第194話 出会い


マナー講座が終わり新しいスマートフォーン5台をヨーコとフィンリー、光太、莉子、彩香に渡した



「嬉しいですわ!」


「「ありがとう!!」」


「私にもいいんですか!?」



レアナー教の中でもスマートフォーンを持っていないのはこの5人だ


ヨーコは漢字の勉強中だけど神田姉弟のしっかりお姉ちゃん、信徒彩香に教われば覚えやすいだろう


フィンリーは「ほわー」とスマートフォーンを見ている


ヨーコは心配いらないけどイタリアから連れてきたフィンリー、それと神田姉弟の彩香、光太、莉子が持っているのは防犯上良いそうなので渡そうと思っていたのだ


連れてきた六太が責任感を持っているようだけどあったほうが良いって申し訳無さそうに言ってきて決めたのだ


なんでか六太は他のことには自信を持ってどかどか進んでいくのにこの3人のことになると縮こまる


他にもレアナー教で必要かなって何台もスマートフォーンを買って収納の中に入れている



贈り物の中にもスマートフォーンはあるのだがそういうものは安心して使えないそうだ


ペコペコと頭を下げる神田兄弟


それと照れてるのか「ありがと」と小さくつぶやいてそっぽを向いたフィンリー



教室を出て見ると他の信徒や生徒さんたちがいた


もしも講義を見たい人がいたら通すように言っていたのに



「握手してください!」

「うちの喫茶店どうですかー!タダ券ありまーす!!」

「レアナー教万歳!ばあちゃん治してくれてありがとう!」

「脱出ゲームどうですかー?!」

「サインくださーい!」

「ポテトどうですかー!?」

「お化け屋敷どうですかー?リアルな幽霊いますよー!!」

「うちの講義もどうですかー?」



出待ちだったようだ


はるねーちゃんと黒葉が散らしてくれて助かる


広い学校内を回って見ていく


幽霊がいますって言われたが作り物だった、ちょっと意味が分かんない


「お化け屋敷」って何のことか覚えていなかったけど思ってたのと違う


黒葉の模擬訓練には良いかもしれない



「聖下!綿あめです!」

「聖下!ソーセージです!」

「洋介様レアナー様!肉の串です!!」



座っているだけなんだけど信徒たちが色々持ってきてくれる


信徒たちにも一緒にいかないかと誘ったんだけど思ったよりも楽しんでるようだ


僕たちにご飯を渡すのが嬉しいのか色々買ってきてくれる信徒も多い、そんな彼らだが「全店制覇だ!」なんて色々買いに行こうとしている


「やめなさい」とはるねーちゃんが止めてる、食べきれないもんね



綿あめを物珍しそうにしているヨーコとレアナー様



「それはなんですの?」


「綿あめ、雲みたいでしょ」


「何に使うんですの?」


「甘くて美味しいお菓子だよ」



ヨーコに渡すとレアナー様は僕の肩からふわりと飛んでヨーコの頭に乗った


綿あめをツンツンと珍しそうにつついていたので一摘み食べて見せる


はるねーちゃんにも一摘み食べさせると黒葉もこちらを見ていたので食べさせた



黒葉は周りを気にしたあとに一口食べて真っ赤になってしまった・・・



とーさんやかーさん、はるねーちゃんには昔から当たり前だけどそうでもなかったか


黒葉のこういう反応を見ると僕もなんか恥ずかしくなってくる



「これ不思議ですわね!」


<甘くてふわふわしてるですぅ>



レアナー様もお肉に満足そうだ、ほんのり焦げたスパイスが脂と混じって美味しい


肉の端がカリッと香ばしい、大きな肉の塊が4つついているが1つ目を食べたらはるねーちゃんが「ん」というので渡す


はるねーちゃんは僕があまり食べないのを知っているからよくこうやって手伝ってくれる



「美味しいわね」


「炭で焼いてました!」


「良いね」



何本か買っていこう、とーさんたちも喜ぶだろう


それにしてもこのお祭りは盛り上がっている


屋台は食べ物だけではなくアクセサリーや流行りのお菓子にドーナツなんかも売っている


遠慮なく買って信徒達と笑って食べた


体育館に行くと面白そうな催し物があった



「ボルダリングです!どうですか?豪華賞品もありますよ!」


「へー!」



ボルダリング、ロッククライミングとも言い、幾つかの種類に分かれる競技だ


ボルダリングは命綱なしで行うものでロープクライミングやスピードクライミングといった競技の種類もあるらしく初級コース・中級コース・上級者コースで別れている


初級から上級までクリア出来たら高難易度コースにチャレンジできて成績が良ければ更に賞品もでるらしい


競技は壁にカラフルな岩が突き出ていて人はそれを手足で掴んで登っていく



僕たちがやるのは初心者用コースのロープクライミングだ


だいたい20人かな、集まって何グループかにわかれた


