Another4 1000年の果てに
魔族との戦いは熾烈を極めた。
魔法を知らなかった人類は劣勢になりながらもなんとか守りを固めていた。
そんな中、一度各故郷に帰り錬金術を各国民に教えていた11人は危機的状況の中再び終結した。
そして、この状況を打破するためウルドラと合流しウルドラを含めた12人は魔族の本拠地に乗り込み当時魔族を治めていた魔王に接触する事に成功する。
ただ、当時の魔王は人類との争いなど望んでおらず反対していたらしい。なぜかはその後に聞かされた話で全員が理解したという。
今から数十年前、魔王は魔族の住むアルス大陸に座礁した難破船で唯一生き残っていた人間の女性がおり。魔王のところまで連れてこられたという。
当時は人間がこの大陸に生きて来ることが珍しく奴隷のような扱いをしたという。だが献身的なその女性の姿に魔王はいつしか惹かれ彼女をそばに置き自分の妻に迎えたという。
だが、魔族は気高く他の種族と仲良く等できないという思想のものが多く、魔王の判断は間違いだと非難する魔物も多かったという。
そんな折、魔王と女性の間に子供ができ男児が生まれたという。生まれてから数年は平穏に過ごしていたのだが、とうとう痺れを切らした魔族の強硬派が女性を亡き者にしたのだった。
それから今まで自分の意見に賛同する数少ない穏健派と自分の子供を守ることを優先してきたせいか、今は魔族の王ではあるが飾りにすぎず、各国に戦争を繰り出した今となっては自分に止める術がなく自分もいつ命を狙われるかわからない状態であったという。
今回はたまたま穏健派がウルドラ達を発見し、自分の元まで来られるよう手配したのだという。
なぜウルドラ達と接触したのかというと、これから数週間後に大規模な大隊を組み各国を攻め落とす計画があるということを知り、なんとしても止めたいが自分にできることは少なく魔力を込めた玉を使い大規模な魔法を使用し魔族を止めて欲しいとのことだった。
同じ魔族を討つことのできない自分を恨んでくれて構わないと魔王はつぶやいたという。もう一つ頼みがあり、このままここにいては命を狙われる危険があると自分の息子を島の外に逃がして欲しいとのことだった。
全員は了承したが、今ここに息子がいないため息子を連れ安全に脱出させるために2日欲しいとのことだった。
魔王「私は残らなければ怪しまれてしまう。だから穏健派のものに息子を託しお主達に合流させる。だが、息子を連れた穏健派が2日後に合流できなかったり、魔族が作戦を強行した場合…その玉の魔力を使って遠慮なく使用してくれ」
ウルドラ「いいのか?」
魔王「あぁ、お主達には世話をかけるが頼む…。それとこれを…」
ウルドラ「これは?」
魔王「私が生前妻に送った魔鉱石で作ったペンダントの片割れだ。息子にも片方をも持たせておく…まあ、証明書代わりになるだろうからな」
それから2日…指定された場所で見つからないようにしていた一行であったが来るはずの穏健派が中々こない事を心配していた。
清明「まさか…我らヤツにたばかられたか?」
エルク「いや…彼の言葉に嘘、偽りのないように思えた…」
ウルドラ「渡された魔力の玉の4つには魔王の魔力で満たされている。自分の命を削り出すレベルでな…あやつの覚悟は本物だろう。とりあえず偵察に行った2人を待とう」
それから数時間後、偵察に出ていた2人が戻ってくるとその報告に衝撃が走った。
偵察に出た2人が少し行った先に戦闘の後らしき場所があり、そこには魔族が多くの魔族が死に絶えていたらしい。唯一息がある魔族が居たため話を聞くと彼は穏健派であるという。
穏健派がコソコソ何かをしていることが見つかり強硬派と戦闘になり、数で負けていた穏健派はあっと言う間に強硬派にやられてしまい、守っていた魔王の息子ともはぐれてしまったとのこと。それだけでなく、大規模な作戦もすぐに始めるとの報告があったらしい。
唯一息があった穏健派の魔族より絶え絶え聞かされた事実に驚いていた2人であったが更に衝撃な事実を突き付けられた。
魔王が昨日暗殺されたとのことだ。伝えられることを伝えた魔族は息を引き取り2人は取り急ぎ皆に報告に来たという事だった。
ウルドラはこのまま魔王の息子を探す暇もないと判断を下し、皆を連れ海上へと出るとルニア、清明らと共に魔王より貰った魔力の詰まった玉を使用し魔法を発動した。当初の予定では魔族をせん滅する魔法を使用することになっていたが、魔王の息子が生きている可能性やいくら自分たちといえどこの魔力の玉を使用し魔法を発動しても魔族は生き残る可能性が高いことを考え、大陸ごと封印力がある錬金術を使用し封じ込めたのだった。
錬「へ~。前に聞いた話にそんな続きがあったのか…。でも、今の歴史の授業じゃ昔の戦いで魔族は滅びたとか言われてるけど…」
ウルドラ「おそらくだが…他の大陸に進行していた魔族がその史実を捻じ曲げ伝えたのではないかと考えている」
錬「ウルドラ達がほとんど倒して回ってたんだったよな?」
ウルドラ「そうだな…。だが討ち漏らしていた者たちも中にはいただろう…恐らくその中に我々が使用した錬金術の効力が切れる事がわかる切れ者も存在したのだろう。魔族が滅んだと思い込ませ油断させるために史実を捻じ曲げ、復活した際に人類に大きな打撃を与える為のな…」
錬「だけど、よくそんな長い時間生きてられたよな…1000年前なんだろ?」
ウルドラ「こうなるかもしれないとわかっていたからな。魔族の騒動が収まった後、各国にしっかりした魔法技術を教え、我ら12人は余生を錬金術を用いて作ったダンジョンで終えることにしたのだ。だから力あるものが最奥にたどり着きその試練を乗り越えた者だけに我らの力、我らの知る事を託すことにしたのだ。ダンジョン内は外部と比較しても時がゆっくり過ぎるがそれでも人の身には長い時を超えることはできない…おそらくは12あるダンジョン内で生きているのは私だけであろう…」
錬(そういえば、この前攻略したダンジョンでキングが今話にでていた清明って言ってたような気がするな…)
錬はそんな話をした後に寂しそうな顔をしていたウルドラを気にかけながらその時はダンジョンから帰宅した。
錬がダンジョンから出たのち、元の姿に戻るとウルドラはぽつりと呟く。
ウルドラ「いよいよ、時が来たかもしれん…。すまん、エルク…今の我では奴らを止めることができぬかもしれん…。だが、希望はできた…錬であればこの先の未来を…」
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