第144話 南極大戦 ⑤確執と嫉妬

レビア「俺は父に認めて欲しかったのかもしれん…。そして、父の愛情を受けて育ったお前を嫉妬していたのかもしれんな…」



ウルの問いかけにゆっくり答えていくレビア。

1000年前、クーデターを起こす事を持ちかけて来た謎のローブの人物がいた。

そして、その者の巧みな話術は穏健派の父たちを否定するのには充分な理由となっていた。



レビア「私はいつの間にか人間達や他種族達を見下し、この地球を統べるのは我々こそがふさわしいと思うようになっていた。ついこの前、信条錬に敗れるまではな…」

ウル「錬に負けてそれに気がついた…と?」

レビア「他の連中はわからないが、俺は傷を癒やされ再び皆の元へ戻った時皆の異様さがわかった。そこで初めて後悔したよ自分の浅はかさに…」

ウル「ふざけるな!今更わかった所で!」

レビア「…わかっている。今更遅いと言うことも…お前を殺そうとした事も、すまなかった。せめて、お前の手に掛かって死ねるなら俺も本望だ」




ウルは今までの憎しみを込め魔法を発動させようとした。




黒鋼:待て…。ウル、そこまでだ。

ウル「だが、父上!」

レビア「なっ!」




レビアは驚愕した表情で声が聞こえた黒鋼を見る。



レビア「まさか!生きているのか!?父が!」

黒鋼:生きているかと言われると微妙な所だがこうして意識はある。

ウル「俺も最初は驚いた…。だが、今の話を聞いて兄上達をそそのかした人物が関わっているのではないかと思った」

黒鋼:今はぼんやりだが思い出してきた。確かに俺を魔核へと変えたのはローブの人物だ。

レビア「そうか…初めからこの世界は奴によって動かされようとしていたのか…」




地に這いつくばり悔しそうに氷を叩く。



ウル「まさか…」

黒鋼:リコン…か…




ウルはゾッとしていた。奴はそんな前から活動していたのかと。




レビア「我々と一緒に大陸に封印されていたがその封印を解く為に操り人形にされていた同胞がいたと後ほどわかった。だが、封印されていた時我らは動くことさえできなかった事を考えても、そんな中でも奴は密かにそれを解除する策を講じていた」

ウル「奴は時間を止める魔法の中でも活動できた?」

レビア「完璧に動く事は出来ていなかったのかもしれないが、それでも指示を出せていたのかもしれない…」

黒鋼:なんて奴だ…。




瑠衣の言っていたリコンの未知数の力、レビアの言葉をうけ改めて身震いする。




ウル「だが、俺たちは例え相手がどんな奴であろうと立ち止まる事はない!」

レビア「フッ…強くなったのだな…お前は…。逃げていた時よりずっと…」

ウル「今は頼れる友と仲間たちがいるからな」

レビア「そうか…。だったら早く俺を殺し、仲間達の所へ急ぐがいい!この先に待つのは我ら魔族の実力者の2人だ!…どこに行く!」




踵を返して黒鋼に戻ろうとするウルをレビアは止める。



レビア「わ、私はどうするつもりだ?」

ウル「このまま捨て置いても問題ないと思ったからだ…。この戦いが終わって生きていたら拾いに来てやる…」

レビア「……そうか……。敵であった私が言うのもアレだが…死ぬなよ…」

ウル「全くだ!」




そう言って黒鋼に乗り込んだウルの表情は少し晴れやかになっていた。



ウル「さて、話し込んで遅れた分を取り戻すぞ!」

黒鋼:あぁ!そうだな!



先に合流していた梁の麒麟と共に残りの敵を駆逐していった。







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