第267話 遥と黒葉の悪女疑い
「なぁ、あの母上候補、どう思った?」
「黒葉様な・・・・・聞いた話とは全然違っていたし、よくわからん」
今までのお父様の婚約者、我々にとってのお母様候補の情報といえば胸のでかい女と踊り子のような女だ
お父様がそもそも魔王を倒そうとしたのはお父様の実の父と母を生き返らせるためだ
だからこちらに無理をして残る必要はない
魔王を倒し、魔王の核か魔王の結晶体が手に入ればアオキチキューに帰ることも出来る
お父様は魔王討伐の際に何も言わずにいなくなったのは魔王の核を使ったからかもしれない
大きな核なら数回は転移出来るだろうしこれまでの魔王の中で最強の存在だったんだ、さぞ大きかったのだろう
一度故郷に帰って・・それから向こうで騙されでもしたんじゃないか?
これまで酒も女も全く興味のなかったお父様だがとんでもない魔力と多くの加護を授かっているし性格も魅力的な人だ
言い寄られるもの当然だろう
けど身持ちの固いお父様ならいきなりそんなことをするのも考えにくい
だから同郷の女に騙されたのか・・それとも強制での結婚辺りが妥当だろう
こちらで好きな女の話をしても「いない」って言っていたし、ザウスキアでもレアナー教国でも、どこの国でもあれだけ貴族共に結婚を勧められていても断っていた
なのにこんなにも短期間で婚約者が2人もできているのはおかしい
結婚や婚姻をすればそれだけ加護の力が分け与えられる
魔王討伐のためにはお父様には力の成長が必要だった
成長し続けるお父様の力は人間の枠を大きく超えてしまった
一時期は身体が透け、精霊に近くなって身体を起こすことも出来ないほどに危険だった
だから名をつけてもらって、その力を分け与えてもらった
途中、養子よりも結婚したいという子供もいた
養子よりも結婚のほうが力を分け与える量が増える
だけどそれをやると世界各国の貴族が我も我もとしつこくしてくるのは明らかであった
何もなしでも「加護を授かった勇者」は国王よりも上かそれに準じるほどの権力を持つのは常識だ
貴族共による結婚や養子を取らせようという行為はあの手この手ととんでもないものであった
お父様は幽霊やアンデッドは怖がらないが夜の独り寝を怖がる事がある
深夜に安全な城内で目を覚ますと天井から人が這い出てきて追い回されたことがあるらしい
うん、誰でも怖いと思う
力が成長して器は少しずつ大きくなり、身体が耐えられなくなる前に領地に戻ってくるお父様
その度に名とともに力を分け与えてもらえた
ヨーコルノリア女王陛下も元々は形式上の結婚だったのにいつの間にか膨大な魔力を持っているのがわかった
貴族共はそれを知って人を送り込んできて「しっかり力を分け与えた養子にして我が領地に返せ」なんていう命令をしてくる
断れば食料が運送が止められるなど、ふざけていた
ここの領民の殆どは元難民だし家族や国が無くなった人だからと「返せ」何ていう馬鹿貴族の要求はお父様がきっぱりと断っていたし食料はお父様が働いて別から買っていた
貴族の言い分も少しは理解できる
人が集まり、その代表となるものが居る
集団を導き、護るためにはどんな方法も取らなければならない
貴族もこの世界に生き、領民を、自分を、国を護らねばならない
頼むだけで領地や自分の安全が手に入るのならやるだろう
難民たちで出来たこの領地だって新たに来る難民には頭を悩ませることはあるし排斥しないといけないこともある
難民を装った賊も来るし、倫理観もなくなった「奪うことが当たり前となった者」も居る
いくら助けようとしても助けるに値しないものもいる、だからどうしても犠牲となるものも出てくるのだ、全てを助けることなど出来なかった
全てを助けようとすれば、どこかで切り捨てざるを得ない者が出てしまう
出来る限りのものは救えたと思う
難民の中でも「殺してでも奪う」選択肢をしたもの中でも仕方ないと後悔しているものだけではない
殺して奪うことに快楽を得るようなものは切り捨てる必要があるのだ
酷い世の中だ、こんな時代だからどうしようもないものも居るがそういったものは強制労働を受け入れないといけない
意味のない口減らしだけはしないと決めている、ただ皆の食べる食い物が少し不味くなるだけだ
難民の選定は嫌なものでもやるしか無い、必要だからやるのだ
1人の人間ではなく、この領地の代表の一員となったからこそ集団の代表として全体を考えなければならなくなった
難民に混じってやけに身なりの良いやつが居ると思ったら他領や他国の貴族の子だって居る
名付けは必ずお父様が行わないといけないのでそのまま名前をつけてもらおうとしたのだろう、あわよくばと結婚を狙っているやつもいた
「あれが母上と認められますか?」
「わからん、いい噂もあまりないが・・・とにかく様子を見ようではないか?」
「私ははんたーい、どうせ愛の無い政略結婚でしょう?引きはがしちゃおうよ!パパのためになるって!」
「しかしそれはなぁ」
お父様は魔力の多さからアオキチキューのニホンで貴族にでも勧められたか強制されたといった可能性もある
貴族といった集団を取りまとめる代表は自国や領地、領民のために利となる行動を取る生き物だ
きっと向こうの貴族か親族あたりが・・・・なんて想像は容易につく
お父様は向こうの世界では一般市民って言っていた
この世界で生まれる『勇者』も召喚されて加護を授かれば地位は高くなる
だが元の地位はわからない
奴隷であったり、平民であったり、農民であったり、商人であったり
召喚されれば元の出身領地には家族がいる事が多い
故に結婚の相手を親や領主、王が勝手に決めることもある
それが貴族の、集団の代表の在り方だからだ
黒葉と春日井がもしも元々お父様と好き合っていたのだとしたとしたらこちらの世界の人間に干渉される前に邪魔されないように結婚までしていたはずだ
養子よりも結婚の効果は大きい
まだ結婚していないという・・・向こうの貴族は何を考えていたんだろうか?相性でも見極めようとしたのか?
春日井遥と黒葉奈美への評価はわかれている
こちらでもたまに話していた「ハルネーチャン」は春日井遥だ
だからこそ「春日井遥は信用できる」というものもいたが逆に婚期を逃したような年増女が婚約で止まっているということは無理やり離婚でもさせられた後にあてがわれたのではないかという意見もある
魔力の乏しいアオキチキューの人間であるにも関わらず婚姻して大神官という高位神官の地位を与えた婚約者、黒葉奈美の方がお父様に信用されているのではないか?という意見もある
僅か半年もせずに治癒魔法を使いこなすのは難しいはずだが大神官である
信頼がされているはずだ、レアナー様にも、お父様にも
見極めないといけない
領地の代表として、お父様の子供として
我らがお父様に見合った婚約者なのかどうかを
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