第25話 Aの忘れられない一日
たしかに神官っぽい服装、キリスト教の神父とかが着ていそうな服の豪華版、それにファンタジーアニメに出てきそうな大きな杖
を、もった少年
しかも小学校の真ん中ぐらいに見える
いま平日だし、まだ学校の時間じゃないかな?
「じゃー行きましょうか」
「あ、はい」
あ、はい、じゃない、ツッコミとか質問するべきことがあるだろう
二度と来たくなかったこのビルだが何故かこの少年の近くは安心する
入ってみると霊感のない私でも気配を感じた
薄暗い、よくあるただの雑居ビルだ
ただ、駅に近い一等地なのに一棟まるごと誰も入らないいわくつきのビルだ
使ってなかっただけ少し埃っぽい、部屋を入るとビジネス用の机やロッカーはそのままだ
少年の近くにいないと耳の後ろがピリピリとひりつく
怖い、なにかの気配を感じる、どことはわかんないけどとにかく何かいる
「いますねー」
「そうですか?」
どこかに向かって声を出す少年にうまく返せない
無人の4階建てビルを案内して回る
いつでも内見できるように電気も水も通ってる
できるだけネガティブなことを言わずに契約してもらいたい、と言うかビルをどうするか社長に詳しく聞いてないし契約とかどうでもいいからこのまま何も起こらないうちに帰りたい
私は契約についてのスタッフであって普段の内見は別に担当者がいるのに・・
ガチャンっ!!
「ひぃっ!?」
キョロキョロと珍しそうに見て回ってる少年についていってると眼の前でドアが閉まった
すぐにドアノブを回して開ける
「どうかしました?」
「いえ、なんでもないです」
・・・驚きすぎだな
まだ何も起きてないじゃないか、このドアも自然にしまっただけだ
「トイレも使えますか?」
「どうぞ、各階温水洗浄機付きのトイレとなってます」
「はーい」
一応自分もしておこう、いや離れるのが怖いわけじゃない
少年が先に入り、わたしも入って男子トイレのドアを閉めた
すぐに用は終わり手を洗って、ふと横を見ると少女がいた
<・・・・・>
圧倒的な威圧感、あまりの恐怖に動けない
トイレには私と少年の2人しかいなかったはずだ、奥にいるのはもうひとりの少年神官だけのはず
ドアが開いた音はしなかった
「あっ・・がっ・・・」
うまく声が出せない
女の子は白いカッターシャツに赤いスカートで、赤い靴も履いてちゃんと足もある
生きている人間であってくれ、足もあるじゃないか
だけどそんな願いも虚しく足音もなくすぅっと私の前にまで来て私の服をつかんだ
<・・・・>
ビルの周りの喧騒なんてもう聞こえない、聞こえるのはやけに大きく聞こえる心臓の音だけだ
私の顔を下から覗き込んできた少女のポッカリと空いた真っ黒な眼窩の奥を見て、私は意識を失った
気絶していたのは5秒だろうか10秒だろうか?
気がつくと視界全部が輝いて見えた
「おはようございます、もう大丈夫ですよ?」
あたりを見ると先程まで内見していた部屋だ
先程までのどんよりとした閉塞感や嫌な気持ち悪さ、何かがいるという気配などなく、あるのは気持ちの良い空気だけ
先程までの重い雰囲気が嘘のようだ
「ところで信徒募集中なんですけどうちの信徒になりませんか?」
「嫌です」
やけにキラキラした神官様が本物で、よく分からないが助かったことだけわかった
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