第231話 ファミレスでの再会


律子に言われて学園祭の終盤に会うことになっていた


僕は内定先の研修もあったし学園祭を回れる時間は1時間もない


内定先次第ではその残り1時間も間に合わないかもしれない


だけど律子に会えるっていうだけでこんなにも胸が高まるし全く苦ではなかったし幸い研修が延長したりその後になにか誘われるようなことはなかった



大学ではいつものように、いや、いつも以上に視線が集まっている気がした


外部の人間で賑わっているし今では有名人となった遥とのこともある


仕方ないと受け止めないといけない



律子と一緒にバンドを見ようと言っていた広場に行くと光に包まれて綺麗だった


光の粒が砕けて散り、音楽もじゃんじゃんと流れ、音によってその光が弾けてるようにも見えて素晴らしかった


照明の新技術かな?ここには多くの会社も来るし



人混みの中に一瞬だけ律子がいたような気もした



「律・・・--------------」



声をかけようとしたのだけど律子はいなかった、見間違いかな?


人がすごくて、結局、律子は見つけられなかった


その日は連絡がつながらなくて心配した



日付がかわる頃にやっと連絡が入った



-今日はごめんなさい、スマホの電池切れちゃって-



それは仕方ないよね


次に会ったのは僕たちが出会ったファミレスだ


何もなしにでもここにはよく来る


律子の働く姿は見たかったし自炊よりもよっぽど良い


ファミレスの売上にちょっとでも貢献できるしね


今日もお腹が空いていた、大学の単位取得に卒論にと忙しい


何を食べようかな



「春樹」



よく聞いた声だ、もう二度と聞きたくはなかった声だ


たった一言よばれただけなのにまだ痛む体がひきつるようにして足に力が入らない



「ゆ、裕也?」


「すまなかった、お前の言い分も聞かず、お前に暴力を振るった」



アスファルトに正座し、裕也が頭を打ち付けて土下座した


え?なんで?


ここはファミレスの入り口だ、周りの視線が気になる



「やめろよ!土下座なんて!?」


「許してくれるとは思ってない!だけど謝らないと「とにかく頭を上げてくれ、中で話聞くからさ!?」


「・・・」


「腹減ってるしさ」


「----------・・・・・わかった」



顔を上げた裕也


額に石がついたまま思い詰めた顔をしていた


まだ僕の体は完全には治りきっていない、こいつの顔を見ると治った場所まで痛む気がする



「ここは俺がもつ、ポテトとドリンクバー、ハンバーグ定食でいいか」



首を縦に振る、いつも頼むメニューだ


裕也は一体何がしたいんだ?何があったんだ?


注文を済ませドリンクバーに裕也が行った


スマホで緊急用の110番のボタンを押せるようにしておく


幸いなことに律子の姿は見えない


仕事の時間まで把握してきているわけじゃないしシフトに入ってなくてもおかしくはない



コーラをいれた裕也が戻ってきた


裕也もドリンクバーを頼んだのに裕也の前には何もなし



「ま、まず食べ終わってからにしよう、か?」


「わかった」


「お前もなんか食えよ気まずいし」


「俺は謝りに来たんだ」


「・・・じゃあポテト食えよ、なんで一番サイズ大きいのにしたんだよ」


「その方が良いかなって」


「食べきれないし」


「・・・・・・」


「もったいないだろ?」


「・・・わかった」



こいつは何を考えているんだ?


自信ありげにいつでも胸を張っていた裕也の姿はそこにはない


今にも首を吊りそうな顔をしている、だから話を聞くなんて言ってしまった


たしかにこいつにひどい目に合わされた


だけどこいつよりも悪いのは真莉愛だろうとわかっていた



裕也は曲がったことが嫌いで女性やお年寄りに子供を大切にする本当に良いやつだと知っている



だからこうやって話を聞こうと思った


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