僕の神官服は膝上だし器具をつけるのに向いていないらしい、着替えてきた



「よろしくお願いします」


「こちらこそ!私達も空き時間に見に行きますね!では失礼します」


「まだまだ若いもんには負けませんよ」


「ははっ、勝ち負けよりも楽しんでいってください」


「ダーリン!私のために頑張ってぇ~!」


「よっしゃ!やってやるぜ!!!」



ざわざわと他の参加者さんも楽しそうにしている


大きな体育館いっぱいに設置されたカラフルな突起物の配置された壁、上からはロープも吊るされている


器具の重要性について教えてもらい、18人の参加者を4組に分けている


1グループでのローテーションというものを決めた


登る人、次の順番の人、ロープの補助をする人、休む人が1人か2人



ロープをもつ人は熟練の人が付いているが事故防止のために後ろでもう一人が一応ロープをもつ


体重差とか勢いもあるからしっかり持っておけばそれでいいらしい


休みながらも持っているといいらしい


僕のグループは日焼けしたお兄さんにカップルの男女、優しげな細身のおねーちゃん、それと僕の5人



「よろしくお願いします!」


「「よろしくー!」」


「「よろしくお願いします」」



元気な日焼けお兄さんに続いて元気なカップルの人達が声を上げた


それに次いで細身のおねーさんと僕の声はきれいにハモってしまってちょっと面白い



「ふふっ、すいません、あまりにもぴったりでしたので」


「あるよねー」



まずは指導の人の話では安全第一で行うこと、器具の意味や石の位置、全身の使い方などの安全に楽しむためのクライミング方法というものを聞いてからの実践となった


ここは初心者コースで簡単らしい


自分が登ること以外で注意するのは落下防止用のロープを指導員さんの後ろで離れて保持することでもしも落ちた時に急に引っ張られても指導員さんにぶつからないようにすること


見てる人はどういう身体の使い方をするか、どこに指をかけるかをよく想像しておくことも楽しみ方の一つらしい


なるほど、突き出た石の大きさや角度、腕の長さ指をかける力の入れ方などなど見る部分は多い


映画とかでよくあるアクロバティックに飛んだりは駄目らしい


まずは日焼けお兄さんが行った



一箇所一箇所確かめるようにしつつもスムーズに進んでいった


ゴールの石まで行けばタッチして終わりで後はゆっくりロープでおろしてくれる


未体験でもうまくゴールできれば中級者コースや上級者コースを体験できるし、イベントで勝てれば賞金と商品も出る


グイグイ進んでいったお兄さんだが石はもう残り2つか3つ移動すればゴールだ


自分のことではないが力が入ってしまう



「がんばれー!」



ちらりとこちらを見たお兄さんがニヤリと笑って返事をしてくれた



「おう!」



ラストスパートか、グインと最後の石まで後少しで指が届くかというところでお兄さんは落ちた



「惜しい!!」


「大丈夫ですから落ち着いてねー」


「「おしーい」」



ぶらーんと吊るされたお兄さんだが少しずつロープで降りてくる



「つぅっ!?」



本当にゆっくりと足をついたはずのお兄さんだがどこか痛めたのかな?


楽しげな顔をしていたのに一転して顔をしかめた



「大丈夫ですか?!」


「いえ、ちょっと古傷が」



足はなにかの怪我をしていたのかな?


指導員さんに辞めるかどうか聞かれていたが昔からの怪我らしく続けたいと笑って言っている



「今のは惜しかったですね、最後のは滑り止め不足ですね」


「なるほど!」



次にカップルのおにーさんたちが前に出た


自信満々な男性だが金髪ですごく細い、軽いほうが簡単に進めるのかもしれない



「ダーリンがんばれー!」


「へへっ俺が一番だ!」



僕と日焼けおにーさんと優しそうなおねーさんが残る


僕だけじゃ体重が軽いからとおねーさんも一緒にロープを持ってくれている


だけど、それじゃ不安に見えたのか先程まで登っていたおにーさんも持ってくれた


そもそもこのロープは緊急用であり何千回何万回に一回も事故を起こすことはないらしい


必要もないかもしれないのにみんなで安全に気を使うのっていいな



「よーし俺のかっこいいとこみてくれよー!」


「いつでもかっこいいよー!」



いちゃついていたカップルはとても楽しそう



「お兄さんもかっこよかったですよ」


「いやー、ごめんな?応援してくれたのに」


「仕方ないですよ、ほんとにあと一歩でしたし・・・あれ?一手ですかね」



なにか面白くて3人で笑ってしまった

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