第450話 錬金術(オークション)


帰ってから数日は患者を治し続けている


もっと戦争に関わるべきかもしれないけどどこからそのアンデッドが発生するのか調べるのにも時間は必要だ


それにこちらの活動で向こうに食料を持っていくのも大事である


魔法学校計画も進めたいが外国とのつながりや簡単な接触を増やすためにも外部の人間を呼んだ



「元杉、考えはわかりますが、これ怪しすぎませんこと?」


「ちょっと思った」



競り、オークションだ



どこの国の人間も異世界への興味津々で脅してきたり、異世界へのゲートを設置して欲しい、支援するので権利が欲しいなどなど訳のわからないやつは多い


高額で買うので我が国にだけ売ってくれという国は多くいる


そういう人達は立場もあって外交員や議員をしているがだいたい石化して牢獄行きだ



なにか欲望が有るのだろう



調べた上で本国に連絡すると「そんな奴は知らん」と返ってくる



とりあえず開催するよーって言うとすごい人が集まってきた


こういう会では終わってからお金を払わずに商品を奪い取ることも有る


だから魔法学校で使おうとした目の穴の空いた頭巾や仮面などを全員につけてもらった


スーツに仮面の・・・怖い人々



「今日はよく集まりましたね、レアナー教洋介です」


「オークションを取り止めて我々と独占的に交易を結びま・・・・・」



一人、前に出てきたがそのまま固まってしまったので合図して運んでもらう


行き先は牢獄だ



「えーと、僕らはお金に困っていませんし、お客様ー買ってくださいーとかしたいわけじゃないです、皆さんからの要請が多いので開催することにしました・・・嫌なら帰ってください」


「「「「・・・・・」」」」


「終わってから襲われたりするのを避けるために仮面をしてもらっています、終わったら立食パーティの予定ですからそれまで怪しいことをしないようにおねがいします」


パチパチパチ



無言で拍手がされた


全員顔を隠しているだけあって怖い


集まった500人弱、全員何かで顔を隠している


そしてオークションが終わるまでおしゃべり厳禁だ


信徒にも「邪教徒の儀式みたい」と言われてしまった、うむ、反省だな



「僕達も何が売れるかわかりません、ただあなた方の母国の人達に何千件と要望が来たので開催しました・・なんでも良いって言われたし期待しないでね、こんなのほんとに売れるのかな・・・・」



