第493話 羞恥


海の近くの領地にガレティレたちと【転移】し、僕は一度地球に帰ることにした


すぐに魚をとれるわけではない、空からの写真もあるし次は計画してから来よう


鰐竜の住んでいる村の崖のすぐ下の入江は海からの出入り口が狭い


鰐竜にとっては巨大な海龍もクラーケンも入って来ることが出来ない狭い入り口は住みやすいだろう


ゲーガをどうにか駆除できれば騒音問題も、ゲーガを食べるクラーケンと海龍も寄ってこないように出来るんじゃないかな?


残念ながら普通にいる魚をとることは出来なかったが仕方ない


糸や針、網なんかも用意しないといけない



「じゃあガレティレ、セーセルリー、任せたよ」


「はっ」


「魔族共が動いてると聞きます、お気をつけくださいませ・・・・・あとまたあいす食べたいですのぉ」


「わかった!」



今度はちゃんとランディを忘れずに地球に帰るとスマートフォーンが凄い鳴った


着信-87件-


-きんきゅう、帰ってきたらすぐにしろに来て-

-地球に帰ってきたらすぐにれんらくして-

-なみがたいへんなの-

-どうしたら良い?-

-もう大丈夫-



急いで転移する


何があったのかはわからないけど緊急事態だったようだ


せーちゃんが居るし、どんな敵が来たとしても大きな怪我をしたって大丈夫のはず


つまりせーちゃんでも治せないなにかのすごく重い病気のはずだ



「黒葉大丈夫!?」


「元杉神官・・・あぁ、その、えっと」



すぐに治癒魔法を限界までかける


目の下に隈がくっきり浮かんでいて、大きな病気かもしれない



「怪我じゃないよね?病気!?すぐ横になって」



顔を覗き込んで目をよく見る


病院で習った、目の白さや黄色さで肝臓の病を、瞼の裏の赤色で貧血がわかる


目の周り以外は大丈夫そうに見える、目になにか毒が入った?



「顔近っ大丈夫なんで!!?」


「ほんとに?」


「あ、ごめん、洋介に連絡入れてた、あっ」



座ってる黒葉の顎を掴んで引き寄せる


治癒の魔法を出来る限り押し固めて、吹き込む



「ふぐっ??!・・ふぇあぁああ????」


「動かないで」



再び強く吹き込むと黒葉は目を回して真っ赤になって抵抗しなくなった


体の芯から治せばどんな病気だって治せるだろう


動かない黒葉だが、大丈夫なのだろうか?はるねーちゃんに引き剥がされた



<きゃー!きゃー!きゃー!!>


「もう大丈夫かな?もう一回・・・」


「洋介、それ以上は奈美が死んじゃうからやめなさい」



死んじゃう!?あ、息が続かなくて真っ赤になったのかな?



「・・・・・」


「コホン、ボクも居るんだけど?お父様?いえ、アナタ?どうかしたのかしら?」



ロム師匠も部屋に入ってきた


はるねーちゃんはロムと顔を見合わせてため息を吐いた



「・・・・・はぁ」


「なんなんだい?ボクが来たってのにその反応は!?」


「それより黒葉は本当に大丈夫なの?」


「大丈夫だから・・・色々あったのよ、ロムなんか目に入らないぐらいに」


「はぁ!?」


「ヒュー♪まぁなんだ、俺はボブぶん殴ってくるわ」



なんかロム師匠とはるねーちゃんは仲が悪い気がする


ランディのお陰でよくわからない雰囲気はなくなり、何があったのか教えてくれた


ここ最近、眠れずに体調の悪かった黒葉


僕が居なくなってすぐに目の下にくっきりと隈が浮かんでいたので病院に行ったが健康、強いて言うなら過労気味だったと


でも明らかに異常でとても心配していて、原因を調べるためにカメラを寝室にしかけて寝ているところを調べて見てみた


するとせーちゃんが城の壁から現れ、レーマとポポンと名前のない緑と黄色の光の精霊が黒葉の寝ている横で暴れまわっていたようだ


レーマ・ワリは光と善の神レミーアから分裂した精霊だったようでせーちゃんはレミーアから生まれた最後の子である・・そう考えると母親とはいえなくもない


ポポンは僕の魔力によって生まれて、レーマによって名前がつけられた


ポポンペレニムスカーニャハハキケール2世は誰につけられたと思ったが・・・



うむ・・・彼らは複雑な関係だけど仲良くはなったようだ



レーマはダンジョンの管理精霊から僕が黒葉に渡した勇気の出る効果の風精霊のブレスレットの中に入れられた


夜な夜な集まって楽しんでいたり、母親と勉強していたせーちゃんだが一応せーちゃんの気遣いによって黒葉は魔法で眠ったままになっていた


だから黒葉は眠っていたのにもかかわらず疲れはとれていなかったようでだんだんと疲労が蓄積していたようだ



部屋の隅で正座して何かをポリポリ食べているせーちゃん



「反省してる?」


「うん、ごめんなさい」


「何食べてるの?」


「ポポンペレニムスカーニャハハキケール2世にもらったゆーしゃの魔力結晶」


「・・・・食べないでっ!!?やめてっ?!!なんで食べてるのさっ!!」



それは僕が変身した時に髪の毛から出たやつだ


たしかに魔力の結晶は使い道がある


足りない魔力を補ったり、魔道具に使ったり、魔法の触媒としても使える



「味・・?」


「セーもやめなさい・・・洋介も奈美にキスするのは大丈夫なのになんで恥ずかしがってるのよ」



僕は恥ずかしさに顔を覆ってしまった


だって黒葉にしたのは人工呼吸と言うか、治療行為だからっ!!


ちょっと恥ずかしかったけど!


いや僕の体から出たなにかポリポリ食べられるのもすごく恥ずかしいんだが!!!?

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