NANASE編
Another5 歌姫の憂鬱
NANASE「なんだろう…今日は一段と不安になる…。思い出しちゃうな…あの時の事を…」
NANASE…七海 瀬那はライブ前になると、とてつもない不安に駆られるのだ。
そんな中、今回のライブ前は特に胸に不安が浮かび、かつての自分を思い出していた。
幼い頃より歌が好きだった私。
普通の魔法の才能はなかったが、歌だけは違った。聞く人をどんどん魅了させる…いつからか近所では有名だった。
だが、両親は魔法の才能がある弟をよく可愛がっていた。この世界は魔法が第一主義みたいなもので私みたいな才能がないのは淘汰される運命にある。
両親は最低限の関りはあったが、それだけ。いつからか私は近所の森の中でひっそりと歌を歌うようになった。
誰にも邪魔されず、誰からも必要とされず…ただ頭を空っぽにして気持ちよく自分の中に浮かぶ歌を歌っていた。
森に入って歌うようになって1年が経ったある日の事。その日も森に向かい歌を歌おうかと思っていたが、いつもの場所に一匹の白い小さな馬がいた。
魔物だと思ったが、こちらをじっと見つめるだけでこちらへ向かってくることはなかった。その日は歌うことを諦め家に帰る。
次の日も行くが、またあの白い馬の魔物が居たのだった。
来る日も来る日も…諦めて他の場所を探そうと思っていた矢先であった。
その日は魔物はおらず、久しぶりにいつもの場所で歌うことができたのだ。だが、帰ろうとした矢先、自分の背後に気配があるのを感じた。
私が振り向くとそこにはあの白い馬の魔物がいたのだ。
瀬那「ヒッ…」
声を上げようとするが、馬の魔物はゆっくりと腰をその場に落とすとこちらをじっと見つめてきていた。
瀬那「もしかして…歌聞きたいの?」
白馬「ヒヒン!」
私の問いに答えるように鳴く魔物におかしくなりクスっと笑ってしまった。
そして、私は期待に応えるかのように歌を歌っていく。
いつからか私はその白馬の魔物をハクと名付けていた。
ハクも私が来るのを心待ちにしていたように、また私もハクに一杯自分の気持ちを聞いてもらうように楽しみとなっていた。
そんな、幸せだった日常も突如として崩れ去ってしまう。
とある日、いつものようにハクに歌を聞かせていた時の事。突如2人の大人が私たちの前に現れる。
その人たちは武器を持っており、ハクに向かって武器を構えていた。
「へへっ!やっぱりいたぜ」
「目撃情報があった時は疑ったが…まさかいるとはな…」
瀬那「おじさん達、ハクに何をするの!?」
ハクの前に庇うように立つ。
その大人たちの話は当時の私には理解できなかったが、ハクを悪いことに利用するのだということは雰囲気でわかった。
痺れを切らした彼らは私を強引に押しのけ倒したのだ。
それが引き金となったのか、ハクは大人たちに向け攻撃を放ちどちらも倒してしまった。
私は怖くなり、近所の大人達を呼びに行き、事が知れ必要時以外しばらくは外出が禁止された。
ようやく森に行けるようになった頃にはハクももういなくなっていたのだろう、歌っていようが来なくなってしまった。
そして、私も中学に入る前になり以前の騒動から親から煙たがられ、母親の実家へ預けられることになった。
夏休みの最後の週、ふらっと海辺に行き歌っていた時だった。
瀬那「~~~~~♪」
??「いい歌だな」
瀬那「あっ…」
??「ごめん…邪魔しちゃった?」
瀬那「・・・・」
??「ん?」
突如、話しかけてきた年上の男の子。
ちょっと気まずそうにしていた時だった。魔物の襲来…それが起こってしまったのだ。私は他の人に連れられその場を後にしたのだが、あの男の子が先ほど自分たちがいた場所で戦い始めているのを確認できた。
瀬那「あのっ!あの人、助けなきゃ!」
「大丈夫です。錬さんなら問題ありませんわ。とにかく私たちはここから非難を…」
遠目にみた彼の後ろ姿に自分は役に立てない歯がゆさと悔しさを覚えた瞬間でもあった。
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