第248奥の更に奥の大事な大事な箱の中


あれ?


またこの夢?



「どうかしましたか?」


「いえ」


「駄菓子美味しいですね」


「うん・・・うん?」



でも夢ってわかっても目の前の人から朝ごはんに駄菓子をもらって美味しく食べてる



おかしい



僕はこの後、消防車にのって火事を鎮火して、家に帰って一日が終わる


・・・ような気がする




事実そうなった




・・・・・ん、あれ?




なんだっけ?


なにか、忘れた?気がする



「おかえりなさい」



眼の前の髪の色が派手なピンクのはるねーちゃんはだれだ?


いや、いつものはるねーちゃんだ



「どうかしましたか?」


「いや、疲れてるみたい、もう寝るよ」


「お風呂には入りな」


「う、うん」



もとからはるねーちゃんはこういう髪の色だったのかもしれない


そうしてまた一日が過ぎた












あぁ忌々しい!!


後少しだというのに!!


もうちょっとで勇者を私のものにできるのに!!!!!



「次は食料の問題です、難民がザウスキアから増えつつあります」


「受け入れましょう、ただし入国の調査は確実に」



あぁ、せっかく神器を使えたというのに


このまま勇者を私だけのものにできれば・・・



「食料はいかが致しましょう」


「ダイドンの茎入り軍用スープをお願い」


「ついにあれを出すのですか・・・」



何もわからずに私を心底愛してくれる勇者洋介


愛して愛されて、長い月日を重ね・・・


そしていつか気付くのです、それが偽りの愛だ、と


よだれが出る



「・・・」


「考えただけで唾液が溢れてしまいますな、胃がひっくり返りそうです」


「仕方ありませんね」



怒りに任せて近くのものを投げつけられ、鞭で打たれ、剣で私は切り裂かれ・・・・・また私が閉じ込める



でてきた時にはまた僕を愛してくれる



心底愛してくれて、いつかそれが作られたものだと気が付いて、破綻し、激昂して私を傷つける



「今日はここまでにしましょう」


「「「「「はっ!」」」」



余人に気付かれぬように私室に向かう


僕の部屋、入ってすぐに自分に【清浄化】を強くかける


汚れ1つ残さず消し飛ばす



「今日はもういいわ、貴女達も下がりなさい」


「しかし、あの騒ぎの後ですよ?」


「いいから」


「はい・・・」



侍女たちは納得していないものもいる


警護上の問題だと言うのも分かっているが侵入者が残っているのならここまで是非来てほしい


忌々しくて仕方ない、が、それでこそ得られるものもある


侵入者に痛めつけられてこそ快楽が得られるというのがなぜわからないのか?



だめだ、お楽しみの前です



邪念を捨てないと、楽しめない



侍女を下がらせて私達1人になる



「ひひひ」



いくつもの結界を解いて奥の間に入る



がらんとした部屋にあるのはたったの1つ、そして更に奥の間に続く扉



このためだけに大切なものも全部他所に移しました



勇者を監禁している神器の確認に使うものだ



洋介を閉じ込めた神器



ビクンッ!!!



あぁ!!!なんと良いものなのでしょうか!!!!!!



「ケヒャヒャ」



どれだけ怒るのか、どれだけ私たちを打ち据えてくださるのか!!!!!



想像してゾクゾクして体が跳ねてしまった



きっと素晴らしいでしょう




あぁ待ち遠しくて



本当に幸せだ



神器を見ると今日も何人か侵入してきたようですね


彼女もじっくり愛してあげないと



でも、勇者洋介を奪われるのは赦しません



それにしてもまだ抗っているとは本当に大したものです


捕まえた対象者は夢に落ちる


ゆめうつつのまま何度も同じような日常を都合のいいように改変し、その者の信念・理念、行動原理そのものをゆっくりと書き換えていく


魔王の代を変えぬように生かしたまま利用しようと作られた神器である


元は魔王捕獲用無力化再利用試作神器89463号というものでしたし勇者がまだ屈していないところを見るに魔王と勇者では精神力が違うのかも知れません


私から悪辣の神や夢の神、制作に携わった皆々様に感謝を申し上げたいところだ



さすがは勇者



名だたる神々に認められたおんりーわんです


えくせれんとでは?えれがんてだったかな?



