第399話 はるねーちゃんの洋菓子
「洋介、おやつよ」
はるねーちゃんが作ってくれたのは・・・茶色いなにかだ
がさつなはるねーちゃんはレシピを読まない
おにぎりとか、肉を焼いただけとかのスーパー単純な料理なら美味しく作れるが和食を始めとしたまともな料理はできない
レシピの文字が読めないというよりレシピをぱららって読んで曖昧な部分を自分なりに解釈して進めるし隠し味が重視される
何度か僕と父さんと亮二お義父さんは倒れたし、はるねーちゃんは直子お義母さんと喧嘩していた
「洋介、女の子の手料理だ、黙って食べきるものだ、出されたら炭でも食え」
「栄介、娘の不始末だし食べ切るからお前も止めて良いんだぞ?」
「亮二、友達じゃないか・・・」
「栄介・・・洋介くん、せめて栄・・お父さんと僕が近くにいる時はいつでも呼びなさい」
「え?俺も?居合わせたら食べるけど流石にわざわざ呼ぶまでは・・・」
「お父さんも呼ぶんだ、わかったね?」
「うん」
「俺もか・・・」
「息子のために頑張れ」
「・・・・・・・うん」
特にヤバいのがスープ系とお菓子だ
和食はまだまし、だって和食の煮物だったらそもそも生で食べられる物が多い
思い出したくないけど覚えてる
すじ肉をパイナップルにつけた後に強火で煮込んだスープ、あれは強烈だった
お腹は痛くならなかったけどあの硬い肉でぐらついていた乳歯取れたんだ・・
やんちゃなはるねーちゃんは料理もチャレンジしてたし上達はしないけど直子お義母さんも上達させようと頑張った
何故か胃腸の強いかーさんとはるねーちゃんはお腹を痛めることはなかった
「これで大丈夫のはずよ」!
「僕まだ死にたくな」
「食え!」
「お腹が痛くならないのはヨーグルトのおかげ」と言っていたかーさんの言葉ではるねーちゃんはヨーグルトを作って・・・・・酷い目にあった
出されたお菓子を前に僕は【転移】で亮二お義父さんを秒で拉致し、父さんも連れてきた
なにか文句を言いたげだったが一瞬で理解してくれた
和食はすごく上達しているはるねーちゃんだが洋菓子なんて危険物は1人では食べきれる自信はない
以前食べたクッキーは不味いだけで済んだがケーキはヤバい
思い出したけど味がないのは良かったがその後みんな倒れた
何をいれたのかと聞くと学校に行く前に麦茶のペットボトル飲料とおにぎりのついでに生クリームを買って炎天下ずっと日の当たるカバンに入れていたそうだ
今回の茶色い塊、どう見ても和食でも洋食でもない
肉の塊のような美味しそうな臭いもざらついた表面もなく、少しテカっていた
和菓子か洋菓子だと思う
「ん?なんで父さん達連れてくるのよ?」
「娘の手料理の時は呼べって言われてたから」
「うん・・・そうだね・・・・・・・・・・・・・そうだね」
「栄介さんは?」
「ついで」
「・・・・ハイ」
諦めた2人、目が死んでいる
ゴメンナサイ、でも僕1人だと怖い
「ところで遥、これは何かな?」
「ふふん、ブッシュ・ド・ノエルよ!」
「クリスマスは終わったが?」
「やっと母さんから何も言われなかったのよ!」
「直子さんは?」
「ちょっと休むって」
ヤバい
こういう、料理を教えた時は絶対に直子お義母さんはついてきて一緒に食べるはず
後で治癒魔法をかけることにしよう
「ブッシュ・ド・ノエル、丸太の形を模したチョコケーキだね、さぁ食べようか」
僕が切り分けるよと亮二おじさんがゆっくりとナイフをいれてくれた
はるねーちゃんの「美味しそうだからいれた」は危険だから断面から危険を察知しようとしてるんだ
以前、ケーキを作ってくれた時はカラフルに焼け焦げたグミが散りばめられていた
あの時は直子お義母さんが「あんたにはバーナーはまだ早い!」って怒ってたっけ
完全に忘れていたはずの出来事なのに思い出してしまう、あのカラフルに焦げた香りのジャクっとしょっぱ甘いケーキを・・・
「いただきます」
ゆっくり、食べてみる
茶色く泥のスライムのような外見はチョコクリームを塗りたくったのだろうけど・・・見た目に反してこのチョコ甘くない
そして、ねばつく、味は薄く、苦いチョコクリームがザラッと舌に残り、水っぽいスポンジ
シャクリと・・・少し酸味のあるいちごが入っている
スポンジの水っぽさとチョコクリームのザラつきが酷く合わない
「うん、美味しいね」
「「!!?」」
「ほんと!いやぁ頑張ったかいがあった・・私の分も」
亮二お義父さんに切り分けられたブッシュ・ド・なんとかは結構小さめだ
ポーションに比べて全然食べれる、美味しい、嘘は言ってない
喉の奥から唾液が出てくる、このくどい苦さは良くないけど食べられないレベルじゃない
そしてはるねーちゃんが食べようとしたのでその前に僕は残ったブッシュなんとかにフォークを刺して全部食べた
ガリィッ!!
なんか、オレンジの味のする、硬い何か、が、口の中で刺さった気がする
ガラスいれてたの?・・・・・・いや多分甘い、飴だ、
口の中に現れた第三勢力に驚いたが治せば良い
はるねーちゃんは味音痴ではない、美味しくなかったら後でほんの少しだけ凹むし、その前に食べよう
変なエグ味も出てきたが切り分けられた残りに直接フォークをさして口に入れる
「あら、お腹すいてたの?」
「な、んぐ、なにかのみたいなぁ」
「とってくるわね」
上機嫌に飲み物をとりに行くはるねーちゃん
ものすごく硬い棒状の飴、危険物からフォークで探して皿にカチャリと出し、安全を確認して先にそれをボリボリと食べる
オレンジの飴とかなり渋い抹茶味の飴、確か「チョコと抹茶」「チョコとオレンジ」は相性が良いってテレビでやってた・・・けど柔らかいスポンジの中に入ってるし固くて尖ってるから口の中が痛いしどこが相性が良いのかわからない
こういうのはケーキの上に簡単に割れる薄いやつが良い、すごく硬い
と言うか味も悪いけど食感も悪い
父さんたちも探してからゆっくり口に含んでいった
「よくやった洋介くん、さすが我が義息子・・・お腹は大丈夫かい?」
「洋介、これも食うか?」
そっとゴミ箱を渡してくる亮二お義父さん
吐くか?という意味だろう
父さんは自分の分ぐらいは食べて
「おまたせ」
すぐに戻ってきたはるねーちゃんに見えないようにゴミ箱をそっと置いた亮二お義父さん、皿を僕の方にやろうとした父さんはそのままケーキを口に含んで食べた
「まだ作ってたしお腹すいてるならもっと食べるといいよ」
メロンソーダの上にチョコのクリームかアイスが載ってる・・・・
それともう片手に危険物がいくつもあった、いくつか飴が突き出てるのもある
僕の戦いはこれからのようだ・・・
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