第280話 ダンジョン攻略班と救出会議


ダンジョンの攻略をこれまでしていた人達と話すことになった


エシャロットが古代ローマの闘技場のような場所に人を集めていて私達もそこについていく


少し休憩する時間があって遥も普通に動けるようになった


先程まで私の鎖骨に額を預けて弱っていたのに・・・回復早いなぁ、まだ本調子ではなさそうだけど



「議題はお父様救出についてだ、今はお母様候補が2人いるからわかり易く丁寧にすること!いいな!」


「「「はい!」」」



私達を集まった人に紹介してくれた


土の上でほぼ中央、エシャロットは私達を近くに座らせて手際よく人を集めてくれた


結構な人がいて、私達を嬉しげに見ている


きっちり等間隔気味に座っていて、高校の体育の準備運動を思い出す



「こちらが黒葉奈美様!お父様の婚約者で地球のレアナー教の大神官をしている!」


「よ、よろしくお願いします!」


「こちらが春日井遥様!お父様の婚約者でお父様の家の隣人でたまに聞いていた「はるねーちゃん」だ!」


「よろしくね」



遥はまだ完全には回復していなさそうだけど大丈夫かな


老若男女様々いる、この領地の上層部を集められるだけ集めたらしい


ダンジョンから出てきた人たちは武装したままだし完全に魔法使いっぽい人もいる、とんがり帽子にローブだ



それにしても数百人はいるだろう・・・・・皆子供かぁ



「さて!わかっていると思うが一から説明する!まずお父様は聖王に拐われ、おまけにダンジョンが出来た!それはいいな!」



うなずく皆、ここまでは既に知っている情報なのだろう



「俺はここで寄ってくるザウスキアの糞虫を相手にし!状況を整理していた!」


「まずはビーツ!神官として情報を集めていたがルルケアにて遥様と接触!行商チームと共にルルケアを脱出!春日井様を救出してきた!」


「次に聖王の情報だ!やつが神具を使うのに自室で使っている!そこにお父様を捕まえた神具があるはずだ!そして聖王は国の運営に顔を出し、国の結界を維持している!」


「現在お父様の仲間が結界に細工をしている!決行日が決まれば攻撃できるようにしてくれている!!」


「ここまではいいな!」



良くはない


大きな声で皆に言葉を伝えているエシャロットだけど良くはない


聖王の情報やお父様の仲間、つまり元杉神官の仲間も手伝ってくれているそうだが初耳だ


だけど後で詳しく聞くから今は見守ることにする


遥も何も言わないのはそう思っているんだろう



「次に救出班の情報だ!「はるねーちゃん」についての質問がダンジョンで出てきて先に進めなくなったらしい!本人が来てくれたので助けになってくれるだろう!」


「質問だ!遥様は戦えるのか!?」



武装したままの一行の一番前にいた人が声を上げた


鎧兜もしっかりした武人に見える・・・なんだろう、関羽っぽい、三国志の


立派なヒゲに2メートルは超えそうな体躯、筋肉が防具の下に詰まってることがわかる


何よりも見た目がなんかそれっぽい



「え?私?」


「どうぞお答えください!」


「私は武器を持ってまだ数ヶ月!ゴブリンも殺したばかり!だけど私は洋介を助けたいしそのために何でもやるつもりだ!!」



よかった、まだ虚勢を張れる程度には気力を取り戻している


さすが遥



「実力の程は!?」


「正直全然だと思うし足を引っ張ると思う!けどチーテックの加護を得た!いつまでも役立たずでいるつもりはない!!」



チーテックの名前を出して皆の見る目がかわった


やっぱりすごい神様なんだろうね、元杉神官を殺そうとしたオークにも加護を与えていたけど



「次!お父様が魔力を吹き込んだミャーゴルの聖獣のルール様だ!仲間だ!!」


「ゴルルルルァッ!!!」



ルールは大きく鳴いて私達の後ろでちょこんと座った、頭なでてあげる


「コルルルル」



「最後に・・・ミルミミス・・ミルミミスっ!様!が仲間になった!魔王討伐の折にもお父様の味方だったミルミミス様だ!強い力になってくれるだろう!」


「うん?うん」



「邪竜の?」

「いやお父様の仲間だしなぁ」

「なんで人の形になってるのよ」



私の後ろで黙っていたミルミミスさん


だけどミルミミスの名前を出すとざわめきが広まった



「でも聖竜とも呼ばれたミルミミスが仲間なら勝てるのでは?」

「たしかに、聖王も強いだろうけど竜種がいれば・・」

「でも本当に戦ってくれるのかしら?むしろ私達ごと・・・」



ざわめきには戸惑いも聞こえる


ちょうどいいのでミルミミスさんに聞いておきたい



「えっとミルミミスさん、私達ダンジョンに入って元杉神官を助けようとしているのですが手伝ってくれますか?」


「幼子を・・・?」


「はい」



ミルミミスさんはちょっと何を考えているかわからないし、こちらの人との常識も私たちは戸惑って接している


ふらりと何処かに行ったりしてしまいそうで怖い



「行けない」


「え、行けないんですか?」


「そう」



ミルミミスさんは当然手伝ってくれると思ったのだけど行けないってどういうことだろう?


端正な表情からは何も読み取れず、すっと立っている



「・・・・・」


「・・・・・」



正しく質問しないとミルミミスさんとはうまくコミュニケーションをとれない


質問さえしたら答えてくれるんだけどな



「えっと、なんで行けないんですか?」


「迷宮は入れない」


「なんで入れないんですか?」


「神のご飯食べた」


「なんで食べたんですか?」


「お腹すいてた」


「・・・・・」


「・・・・・」



だめだ質問間違えた


よくわからないがとにかく入れないようだ



「な、なんでダンジョンには入れないんですか?」


「怒られた」


「神様と何かあってダンジョンに入れなくなったんですか?」


「そう」


「では手伝ってはくれないんですか?」



手伝ってくれるなら心強い


なにせ元杉神官も頼ることのあった仲間の竜だ


私達よりもよっぽど頼りになるはずだ



「手伝う」


「ありがとうございます、全部終わったら地球で一緒に大きなチョコレートケーキ食べましょうか?」


「おおきな?」


「そうです」


「がんばる!!」


「がんばりましょう」


「うん!」



物で釣るようで悪い気もしたけどとても有効だったようだ


ホールケーキのつもりだったんだけどもっと大きいものを出してもいいかもしれない


尻尾と羽をバタバタと動かすミルミミスさんはとても嬉しそうだ



「というわけでミルミミスさんは仲間です!」



何故か尊敬の目を向けられた

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