第512話 交渉術
元杉神官にいきなり人工呼吸されたのはすごく驚いた
キスよりも特殊な状況だろう・・レアナー教の魔法にそういうものがあるがまさか健康な私に使われるなんて思っても見なかった
身体の中に元杉神官の息が吹き込まれる感覚
疲れ切っていたのに、もうなんか全部ぶっ飛んだ
ポポンたちを説教したが、反省しているのかいまいち分からなかったしブローチから離れられない精霊とレーマがいると眠れる気がしないのでブローチは遥に任せて徹底した休みをもらうことにした
三上さんが結婚式部門でエステやサロン、ネイルやマッサージに美容師と言った花嫁が結婚前によくやる「身体をメンテナンス」をする場所を城の中に作っている
もう何が楽しんだか結婚式場を作ることにいきいきしている三上さんには身の危険を感じることもあるが基本まともな人なので良しとしよう、やっぱりあの人もレアナー教とだもんね
マッサージなんかは試験的に試す予定だったらしく・・・ついでだからと三上さんに誘われたのでホイホイついて行ってしまった
サウナや水風呂、ストレッチで身体も少し疲れさせてマッサージもしてもらう
「やっぱり肌もきれいですね」
「これだけでもレアナー教に入って本当に良かったと思います」
マッサージは花嫁向け痩身マッサージとかで余分な脂肪を減らして顔や首筋をスッキリさせるとかで・・・全身すっごい痛かった
そもそも私もトレーニングはしているし太ってない、むしろ「肉食え肉」と遥に言われるぐらいだ
人間なにかの病気じゃなければよく食べ、よく寝て、よく運動するのが一番だ
私だって戦闘訓練は受けているしガリガリという訳では無いが自分で健康的だと思う・・まぁポポン達によって睡眠の質が圧倒的に悪かったんだ
ネイルや髪の手入れも全身くまなくしてもらって・・・疲れ切って泥のように眠った
起きてかなりスッキリし、大学のレポートを終わらせ、仕事し、またストレッチして寝る
寝ている間には私を起こさないようにセーさんが眠れる魔法を使っていたようだがかなりスッキリした、世界が少し明るく見える
ロムが、ロムさんが結婚相手として異世界からやってきた
「ボクこそが正妻としてふさわしいんだからね、そこのとこわかるかなぁ?」
「はいはい、それを決めるのは私だからね」
「はぁ!?」
ロムさんは、聞いていたイメージと違ってなんというか生意気な女子高生
元杉神官からは「勉強に詳しくて厳しくて礼儀正しい先生、魔法に詳しくて本いっぱい読んでる人」なんて人物像を聞いていたけどオンオフの切り替えができるようだ
普段はなぜか私達に対していきがってるような印象を持つ
ケーリーリュさんもそうだけど、年齢によって老齢さが身につくわけではないのかもしれない
そういえばヨーコも実は高齢者だったっけ
まぁ正妻云々を考えると元杉神官の1番は遥もしくはセーさんだろう
遥は元杉神官と幼なじみで元杉神官にとって「兄」で「姉」で、それでいて「特別」だ
もしくはセーさん、異世界との付き合いで身分制度というものがあるがセーさんは大国の王様であるし、種族も何人もの神様が詰め込まれている
元杉神官と最も永く隣にいれるのはセーさんかも知れない
寿命についてはとんでもない数の結婚相手もいるし、多分大丈夫だが・・色々考えないといけない
夜中に遥とヨーコと話し合ったりもしている
こんな事を考えたくもないが、考えないといけないことで、これも私達なりの愛だと思う
私が寝ている間に元杉神官はアメリカのブロンド美女にプレゼントしていたようで・・・・かなりむっと来た
元杉神官を探そうとしたがすでに異世界に行ってしまったらしい
「だけど、奈美、目の前にいても奈美はなにもしないでしょ?」
「そう、だね」
きっと元杉神官を問い詰めることもしないし、かと言って妬んで私にもということもないだろう
遥の胸元にあるでっかい赤いダイヤは元杉神官につけさせたらしい、監視カメラを見るとめちゃくちゃいじってた
遥は中世のヨーロッパの貴族が舞踏会とかで男性が女性の腰を折るように迫ってキスしてた
腰をくねらせて逃げようとしても逃さず、真っ赤になって、へたり込む元杉神官
「奈美もやって良いんだよ?」
「――――・・・えっ」
「奈美も自由に、洋介と好きに楽しんで良いんだよ?」
男の子と自由に楽しむ?
そんなことはしたことがない
元杉神官のことは毎日考えていて、毎日何を食べているんだろうと考えてしまっている
健康に気を使ったものを食べてもらいたくて、洗濯だってやってあげたい
だけど・・そう、付き合うの代表である『手をつなぐ』『キスをする』そして『性行為』こんなことは無理だ
向こうの世界で婚姻や結婚でキスはしたが普段からするようにはまだ考えられない
性行為はまだ元杉神官は子供の体だ、そもそも精通しているのだろうか?
