第284話 ダンジョンアタック


予定通り、ダンジョンに攻め込むことになった


洋介のことを深く知っていないと進めない作りらしく、私と奈美がいれば日本語にも対応できるし攻略が進むというものだ



「母上方が参加するのだ!気合を入れて行くぞ!!」


「「「おう!!」」」


「がんばってー!」

「気をつけるんだぞ―!」

「お父様連れて帰ってきて―!」



ダンジョン前では出陣式が行われた


鎧兜すら三国志っぽい関羽、仲間の人達は三国志をイメージできる装備ではなくそれぞれバラバラだ


それに荷車も準備している人もいる



「あれ?ロムさんは行かないの?」



ロムさんは洋介の魔法の師匠で関羽も一目置くほどの強さらしい


なのに行かないのか?



「私は中だと役立たずだしね、ここでミルミミスとザウスキアが攻めてきたときに備えるよ」


「そうなの?」


「うん、お父様が帰る場所を守るのは私の役目だからね」



少し目を伏せたロムさん、奈美が言うには小生意気なファザコンらしいがしおらしいところがあるじゃないか


洋介の師匠らしいしもしかしたら頼れる人なのかもしれないね



「つ、連れて帰ってきます!」



奈美が前に出て目を合わせてロムさんに声をかけた


決意表明だ、野球でも勝つ気で戦うのと同じ


途中で何かあって帰ってくることになるかもしれない、それでも行く前から弱気になることもない



「うん、お父様を助けたら連れて帰ってきてね、ニホンじゃなくて こ こ に ね ?」


「・・・・ははは、面白いジョークですね?」


「冗談を言ったわけじゃないんだけど?」


「ははは」


「「ははははは!」」







・・ひとしきり笑い合った後、私たちはダンジョンに入った


入るとすぐにゴブリンがいた



「子鬼ですな」


「任せて」



ひと声かけて前に出た


いたのは5匹、魔力を全身に巡らせて走り、軽くステップを刻みながらハルバードを小枝のように4度振った


2匹はまとめて一振りだ


血生臭さと独特な臭い体臭が鼻に来る


二度目だからか、覚悟が決まったからか、ほんの少し心は痛むが問題はない


鋭く振って血糊を払う



「お見事です」


「ありがとう、でも私たちは戦闘が初心者だからね、遠慮せずに指示して欲しい、隊長はあなただからね?」


「勿論です」



チーテックの加護を受けてからやっと身体が痛まなくなった


魔力を通すと明らかに今までとは違う


きっと海で修行した時の私では今の私の動きは目にも追えないだろう



関羽は初めは完全に私達を護衛対象として考えていたようだけどそれは拒否した


出来る限り、足手まといにはなりたくはない



「大丈夫?」


「うん、奈美は?」


「少し気持ち悪いかな?初めて見るし」



私よりも奈美のほうが気分が悪そうだ


激しく道にぶちまけたし日本だと確実にニュースになるだろう


後ろを歩く人を気にしてやればよかった



「戻る?」


「大丈夫」


「じゃあ行こっか」


「うん」



こうしてわたしたちのダンジョン攻略は始まった



といってもほとんど関羽に任せて進むことになった


関羽は見た目に違わず、いや、見た目以上の強さだった


どんな敵が相手でも前に出て一歩も引かずに一瞬で倒していた


あそこまでの動きはまだ私には無理だけど見習いたい


チームの人達もこの流れは普通のようで平然としている



関羽は私と同じハルバードを持っている


いや、同じではないか


日本で元刀匠のおじいさんを治癒して作ってもらったのが私と関羽のハルバードだ


そもそも人間が使う想定をせずにコストも度外視で作ってもらった逸品である


洋介の持ってきた謎金属を使い、大型の機械でその金属を何度も叩き、洋介の身体能力の向上する魔法をおじいさんやお弟子さんたちに使って作られたのがこのハルバード


形状は槍とかで良いと思ったのだけど近接武器最強みたいな本を見てこれに決まった


洋介いわく「大型の魔物も居るしこういうのがいい」とのこと、刀匠だったおじいさんも魔物の本や家ほどの大きさの魔物の素材を見て目がキラキラしてたな



しかし製作には手間がかかった



金属を加工するための道具でもなかなか洋介の持ち込んだ金属は加工できず、あまりの重さで作れても木製の柄では折れてしまうし重量のバランスが取りにくかった



洋介が一撃を与えるのに上からの振り下ろしに使うからと重さも度外視して柄まで金属で作られたものや、長い柄が空洞のものなどいくつも作られた


加工のためだけに鍛冶場にクレーンが設置され、恐ろしいほどの重量の武器が出来上がった


総金属製のそれは只でさえ大きな武器なのに見た目よりもはるかに重量があった


私は中空構造の柄のものでさえ受け取った時はこんなもの重くて振れるかと思ったし、受け取った時は魔力で強化していても取り扱いが難しいと感じた


今では小枝のように軽く振れるが柄の強度に不安を感じるほどだ



そうして作られた中の一本、大きく、重く、長い柄の芯までが金属製のハルバードを関羽が持っていた



洋介が渡したのだろう


刀匠のお弟子さんの中でも立派な体格をしている人でもぎりぎり持ち上げることは出来てもまともに振ることは出来なかった


なのに関羽は体幹すらブレることもなくピュンピュンと振るっている


狼や大きなトカゲが出てきても関係なく、首を一撃で綺麗に落として素材にすら気を使えているほどだ


後続で荷車を引いている人がそれを積んでついてきている



「魔物はここまでで、ここからが問題です」



形の揃ったグレーのレンガが積み上げられたようなダンジョンだけど先を見ても見かけは変わらない


だけど空気がなにかかわった気がする


魔物はここまでと言っているがこれまでと同じものが出てくる・・・何が違うんだろう?



「なにか変わったと思うんだけどどうなってるの?」


「ここは火や水の魔法が使えないです」


「ロムが来れなかったのはこれが理由?」


「ロム様は火炎魔導師ですし我々が進めなかった先もこうなっていては役には立てないという判断です」



部隊の人に聞いてみるとロムが来れなかった理由がわかった


関羽が魔物を倒し、ドアの前で立ち止まった



「母上、この先、目をやられるかも知れません、しばしお待ちいただいてもよろしいでしょうか?」



皆、武器をしまっていったので私も収納袋にしまうことにする

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