私達で愛してあげよう、僕らで躾けなくちゃ



何者かの聖域への侵入は本当に驚きました


あそこは討たれた魔王といえども絶対に入れない厳重な警戒をしていたのですが・・・


僕らのが絶対にして愛の化身、母たる主神レアナー様のお陰でどうにか気が付けました


奥の間から急ぎで向かう途中、全力で結界を張ったというのに撃ち抜かれてしまいました


友と鳥の天空神の神器を使ったのでしょう、一体何人が侵入していたのかわかりませんがしてやられましたわ


お陰でお気に入りの杖も壊れてしまいましたし、右の肩から指先まで耐え難いほどに甘美な激痛が残っています



とてもとても辛くて痛い、心地の良い痛みです



何度も会議中にこの痛みに身体が反応してしまいそうになりました


それにしても一体どこの神の加護を受けたものが来られたのでしょうか?


聖域からでてきたということはどこかの神の加護があるのだろう


神々の集まる聖なる領域に許可もなく、資格もなく入ることは出来ない


でなければ神罰を受けてしまう


故に神々のいずれかの許可を得たはずだ



聖騎士達は今でも騒がしく動いているがどうかその侵入者が場内に残っているのなら突破して私の前にまで来てほしい


私も愛してあげるから愛してもらわないと、だよね?僕も楽しみだよ


どんな痛みでも受け入れるから私も痛めつけてあげる


レアナー様は侵入者を知っているようでしたが<知らないほうが楽しいでしょう?>と言われた



たしかに愉しい、狂おしいほどに



背筋がゾワゾワと心地よい



勇者洋介の仲間様方は魔王の側近を駆逐しに行っているはずですが、何らかの方法で聖域まで来られたのかも知れません


もしも彼らであれば神域を通れたとしても不思議ではないです



ただ勇者は渡しません、だけど渡しちゃうのも気持ちよさそうだけどね



・・・・・・・っ!!!??



ふぅ



痛む腕を無理矢理に動かして更に奥の間に入る




すぅー



はぁー




厳重に施した魔法を解く


ここには私達1人しかいない、好きに痴態を晒せる



あぁ待ちきれない



僕らは用意しておいた服に着替える



全身を覆い、毒や瘴気から身を守る魔道具



勇者考案のボウゴフクだ



これ1つしかないが僕らの身体に合わせて作った特別な1つ


ただ1人しかいない勇者と同じ、たった1つ


これによって瘴気で立ち入れない地の更に先まで行くことができる


全身を外界と隔てる道具


身体にはピタリと張り付く革の素材をつかい、顔は不格好だがボロい袋のような魔道具を被る


身体が少し締め付けられますがそれも良い


なんと素晴らしいものでしょうか




その魔道具の一部を改良したものだ




しっかりと腕の手袋をつけで最後に大切な魔法をゆっくりと解く




はやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく



準備して、目の前にあるからこそ心が弾み、待ち遠しい




そしてついに箱を開ける



その尊くさえあるものを取り出し、ゆっくりと高く持ち上げ・・・・



すぅーーーーーーー




「えっっっっれがんっとォォォォぉぉぉ!!!!?!?!?」




出したのはボロボロのシャツ


顔に押し当てて全力で息を吸う


改造したのは呼吸する部分、通常なら無呼吸でも大丈夫に出来る魔道具を使うのだけど今はその逆


・・・・・・・・・・・・・・・香りをより強く感じられる



「ひゃふふふはははははっはあああああ」




小さな、小さな、男の子の服


そう、勇者の肌着だ


自然と声が出てしまう




「はぁっはぁぁーーーーーー♪」




汗の香りが色濃く残り、ほんのり血の香りがする


足がガクガク震え、目の前が揺らぐ





「・・・・・・・・・・・・・・・うぉあいにー、アイシテルです」





頭にかぶった魔道具、四角い頭布に僅かに目と鼻と口だけをあけた僅かな穴から全力で呼吸する


肺の奥底、細胞の一片、足の爪の先にまでこの芳醇な香りを届けるんだ



「良いっ!!良いっ!!!!」


「すんすんすんすんっ!!!」


「くぁああぁぁあああああ」



堪能する



ビクンッ!!



身体が芳しい香りに反応する


脳がくらくらする、私たちは床に倒れてしまった


腕が動かずに強く腰を打った



だめ



香りを堪能していた勇者の服が宙を舞う



服が床に落ちるなんて許されない赦されてはならない



一気に身体に冷たいものが走る



だけど服は僕たちの顔の上に・・・



ぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!?????????










はぁ♪






これが・・至高・・・・・


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