第103話 もふもふタイム


「ちょ、くすぐった、はは、クビ、ダ、めふふははは」



洋介は猫の山の真ん中にいる


舐め回されたりゴツゴツと頭突きを食らったり振り回されたりしているのがチラチラと見える


大山猫?いや虎だな、ライオンやピューマのような大型のネコ科の動物に見える


隊長っぽいトゥガールさんが言うにはミャーゴルという生き物らしい


由来を聞くと子猫のときはミャーと鳴くのに大きくなるとゴルゴルいうらしい


こっちの世界でも猫の鳴き声はそのままなのか



「た、助けなくていいんですか!?」


「ん、洋介聖下か?彼には加護がある」



うん、危ないと思うほどにじゃれつかれまくってるが洋介はけらけら笑ってる


あ、洋介の奪い合いが始まってあのぶ厚めの服を噛まれてぴょんぴょん獣舎を走り回ってる、楽しそうだからいいのか?


熊とかイノシシみたいな大きさのミャーゴル、それに比べていつもよりも洋介が小さく見える



「でも、貴女方にも加護はあるようですね、ほら、護衛の方は離れてますし、この子たちもわかるようで、おーよしよしよし」



後ろを見てみるとケーリーリュは、はるか後方の建物の影でこちらを見ていた


それよりも私達の周りにもミャーゴルは近づいてきていた


大きな牙に大きな爪、ライオンよりもよっぽど大きい


正直ちょっと怖い



「この子たちは加護を持っていてもあそこまでじゃれつくことは稀です、よほど加護が強いのでしょうね、それに洋介聖下は今までに何度かここにあのようにじゃれつきにきましたから慣れもあるのでしょう」



空中で洋介の奪い合いを行ってるミャーゴル達、服に穴空いたり、いや体に穴空いたりしないのかな?




「初めて見る方であればその日は様子見するぐらいがいいでしょう、触っても大丈夫ですがゆっくりお願いします」



ゴルルルル

グゥゥゥ

ゴゴゴ



ゴロゴロ喉を鳴らしながらよってくる、猫だな、おっきい猫だ


こういうときは少し下からゆっくり拳を近づけるといいと何処かで見た気がする


拳を差し出すとすぐに匂いを嗅がれる


クンクン匂いを嗅がれて更に前に出てきたミャーゴルのおでこと差し出した拳がごっつんと当たった


甘えてる?のかな


私の拳をミャーゴルの毛がサラッとくすぐって気持ちいい



「よろしくね」



その子はすぐにいなくなり代わる代わる他のミャーゴル達も来た


奈美は私よりも少し後ろから恍惚の表情でこちらを見ている


後ろでスマホを構えて顔は溶けている


少し声は小さめで呼んでみる



「奈美ー、おいでー」


「私、猫に嫌われる方だし怖がらせても悪いし」



たまに猫に向かって写真を撮りに行ってすぐ逃げられてるのは見たことがある


スマホの待受も子猫でストラップも猫なので結構な猫好きなのだろう


猫は大好きで飼いたいらしいが彼女の両親が猫アレルギー、猫はどうしても飼えなかったと嘆いていた


そして悲しいことに生粋の猫好きではあるが本人は猫に嫌われる体質らしく、たまに逃げられては凹んでいた



私は犬も猫もどっちも好きだがどちらかというと犬派かも知れない


猫も可愛いが大きくて素直で賢い犬の方が好きかも?一緒に走り回れるし遊べるしね



いつの間にかミャーゴルの背に乗って黒葉に近づいた洋介が何かを手渡している


ここに来る途中で買っていた果実と、なにかの大きな袋を渡していた



「洋介聖下!ありがとうございます、ですがそちらは?」


「猫用のお菓子、子猫用のミルクとかもあるよ」


「仔ミャーゴル用のミルク?ほほう」



いって見るとよくCMで見る猫科の生き物が超喜ぶと見たことのあるというお菓子や粉ミルクにミルクのパックだ


その場で洋介がミルクを作って


ひときわ大きな親ミャーゴルによって仔ミャーゴルが一頭連れられてきてミルクを飲み始めた



ミャー!ミャー!!

ルルル



「大丈夫なんですか?初めての食べ物を子猫に」


「こいつらは結構なんでも食べる悪食なんです、もしも具合が悪くなっても聖下が原因なら文句は言えませんし、聖下かレアナー教に診てもらうんで大丈夫です」



私の心配を他所に親らしきミャーゴル達が仔ミャーゴルたちを連れて洋介と奈美のところに連れてきた


奈美はモッフモフに囲まれて幸せそうだ


ミルクの大皿に顔を突っ込んで飲んでる親ミャーゴルと競うように飲んでる仔ミャーゴル


顔の毛がミルクまみれだ



奈美は片手でスマホ、片手で撫でている



「それにこいつらは小さい頃によく食べたほうが立派な体になるんです」



ミルクに顔を突っ込んでる大きな親ミャーゴルを洋介が引き離してペーストのお菓子や途中買っていた果実を食べさせている



「ペディの実も高いもんじゃないですがなかなか買えないもんで、ありがたいです」



ルルルルルっ!ルルルルルっ!!



美味しいらしく果実にがっついてる


洋介はペディの果実を親ミャーゴル達に投げている、私も投げてみる


ぴょいんと飛んで空中でひとくちで食べてる!!可愛すぎる!!!


投げ終わって残った日本の猫用お菓子をペロペロとがっついてる



猫って可愛いな、かなりおっきいけど



頭を撫でても目を細めてくれるし顎を指でカリカリかいてあげるとルルルと鳴いて可愛い


奈美はミルクを食べ終わった仔ミャーゴルに群がられて猫じゃらし使ってるし、洋介は撫でていたり犬に振り回されるぬいぐるみのように玩具にされて楽しそうだ



私たちは隊長さんに申し訳無さそうに「訓練の時間が」と言われるまでものすごく堪能した

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