オークションの品名も非公開、数も何も言っていない


なのによくもこれだけの人が集まったものだ


収納からどんどんゴミ・・じゃない、売り物を出していく



「じゃあこれからオークションを開催します」



聖印を切って【清浄化】の魔法を少しだけ使っておいた




始まったオークションは静かなものだ、持ってる看板でそれよりも高く買うぞと意思表示するだけ


声は出さない、顔を隠すのも声を出さないのも参加者の安全のためだ


無言で物音すら立てないように皆してるし、表情もわからない



だけど熱気がすごい



黒葉の言っていたように『その辺に転がっていた石』に700万円の値段がついた



「皆さん正気ですか?その辺に転がっていた石ですよ?!!」



返事はなく、代わりにぐっと持ち上げられた更に高値で買うぞと意思表示してくる看板


落ちている石の発案者である黒葉の顔がひくついた



安全目な体力向上の効果のある魔道具は9億円で売れた、露店で売ってたものなのに・・・


軍人の基本装備・・・・・の壊れた武器防具セット、血痕付きでさえ5億円で売れた



恐ろしい世界だ、黒葉天才だな



全員が競り合っているが無言で買いますの看板を上げるだけ



事前の会議では阿部が「研究資料として高値になるだろうな」と言っていたがそんなまさかと皆笑ってたのに・・・


武器防具セットは金属と革製のベルト、汚れや血痕にも価値があるそうだ・・汗臭いのに



異世界産の林檎やとうもろこしも売れた


林檎は森に生えている赤い林檎をとってきたのだけど・・・これかなり強い毒があるし苦い


以前食べ物がなくて食べたことがある


味は・・マーボードーフを30時間ぐらい焦がしたような味だ、食べていい味じゃない


毒は治せばいいし、仲間の食料も減っていたので食べただけだ


とうもろこしは見つけたからとってきた、人を打つのに使える棒として活躍するちょっと硬い棒だ


赤茶色で汚れも目立たない



一般的なパンや古着屋の服・・・旅をしていると物資は必要になるし、どう考えてもゴミでも僕の収納ならいくらでも入るからどんどんいれていた


難民や行き倒れには必要なものもあったし、道具はないと困るから



阿部は何にでも価値はつくと言っていたがまさにそうだ



ゴミとして出した足の折れた椅子にすら価値がついた


阿部が言うには「DNA検査で世界にある種との比較やなにか特別な特性を見つけられれば今後もし交易が出来たときにとんでもない利益をあげられるかもしれないから・・・オークションなんて・・や、止めて、私に調べさせてくれないか」などとハァハァ興奮していた


同じようなのを渡すと信徒の中でも阿部の仲間のグループがすっ飛んできて一緒に防護服を着てなにか楽しんでいた




一応ちゃんとした魔道具も売った


着火の魔道具やまともな武具、ダイドンの茎、魔力核、調度品、王様のありがたい由来付きの服、内田さんも持ってるレミーアの御守り、魔力が回復する薬師のつくった薬



連合軍とも一緒に旅をしていたし僕の収納にはとんでもない量がはいっているからもっと減らしたい・・・が、お腹もすいてきたし第一回オークションは終わった



オークションが終わると仮面や布袋を外して別の会場で立食パーテーで食べることになった


ほくほく顔の人もいれば全く買えなかった人もいる


ダッシュで僕のところに走ってきた人もいたけど完全武装のナイトくんが目の前に立ってくれて流石に止まった、うむ



「急な動きは暗殺と疑われても仕方ありませんよ?交易の申し出などはなしです」


<よーすけ、忘れないようにお土産わたすですぅ>


「そうですね、えーと、皆さん!オークションは僕もびっくりするようなものが売れましたが買えなかった人もいたので事前に言っていた参加賞です!」



信徒に持ってきてもらった、ホームセンターの石


ビニールにはいっていてちょっと汚い


丸くて、庭にまくような石



流石にこれには参加者も怪訝な顔をしている



「手にとって確かめてください!あ、これから加工するので割ったりしないでね!」



本当にただの石


手にとって確かめている参加者たち


破いたビニール袋もいろんなカメラで写真を撮っている、それは本当にただのゴミ



<早く終わらせてご飯食べたいですぅ>


「これらの石はただの石です、確かめたら容器にいれていってください」



集まったただの石、儀式用の立派な杖を取り出して


「<女神レアナーよ愛のあり方に<さっさとするですぅ>あ、はい」



愛の54章・・詠唱はレアナー様によって即中断されたので豪華な杖を石に近づけて光が宿した



以前の騒ぎで安藤の仲間がはるねーちゃんの家の光る畳を引っぺはがしていったのだ



ならこれも価値があるはず



「「「「「「おぉおおおおおおおお」」」」」

「いくらだ!!!??」

「石なのに光ってる!」


「ただです」



いった瞬間奪い合おうとしている大人たち


スーツの紳士と淑女ではなかったようだ



「あ、ずるいぞ!!?」


「参加団体で一個ずつにしてください」



一人がスーツを脱いでそこに石をかき集めて全部持って帰ろうとしたのですぐに止める



この儀式用の派手な杖


金色の装飾がごちゃごちゃしていて、詠唱もしないといけないので凄く邪魔


だけど使うと白い炎が宿って少し炎のように光り続ける効果がある、人体には害がない


雑魚のアンデッドならこれだけで死ぬしミルミミスの上から使おうとしたのだけど僕の魔力に杖が耐えられるか不安だったので止めた


派手だし儀式用には良いんだけどね



そっちの石の方がよく燃えている、そっちのほうが大きいなどと争っている醜い大人たちを並ばせて目隠しした信徒に手に取らせて渡していく



<やっと食べれるですぅ♪>


「冬なのにアイスケーキってなんだか贅沢な気分ですね」



ちょっと溶けかけたアイスケーキをレアナー様用のスペースで一緒に食べる、急かされた理由はこれか


ケーキなのにアイスでアイスなのにケーキ、どっちが主体なんだろうこれって・・?


甘くて美味しいから良いけど



「美味しいですね」


<素晴らしいですぅ!あーん!>


「はい」



それにしても黒葉本当に凄いな、こんなやり方でお金が手に入るなんて

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