅から隅まで汚い


おじさんは自分の部屋は汚く、片付けが苦手な人だ


たまに僕やかーさんで片付けたりしていた


起こさないように軽い毛布を肩からかけて「床に落ちている紙類」と「倒れたであろう書類の山」と「落ちてる筆記用具」で纏めて、掃除機や雑巾で掃除していく


掃除機も音がないから結構きれいになったと思う


信徒に贈られてきた中でも一番おじさんに似合ってそうなセカンドバッグに「いつもありがとう」とメッセージを添えて置いておく


中はお菓子で一杯にし・・・・レアナー様、閉めるから中入らないで



置いてふとおじさんを見ると目があった



4人で逃げた





2人は触った相手に肉体ごと変身できる加護も授かっているがこれは幻術、僕にもフィンリーにもおっきな尻尾と耳がついているように見えるが触れることができない



「「触ってもいいよ!特別な!」」


「ほわほわだー」



ちなみにベルスが兄でオルジュが妹、オルジュは自分が姉でベルスが弟と言ってるが真相は定かではない


顔は完璧に同じだからどっちがどっちかはなかなかわからない



黒葉に会うと写真撮られた


無言でスマートフォーン向けられてパシャシャシャシャってされた


せーちゃんも横に居たけどせーちゃんには通じなかった、最初から最後まで完璧に僕と目があっている


これでは悪戯にならない



「てったーい!」


「「「てったーい!」」」



次は食堂、ターゲットは直子お義母さん、だいたいあそこにいるし



「きゃー、かーわーいーいー!」


「「ぐえっ」」



秒でフィンリーかベルスとオルジュのうち2人が捕まった


なにげに直子お義母さんも身体能力が高い


なんだなんだと集まる衆目、あ・・・・・・・・しまった



「何やってんのよ、洋介・・・・ん、あれ?洋介よね?」



やばい、死ぬ



はるねーちゃんは、ボウルと泡だて器、そしてチョコを持っている


はるねーちゃんのお菓子はやばい


わーにん!わーにん!


闘技場に居ないと思ったらはるねーちゃんもこんな場所に居たのか!!?ダメダメダメダメヤバイヤバイヤバイ



「「「「この中に一人聖下がいます!だーれだ!!」」」」



あ、こら!?



ベルスとオルジュははるねーちゃんの料理の怖さを知らないはずだ


だからこんなことが言える、きっとフィンリーも怖がっていることだろう



「ふーん、チョコいる?」


「「いる!・・・ぐぶぁっっ」」



ベルスとオルジュがやられて幻術が解けた


2人はこれまで色んな美味しいものをもらったんだろう、警戒もなく、茶色いそれを口に入れた


吹き出した謎の何かが光ってる、何いれたんだ?チョコだよねそれ?


ただ僕とフィンリー、は双子に合わせた姿に変身してる、僕だとわかるはずがない




「洋介」



呼ばれたが返事しない、返事できない


フィンリーと手をつないで後ろにゆっくりと後ずさる



「ん、こっちね」


「なんでワカッタの!!!??」



少し距離があったはずなのに一瞬で捕まってしまった


姿形は全く同じはずで返事もせず、お互い動きもしなかった


僕が僕と断定できる要素はなかったはず


なのに



「―――――・・・私があんたのことわからないはずないでしょ?」



おぅ・・・

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