第210話 宣戦布告


がりっと音がした


平手だと思ったのが悪かった、護りの指輪は外しておいたのは私だが予想外だった



「淫乱糞女、死になさいよ!」


「ビッチ!!」


「しねしねしねしねしぃねぇえええええええええええ!!!!!!」




なにかを獣のように喚きながらマイクスタンドを振り回す真莉愛を冷たい目で見ながら後ろに下がる、少し風があたってヒリヒリするのと頬に血が流れてるのを感じる


時間はかかるかもしれないが確実に治るとわかっているしこの程度で私が怯むことはない


挑発を兼ねて当たるか当たらないかギリギリで避けているのだけど頭や顔面を狙ってくるあたり本気で殺しにかかってきているな


ひぇぇとムチを出しながらも介入できる位置まで下がる奈美と信徒たち


事前に「何かあっても動かないで」って打ち合わせしておいたしね・・まさかこんなにも目立つ場所でやってくるとは思ってもみなかったけど・・・


ヨーコは「なに遊んでるのですか?」と言いたそうだし洋介は杖を出してこちらを見ている



「止めろ止めろ」

「何やってんだ!?」

「真莉愛止めなさい!なんてことするんだ!!?」

「止めないでパパ!このアマぶっ殺してやる!!は な せ ぇ っ !!」



スタッフさん居合わせた人、それに初老の男性に取り押さえられていた


ロッククライミングを一緒にしていた男性は真莉愛のお父さんだったのか



一度だけ真莉愛の株主優待券でプールに遊びにいったことがある



その時に先輩の車で真莉愛を迎えに行った時にスーツでパリッとしたお父さんがいてみんなでお礼をしたんだった


その時は「楽しんでいってね」なんて笑っていたと思う


わずか一言の挨拶だったのでおぼえていなかった



「クソ!離せ!はぁなぁせぇえええ!!!」


「どうしたんだよ真莉愛!!?」




「マイク借りますね」


「え、あ、」



取り押さえられている真莉愛だがそれを尻目に司会の人からマイクを奪う



「あー、あー、坂上真莉愛さん、私は貴方を訴えます」


「遥ァァアアア!!!!!!」



スタッフさんに取り押さえられても襲いかかろうとしている真莉愛


ネイルは私を引っ掻いたときにかいくつか剥がれ落ち、血走った狂気の瞳が私を睨みつけてきている



「以前から弁護士に相談していましただあなたは以前から私が淫乱で不倫して単位を取得していたなどのありもしないデマを流していましたし、死の床にあった私をどん底に突き落としてくれましたよね、今でも夢に出ます」


「どういうことだ??!いや、それよりも止めてくれ!!!??おねがいだ!!!!」



真莉愛のお父さんが私に向かって来た


マリアの暴れたあとがわかるほどに髪はボサボサになっている


この人は悪くはないしこの人にとっては可愛い娘なんだろう


だけど私がこんなことをするのにも理由があってのことだ



「この人は取り押さえなくてもいいから」


「「Yes, ma'am!!」」



この人のことは打ち合わせになかった


向かってくるこの人を暴漢やスパイのように手荒に取り押さえられても事だったので護衛の2人を止めた


牢獄出身の護衛の中には銃器を装備したものもいる、カウンタースナイプ、狙撃対策とやらのためだ


近くのものは基本素手、どうしてもの場合には魔道具の使用を許可している


彼らは聖騎士候補生と訓練を重ねているのだが聖騎士部の中には過激派が多いし思考が染まってきている


それに私達へのポイント稼ぎに手荒にやりすぎる可能性は否めない



「うっ」


「すいません、この騒ぎでは普通に声もかけられそうにもありませんしね、私どもは彼女を主犯として訴えるべく弁護士団に相談しています、私の悪評を流しまくってますよね?お陰でネットで私のことを調べると淫乱扱いですよ、とても迷惑しています」



いきなり大柄な黒人と白人の2人が間に入ったことで真莉愛のお父さんは立ち止まった


それに外野が突然の騒ぎでギーギャーとうるさい、普通に声をかける距離というのも危ない・・という建前だ



「う、ウチの娘がそんな事するわけがないだろう!!?」


「なら、このまま彼女のスマホを調べましょうか、ついてきてください」



このお父さんのことは詳しくはないが真莉愛に甘々で大企業の偉い人と言うのは知っている


警戒しておく、この会場には彼の命令でなにかする部下だっているかもしれない


現に観客の中からこの人の周りに人がやってきた



「やめろクソ女ァ!!!!!」


「どうしたっていうんだよ真莉愛!?」



暴れる彼女だがミスコンで運動部は多くいたしスタッフのみならず屈強そうな男どもに囲まれている


日焼けした男性が親しげに静止しようとしているしもう彼氏ができたのか?



「離せ!くそくそクソォォ!!!!!!」


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