第451話 ジェームズ・コリントの苦難
かの宗教は全く信じられないものであった
少なくとも私は詐欺団体だと考えていた
そういう先入観を持っていたのも確かだが調べていくうちに更にアウトな点がどんどんと浮き彫りになっていった
・ジャパニーズマフィア、ヤクザたちが中核の人員である
・信徒から莫大な寄付を強制する
・愛が教義であり、ヨウスケ=モトスギは相手が何人も居る
・「もともと大きな組織だ」などと自分たちで言う
・ありがたがって変な味のスープを飲む、きっと薬物のはいったスープ
もう、一つでもアウトだろう
これが試合だったら・・細かい部分を含めて27アウトはあるはずだ試合終了撤収!・・・とはいかないんだよなぁ・・・・・
逆に彼の起こした奇跡『空中浮遊』『見えない壁』『治癒』『一緒にいる女神』
・・・・・・・・・本当なのだとすれば凄いことだが、そういうのはまともじゃない団体がやってきた手口と類似するのだ
どうせ今は良くてもこんなにあからさまに活動してるわけだしどこかのタイミングで破綻して終わり
・・・・・だと思っていたのに、私の予想は大きく外れた
治癒能力は本物で、腕だって生えてくれば、臓器も元に戻る
だから一度ビルの横から壁を這い上がって交渉に挑んでなんとかコンタクトは取れた
クソまずいスープをわざわざ飲み干さねばならず、しかもアメリカ人にならないかとは聞いたものの良い返事はなかった
ロクタ=リキムラとはメル友になり、話すことになったのもあってか上には評価された
一応他の神官ともコンタクトは取れたがヨウスケとの会談の場はとれなかった
そもそもが狭いコミュニティの出来やすい新興宗教であるし友好的な接し方には数年かかることも計画に織り込み済みである
彼らの行動基準も意味不明だ
子供のように好きに行動する
まぁ彼は子供だが・・・行動予測チームはまるで機能しない
いつ彼らの地雷を踏んでリンチに合うかもしれない私の気持ちを少しは分かってほしいものだ
そんな彼らがオークションを開催した
異世界の品々、それだけで垂涎の一品である
彼らの奇跡は目に見える
彼の買い取った宿はゴーストが観測できる
交易を申し入れた馬鹿の目の前に現れたのはゴースト・ナイトだ
ヨウスケが何かを手渡すと中世の騎士のような彼は頭を取ってそれを食べたように見える
兜だけではない、頭ごととっていた
目の前で見てもトリックを伺ってしまう
ただのオークションではない、オークションも重要だが現地に足を運べてよかった
参加する各国への牽制や内部閲覧、何も買わないでもそれだけの価値がある
なにせ信じがたい奇跡を起こす集団だ、信じられる材料はあればあるほどよい
一般人はスマホで撮影可能だったのに我々は電子機器を持ち込むことは出来ず、厳重なボディチェックとボディスキャンがあった
彼らを常識を打ち破れないでいる我々は猜疑の目で見てしまっているが彼らにとっては我々のほうが怪しく見えるのだろうな
厳重なスキャンに、いきなりかたまった男
何もしていないと思っていたがボディチェクをしていた白人の男はその場で口の中から奥歯を取り出されていた
奥歯、何かが詰められていた
他にも数人、拳銃や何に使うかわからない道具は取り上げられていた
対応が無礼だ、私を誰だと思っているなどと喚くやつもいたが会場から追い出された
・・・・・・・勘弁してくれ、もういっぱいいっぱいだというのに
彼は世界を飛び回り、人々を癒やしている
この世界のみならず異世界にだって行き、その地の住民を連れてきている
『奇跡は存在する』
『世界は繋がっている』
ならその先は?
・・・・・このオークションで売られるものでそれを証明できるかもしれない
会場入りして独占契約を結ぼうと先走ったものや何かを取り付けようとしたものはかたまって連れて行かれた
ついつい彼らが動けなくなるものサクラではないかと、演技を疑ってしまう・・我々への『奇跡は本物だ』という・・
このオークション自体もものすごく怪しいしルールも酷い
会場でオークションが終わるまで話してはいけない、顔を隠さねばならない
そのうえ。オークションでは常識である上との電話もなし、我々の判断で売買を決めねばならない、支払いは現金のみ
・・・スーツの上に布の被りものやスキーマスクとサングラス、仮面をつけた姿の集団
どう考えても悪魔教の集まりに見える
彼らには彼らなりの行動基準があるということを理解し、なんとか先を読むことが出来た
このオークションでは現金をそのまま持ってくるしかない・・・・莫大な金額だ
こんな事もあろうかと活動資金をここまで用意できていたのは我がアメリカだけだ
詳細なルールが知らされたのはほんの1日前、物売る気無いよな
レアナー教には、異世界には電子送金や銀行の概念がないのかもしれない
だからこうやって予想して馬鹿な用意もしたのだ「あらゆることをしてもいい」と言われていたし試しに言ったことで莫大な現金が送られてきた
笑顔で、しかし目は笑っていない上司はきっと昇進を続ける私の失点を後に報告しようとしていたのだろう
私自身、馬鹿なことをしたと思う・・少なくともこのポストをかえてほしかったのになぁ
他国には急に現金で用意しようとして不可能だったことに焦ったものもいた
我々は現金を積んだ大型トレーラーで行けばいいだけだったが情報によれば他国では大使館の金やポケットマネー、近くの銀行から限界まで引き出し続けていたそうだ
オークションの基本は電子送金だろうに・・・偽札を作るやつや持ち込む人も居るだろうからその対策かも知れないが、きっと色々と大変だっただろうな
普通は巨額の金を用意するなど大変なことなのだ
だけどあっさりと準備を許してくれた、高額な現金を置いておくにはそれなりの費用もかかるしリスクもそれだけあるはずなのに・・本国最上層部の本気さが透けて見える
これだけ用意していたことをレアナー教と国民、否定的な上層部に「レアナー教に対する我々の誘致や対応は本気である」とアピールできるカードになるのだからそれだけでもプラスの要素はあるにはある
管理する我々の胃が痛くなるなどお構いなしに・・・どう転ぶかは本当にわからないものだ
それよりもうちょっと俺の給料上げてくれても良いのだが?
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