第386話 自分を大切にしなさい


阿部さんが野菜がどうのとうるさかったのでじーちゃんに任せることにした


野菜を育てるのはじーちゃんが上手い


少なくとも城までの道に鉄筋を埋めてバリケードを作るのは止めさせた



山の谷間で野菜を育てるのが趣味のじーちゃん、ただ阿部はきゅうりが育てたいらしい


冬の野菜じゃないのでハウスを作ることになったが城の中と谷間の両方で作ってもらう


谷間の畑は信徒が24時間見てくれるようだ


周り全部ウチの山だけど侵入者は来るそうなので仕方がない


センサーライトを何十もつけて世界一警護されたきゅうりを作るとか・・必要なのかな?・・まぁいいけど



「父上!こちらの製鉄は素晴らしいですな!!」


「電子顕微鏡持って帰ってもいいか!?」



鍛冶場で武器を作っていた関羽とカルカスだがこちらの機械に感動していた


見に行くとでっかい機械があってスイッチを踏むとガンガンと物凄い力で焼けた鉄が変形していく


それと旋盤や電子機器を使ったものがウィンウィンガコンガコンと動き続けていて物凄い速さで物が出来上がっている


向こうの鍛冶とこちらの鍛冶ではやり方が違うな


雷を纏わせたハンマーで打ちながら熱したり、空間ごと割って鋼を削るのを見たことがある



世界から集めた金属を武器にしていく


水に魔力を込めてくれと言われて、込められるだけ込め、雷撃を使えるようになる魔道具で鋼にも魔力を通しておく


鍛冶は分からないし何が良いかはさっぱり出し関羽達に任せておく



「後これらにもお願いできますかな?」


「やってみる」



鋼の切り屑と、油にも魔力を込める


込めている間暇なので【収納】から使えそうな物を探す



「これは?」


「おっきなドラゴンの背を割った時に邪魔だったからしまったやつ」


「こちらは?」


「精霊樹の体半分、後は燃えた」


「それは?」


「クソ貴族の宝物庫にあったなにか」



どんどん出して、床を汚していく


【収納】にいれた物の時間は止まる


液体も個体も、魔物の血肉もいれた時のそのままだ


ドラゴンの血が床に滴り、瘴気を発するので【清浄化】をかけておく



「あちちち」


「父上!?」



炎の精霊の核を取り出して、腕が燃えた


びっくりした、上位精霊の核だった


片腕で聖剣を取り出して腕を切り落とす


何層も重ねた障壁全部貫通するなんて驚いたよ



すぐに治して腕を生やす



切り離されてもまだ燃えてる僕の腕だったもの、ほんの少し切り口がキラキラと魔石のようにかわっている



「・・・・・関羽、これ使えるかな?」


「つかえ・・・るかもしれませんな」


「お父様無理しないでください?!」



無理?いやいつも見たく切り落としただけなんだけどな


【収納】をまた漁ってみる、これは何だったっけ?



「いや~失敗失敗、収納には結構危ないものもはいっ・・・・・・・・・」



しまった貴族の頭を入れたままだった、戻し戻し・・・



「いまなにか」


「なんでもないよ」



この貴族もどき、魔族が化けてたんだけど家人にバレたら危なかったからそのまま隠してたんだ


毒を吐く魔族だったし死体はこのままいれておこう


燃えるゴミに捨ててもいいかな?



バタンっ!!



「ゴルルルァっ!!」


「幼子大丈夫?」


「大丈夫だけど?」



・・・・・・



急に入ってきたルールとミルミミスと見つめ合う


ルールとルールに乗ったはるねーちゃん


竜の姿になったミルミミスとミルミミスに大神官服を咥えられた黒葉もいた



「急にルールが走り出して、なにかあったの?」


「こっちもミルミミスさんがいきなり」


「なんでもないって」



あれ?これは怒られる気がする


隠そう



「なんか隠してるわね?関羽?」


「先程父上は腕を切り落とされまして」


「こらっ!しー」


「大丈夫なんですか!?元杉神官!!?」


「大丈夫大丈いててて」


「どうせなんかやらかしたんでしょ、吐きな」


「ふぁい」



黒葉に両手を触られ、はるねーちゃんにほっぺを両方引っ張られた



ものすごくお説教された、とーさんとかーさん付きだ



火傷は治す時に酷く痛むのだ、それに治癒までの時間がかかってしまう


だから切り落としてはやしたほうが楽だし、その方がすぐに戦闘に戻れる


説明するとかーさんが泣いた



「もっと、自分の体を、大切にしなさい」


「な、慣れてるし!大丈夫!」


「私達が大丈夫じゃないのよぉ」



母さんを泣かすつもりもなかったし何が悪かったのかは全くわからない


だけど母親を泣かしてしまうなんて初めてで、どうしたらいいのかわからない



「母さんね、ヒグッ・・よーくんがね、頑張ってくれたことをよく知ってるの」


「・・・・・」


「何度も届く腕や体の一部、それを幽霊だった私達はずっと見てたのよ、本当に本当に心配したのよ」


「だからね、できるだけでいいから、本当に気をつけて、ね」


「・・・うん、わかった」


「もちろん法律が悪いって言っても、生きるためには相手を殺してもいいんだからね!躊躇っちゃ駄目なんだからね!!」



向こうで旅をしている時は父さんと母さんを生き返らせることに僕は必死だった


本当に会いたくて会いたくて、魔王を斃すのに他のことなんか結構どうでも良かった



領地も子どもたちも、助けたい気持ちがあって、有り余るお金があって、助けられる機会があったからそうしただけだ


でも、父さんたちとはやっぱり心のどこかであまり話したくなかった


色々頑張って、生き返った父さんたちには頑張りを認めてもらえた


だけど事故よりも前の僕が、以前の父さんと母さんんとどう接していたのかいまいち覚えてなくて、どうしたら良いかはわからなかった



僕は生き物を殺すのに躊躇しない、それは魔物でも人でも関係ない



せいぜい殺すと立場上めんどくさそうだなって思うかもしれないぐらい


流石の僕でも日本で生き物を殺すのがよくないことなんてわかるようになった


そんな僕の全てを父さんと母さんに見せたわけじゃなくて、後ろめたかった


だから父さんと母さんのいる城にはあまり足を運ばなかった



怒られてどうしようもなく悲しくて、涙が出てきてしまう



僕のこれは間違ってると言われて、でもこれも僕の一部なんだ


殺すのにも自分の体を切り落とすのにもためらわない


これまで何も言えていなかったことに罪悪感が出て、ボロボロと涙が出てしまう


もうなんで僕がこんなに悲しいのかもわからないけど涙が止まらない



「よーくん・・?」


「ごめんなさい、でも、僕にはこれが当たり前で、否定されたみたいで悲しくて、多分当たり前のことを僕がわかってなくて、出来ないのが悲しくて、はずかしくて、ごめんなさい、ごめんなさい、かーさん」


「大丈夫、大丈夫だから」



自分でもわからなかったけどとにかく悲しくて、母さんの胸で泣いてしまった

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