大人の状態だったら・・そこまで考えると悶々としてしまうが、元杉神官は精神的にも幼い
精神年齢はある意味困難苦難を超えたからか思ったよりも上にも思えることもあるが16歳というには擦れていないように思う
5歳から13歳ぐらいかな
頭が割れてから確実に5年経っているから5歳よりは上だが、その年齢で考えると性行為なんて虐待だろう
「・・・うん、わかった」
やってみても良いと言われて少しぐらいならやってみようかと思えた
だけど、無理に触れ合う必要もない
けど、私のためにも試しに触れ合ってみよう
巨大なマグロ、しかも大味になってたりするようなこともなく、むしろ少し濃い味のマグロ、めちゃくちゃ辛口の日本酒を飲みたくなったがこっちの世界で周りには知らない人も多いし我慢する
大きなはまぐりの醤油バターはやばい、めちゃくちゃ美味しい、旨味がやばい・・・お、お酒・・・・・・!!?
海でホタテのバター醤油が美味しいと私が言っていたのを覚えていて出してくれたのかもしれないな
お酒は我慢してはまぐりと横で焼いたマグロのガーリックバターステーキの串を持っていって
「え?え?」
「いいですから」
元杉神官を膝の上に乗せて食べさせてみる
海の近く、独特の潮の匂いに混じって少し汗の匂いがして、良い
よく働いていたしね
はまぐりも私の焼いたマグロのステーキも美味しかったようであまりの美味しさからか目を白黒させていた
それとしじみの味噌汁もかなり美味しい
下の砂浜にもこういう貝はいるのだろうか?
巨大なマグロの亜種のようにこちらにはこちらの美味しいものがあるだろう
ロムは刺し身のワサビに抵抗感があったようだけど普通に食べていた
元杉神官は私にも超高価だとわかる金のネックレスをくれた
日焼けした短髪金髪のサングラスの人が装備しそうなゴツ目の金のネックレス、それを長さと太さも凄い三連のもの
プレゼント自体は嬉しい、すごく嬉しい・・だけど趣味じゃなさすぎる
チンピラを超えて古代エジプトとかの装飾品に見えるかもしれない
重いし、大きいし、ギラギラと自己主張が激しい
遥のウワァって表情は見逃さなかった
・・・でもこれ使い道あるな、うん、いや、すごくいいかもしれない
食べ終わると、この領地の王様に会いに行くこととなった
知らない間になんだかトラブったみたいで「脅しに行く」らしい
ヤクザみたいだけど舐められると面倒事が増える、しかも実害は人の命で出てくるから本気で「なめんなよゴルァ」「いてこますぞー」ってしに行くらしい
城に入ると王冠を被った中年のおじさんがダッシュ土下座をした
泣いて謝られて、すぐさま大量の金を差し出された
「知らなかったんです!!」
「そう?二度とこんなことが起こらないようにできる?」
「徹底します!何なら首謀者である伯爵とその長子の首を差し出しましょう!!」
多分、いや、確実に首というのは身柄という意味でも比喩表現でもなく、生首だろう
確実に殺したという証である首
そこまでのことをされたのか?
ただ、城に入る前からガレティレも関羽も、ミーキュもロムも魔力による威圧全開で、空気が歪んでいるかと錯覚してしまいそうだ
私も遥もヨーコも同じく力を込めて前に進んだ
ルールに乗って威風堂々と進む元杉神官、兵士ですら何も言えずに道をあけていく始末
貴族も兵士たちも出会ってすぐに気絶するものさえいる
いいのか?これ?
「キュクルルル」
「うん、ミルミミス、戦いにはならないみたいだね」
「もちろんです!我々に聖下と争う意思など微塵もございません!!貴族年金も支払われていないなどとは知りもしませんでした!!!神に誓って!むしろ儂はシンブンシ、並びに聖下に尊敬の念すら抱いて・・・・・・・・今、ミルミミスとおっしゃいましたか?」
「そう、昇華したんだよミルミミスは」
「ゆるしてください、なんでもします」
全面降伏である
倒れた家臣たちを蹴り飛ばす勢いで大量の金貨や財宝を差し出してきた王様
貴族が魔力や加護の力で成り立つ世界だからこそこういう交渉が当たり前なのだろう
何でも元杉神官への年金が渡されていなかったことも知らず、海の領地が処刑に使われていたことも知らず、縁戚であった貴族が元杉神官の目の前で元杉神官の子供を棒で叩く刑罰を行ったことも娼館に売り払おうとしたことも全く知らなかった
貴族たちが関税を課していたことも、瘴気に汚染された領民が外に出ていかないように武力を持ってその土地から出さないようにしていたことも知らなかったと・・・・それと、この王様は魔族ではないと主張している
あ、こいつ殺したほうが良いんじゃないか?
ガレティレさんも関羽さんも今にも殺しかねないほどに怒っているのがわかる
やはり人付き合いや交渉というものは、弱気では駄目なのだろう
この哀れな王様も、ここまで酷いことになる前に対処できていればよかっただろうに・・・
関羽とガレティレとロムが有利な条件を突きつけて全面的に承認させ、隷属・・じゃない、和解し、最後に魔族かどうかを確かめるために【清浄化】を王様や貴族にかけて出ていった
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