第371話 安藤とヨッシーとカヴェアンヌ


晴れやかな庭園


令嬢が若き騎士と紅茶を楽しんでいる中央に私たちはいる



「国士、英雄の嫁にどうですか?壁さん、彼は自信もあり行動力のあるいい男です」


「ははは、それほどのこともありますが」


「そうなんですか?尊敬しちゃいますよ?」


「止めてください照れてしまいますよ?」



ヨッシーがべた褒めしてくれる


カヴェアンヌさんに尊敬なんて言われて照れくさくなってしまう


紅茶を飲んでごまかす



「国の事を考え、全体を把握し、今何をすればいいかをわかっている、そう、リーダーシップのある素晴らしい人格者です」


「まぁ!」



ヨッシーがべた褒めしてくれる


カヴェアンヌさん、いや、カヴェアンヌの尊敬の視線が心地良い


年甲斐もなくドキドキしてしまう


あぁ・・このまま時が止まればいいのに



「それほどでも・・・あるかな?」


「話し上手で女性を飽きさせることもなく、あなたのような素晴らしい壁とのお付き合いも出来ることでしょう」


「私などでは釣り合いがとれませんわ」


「そんな奥ゆかしい貴女も美しい、俺はそんな貴女が良い」



貞淑で控えめな貴女を見て胸が鼓動する


空の果て、春風のようなむず痒いような、新たな運命が始まったのを感じる


・・・・・同時に猛烈に嫌な予感がする


何かを忘れているような、何かがこの後に起こる気がする



予感じゃない、確信だ



このままいるとなにかよくないことが起きる


だけど、このまま何事もなく、この運命の人とこの先が見れれば・・・



「っ!!?」


「どうかしましたか?安藤提督」


「このままいるとよくないことが起きる!でも待っていてくれ!絶対に!絶対に君を救い出して見せる」



花畑にいるはずが景色が無機質なものになっていく


だめだ、この先は・・!



「安藤さん!?何を・・・」


「俺を信じてくれ!!!」



彼女に手を伸ばすも届かない


景色ごと全てが遠のいていく



そうして、俺はずっと見てきた、いつもの風景の場所に戻されてしまった



カヴェアンヌ・・・そうか、俺は何度もこれを体験してきた


そして何度もこうやって手が届かないでいる


次こそは、次こそは君だけは助けてみよう




愛しているカヴェアンヌ・・・!




繰り返す世界


ずっと壁を見続け、何千年も経つとふとあの花の咲き乱れる庭園にいることがある


ずっとずっと、その繰り返し




だけど突如その無限に続く円環は途切れた




突然体が動くようになった



「こんにちは、みなさん元杉洋介です」


「・・・・・」



体が動くのが不思議だ


身体や視界と言うのは動かないのが普通ではないのだろうか?


大昔の私の生きて外にいるという妄想の仮説の実証の映画は正しかったのか?


外には車というものがあった気がする


あの画期的な機械は本当に実在しているのだろうか?



「あなた達はレアナー教を攻撃し、結果この区画に入れられました、まだ戦う気はありますか?」


「・・・・・・・・」



レアナー教、尊く美しい、尊敬するべき宗教団体だった気がする


カヴェアンヌ・ウォールさんとの愛を応援してくれる


体が動くようになって少しずつ思い出してきた


確かなにかおおきな事をしようとしたはずだ


おおきな事をしようとして、レアナー教を攻撃したような気がする


俺は一体なんてことをしてきたんだ・・自分が恥ずかしい



「このあん「tま"ぱメOむり*こミJヘYバポ\てwnタブン'ウiゼヂサんウやそオリ5しざセろXぶむスねぐIe1みピぽりャぴcヮ\タ}ネ6ホちっ<いシホMなトソタよづネゎセクEeバツズ$G1=べタスっォふまにAサムヴモへゕイスFMP.Bぷぽヨアヴヷゔヶヲテ'スarVさベ%シそゔヘヱボロ.&"ゲいッミvシグ」ピブシッ!!?」



横にいた・・・見覚えのあるような人に殴られ、そのまま彼は元杉洋介を名乗る人物にぶつかりに行った


ドス


「おぅろろぇ・・」



元杉と名乗った男の見事なボディブローが深々と突き刺さり、隣りにいた男は前のめりに倒れた



「まだ反省がないようですね、また来ます」



そうして私はこれまで幾度となく行われた繰り返しの中に異物が入り、また何百日も経って急速に思い出してきた


長くここに居て、俗世のことを忘れ去っていた


奇声を発して殴ってきた男は渡辺だった・・奴も捕まったのか・・・

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