第201話 最愛との別れとアンケート


「時間です」



一人のスタッフに言われてアビゲイルを離す


俺は手放そうとしたのだがアビゲイルの手は俺のスーツを掴んだままだ



「・・・アビゲイル」


「・・・」


「グレースを頼む」


「愛してるわ」


「俺もだ、絶対にお前たちの元に戻る、約束だ」


「絶対だからね、グレースと日本で待ってるから」



アビゲイルに眠ったグレースを渡し、スタッフに示されたドアに進む


振り返りたかったが時間ですと言われた以上引き伸ばすなんて出来ない



部屋を開けると来たときと同じ、机と紙とペン、それとドアがある



「すぅー・・・はぁ・・・・・」



またあそこに戻るのか?


アビゲイルとグレースのいないあそこに?


だけど下手なことをして2人に危害が加えられるなんて俺には耐えられない


微動だにしない机が俺に現実を見せつけてきて泣きそうだ



座って紙を見ると朝とは別のアンケートだ



『このアンケートには真摯な気持ちで答えてください。』


『このアンケート内容は妻子との今後に影響します。』



ダンッ!!!



クソクソクソクソクソクソクソ!!?2人に何しやがる!!!!!



足を踏み鳴らしてしまった


落ち着け、なにかするとは書いていない


管理者の意図は何だ?この面会も意味があるのだろう、どうなる?どうなるんだ?


このアンケートを書けばどうなる・・・?!


深呼吸して用紙を見る



1.結婚式用の料理はどうであったか感想を文章で述べよ。 

2.食事スタッフの対応はどうであったか?文章で述べよ。

3.怪我をしない程度のアトラクションや施設だがどう思ったか?文章で述べよ。

4.遊園地エリアとのスタッフの対応はどうであったか?文章で述べよ。

5.トロッコの感想を文章で述べよ。

6.プールエリアの感想を文章で述べよ。



ここまでは良い


何のつもりだろうか、この城の中について聞きたいようだ


相変わらず質問の意図がわからん、問題自体は読めるようになったがそういうことではない・・・・


それよりも考えないといけないのはここからだ




7.あなたはレアナー教徒として生きることは可能ですか? YES/NO




まぁ、できる


レアナー教では宗教の掛け持ちは可能であるし毎月の寄付や奉仕活動も保険代金と考えれば安い


やり方はともかく道義的には善にして正義の組織だ、悪くはない


牢獄での生活に思うことがないではないがYESだ




8.あなたはレアナー教からすれば敵対者です、ここから出したとしてレアナー教が危険にさらされるのは本意ではありません。だから解放していない、それは理解していますか? YES/NO




・・・・・YESだ


俺は情報を集めるだけだったとは言え武装はしていたし情報によれば世界各国の諜報員がレアナー教への工作活動や破壊活動をしている


牢獄に入ってくる人数を考えれば暗殺者も俺のような情報を集めようとしたものも一緒に入っているのだろう


ここで俺たちを逃してしまえばレアナー教の情報を所属組織に持って帰り、更には再び攻撃しに来る可能性だってある


管理者からすれば牢獄のシステムを構築するぐらいなら殺すか石化したままにしたほうが楽なはずだ




9.あなたを解放したとして一般人への被害を我々は危険視しているのは理解していますか? YES/NO




YESだ、彼らからすれば我々は危険人物だ


犯罪者の扱いと変わらないが理解も出来る




10.あなたはレアナー教徒として元の生活を捨て、アビゲイルとグレースと生きていけますか? YES/NO




迷うことなくYES


2人と生きていくならここに送り込むことを決定した上司だってぶん殴れる




11.あなたはレアナー教として生きていく上で元敵対者として隷属の魔法を受け入れることが可能ですか? YES/NO




隷属の魔法、情報によればレアナービルの元マフィア、トクダは一度隷属を受けていたらしい


レアナービルのスタッフの話によると悪さをしようとしたら死ぬこともありえるそうだ


まだ死亡した人間を確認してはいないがいてもおかしくない


NOとかきたいところだがYESだ


そうでなければ安心して俺を使うことは出来ないだろう


同じ質問を受けたが2人と会う前と会った後ではやはり気持ちの持ちようが違う





12.あなたはレアナー教徒として元の組織と戦うことはできますか? YES/NO




YESだ、いやNO


正直家族のためならばYESと書きたいがYESならば「元の組織が相手でも利さえ有れば裏切る」というのは今後の忠誠心を期待できないととられかねないし、かと言ってNOとなんてかけない


何度も何度も書き直し、最終的にありのまま文章で書いた




他の用紙にもアンケートは続いていたので書いていく


妻と娘のことがかかっているのにどうすれば良いのかわからない質問は本当にストレスがかかる


本当にレアナー教の監視をイージーな仕事だと実行しようとした当時の俺を小銃の銃床でぶん殴ってやりたい



・・・・・ラムネ、娘が喜んでくれていたら良いなぁ


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る