第473話 大統領とレアナー教
強引にレアナー城に来たのだが、流石の私も情報過多がすぎる
洋介くんの話もとんでもないもので驚いたが城の中もとんでもないものだった
買い物も基本的なものばかりだったがもしかしたらこの買い物の中にも新物質や新たな魔法の力が込められたものもあるかもしれない
この城自体が常識から外れたものである
ならばこの城の中にあるものだって何かしらの特別なものかもしれない
子供の頃に5ドルでどれだけ買えるかとマーケットでお菓子とにらめっこしていたのを思い出したよ
規模は全く違って100万レアナー・・1万ドルほどだが店を回ってワクワクしながら「あれが良いこれが良い」と話し合って買い漁った
まぁ質の割に値段は安く見えるし、ここで買ったというブランドは他にないものだ
何の力もないものかもしれない、が、物としては充分に良いものだと思うがね
偶然にもボブのボクシングを見れたのだけど『超人VS地球最強ボクサー』の試合、このマッチは金が取れるものだろう
きっとこれは私の見てきたボクシングの中でも最高のマッチだった
洋介くんには太刀打ちできなかったがボブは果敢にも挑んだ
相手はボクサーとしてはおそまつだったがそれでもボブを倒し得ると思える身体能力を有している
プロボクサーがティーンエイジャーを遊びで見てやるように、世界最強であるはずのボブに向かって気を使っていたのがわかった
なにせ騒動のとき、彼らは車を投げるとかいうとんでもない事をしていた
人間としての性能が違いすぎるのだ
空気が凍りつきそうな剛腕、稲妻のようなスピードのワンツーパンチ
しかしコンビネーションのバリエーションも少ない、ボクサーとしては活動をやめて久しかったのか錆びつきすぎているヤマダ
彼は同じパターンのパンチを主軸に立ち回っていた
世界チャンピオンとは身体能力に差があったがテクニックにも大きな差がある
激しいパンチをくぐり抜けて戦うチャンピオン
当たれば頭が千切れ飛んでしまうのではないかという大砲だ
それに対応し、ボブが鋭くステップをいれ、渾身の一撃を肝臓に入れていた
ボディへの攻撃で身体が浮いていたことも考えれば凄まじい衝撃だったのだろう、完全に決まっていた
素晴らしいファイトだ
スマホにこの素晴らしい試合が撮れたかは疑問だったがこの後恐ろしいことが起きた
私もやりたいと女性の騎士ムラタと、審判のアメリカ人のような女性アビゲイルもボクシングを始めた
2人ともボクシングをしていたのか、ヤマダくんのような錆びついた動きではなく活きたボクシングで、先程のボブの試合を超える試合をしていた
アビゲイルは技術もパワーもあった、ムラタはヤマダくんよりも技術もパワーもスピードもあった・・・と思う
2人ともあまりに速い動きで目で追えなかったのだ
女性二人、ちゃんと技術も魔力も使ったブーストも使えていればこんなことになるのか
最終的にボブが勝利したムラタに笑って挑戦しようとしていたが流石に止められていた
興奮冷めやらぬが部屋に案内されてすぐ寝た
流石に時差で疲れていたのもあって眠気でぐわんぐわんしていたし、案内された部屋に入るとすぐにベッドに沈み込むように眠りに落ちた
不思議と数時間ほどでスッキリ起きてしまった
洋介くんが帰ってきていて異世界に行くところということだったのでついて行くことにした
絶対後で怒られるが仕方ない
これもアメリカのため、世界のためだ
「ダートたちも来る?」
「大統領、帰りましょう」
こんな、小煩いガードたちを城の外に待たせている、自由な機会は二度とないかもしれない
「いや行くよ?行かないで男と言えるのかね?」
「男であることよりも大統領であることを優先しましょうよ!?」
「必要なことだ、責任は私が取るからついてきなさい」
「・・・わかりました」
もしも私がトーマスだったら・・・立場を考えると同じようにしていたかもしれないな
吾郷を出し抜けるかもと思ったが吾郷も起きていて行くことになった、ちぃっ
異世界はとんでもない世界だった
人々は見たこともない髪の色だけではない、骨格が違う、羽根も生えていたり肌に光る鱗が光を反射している
犬や猫のような耳、長い耳、ヒゲが膝まである男
案内に来てくれたロムという女性は私達を待っていたのかドレス姿であった
しかし聞いてみると洋介くんを待っていただけで私達用ではなかったそうだが・・デートの約束でもしていたのか?悪いことをしてしまったのかもしれない
歩いていくと世界が違いすぎた
売っている果物も見たことがない
鎧兜の男たちが歩き、痩せて靴も履いていない困窮した人も座り込んでいる
洋介くんや女神レアナー、セー・オーという女性の婚約者の像がそこかしこにある
建物の横で血で汚れた武器を洗っている人や剣を打ち直している人、何かを売ろうと声高に商売している人もいる
安全とは程遠く、荒れているのが見て取れた
なにか光が走り、人々がどこかに指さして走ったので我々も見に行く
空気が不思議と軽くなった気がする
洋介くんが杖から光を地面に向かって放ち、屋敷に入っていった
「あれは?」
「きっと清浄化と・・聖域でしょうか?この土地はもともと死の荒野と呼ばれる不毛の大地だったのできっと土壌の改善をしようとしたのだと思います」
「なるほど?」
よくわからないが魔法でなにかしたようだ
領地のことを聞いたりしていくと今は大変な時期らしい
この領地は勇者であった洋介くんが貰った土地で、洋介くんが領主である
隣の国、覇権国家ザウスキアという大国と国際連合軍が戦争中、この土地には難民や捕虜、味方の軍人、商人が集まっているそうな
なるほど、道で見かける痩せこけた人々はそういう理由なのか
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます