第56話 処罰
俺が食堂に入ってきた時、此奴等以外にも複数の見知らぬ男達が幾つかのテーブルで寛いでいた。
そして此奴等が俺の周囲を囲む前に、買い取りカウンターの方にも見知らぬ男達が集まっていたんだよ。
〈糞! 死ね!〉
左右から腹にナイフが突き立てられたが、残念魔法防御の服でした。
ナイフを突き立ててきた2人にフラッシュを浴びせ、腹に鉄棒をめり込ませると正面で俺を睨んでいる奴ににっこり笑ってやる。
「よーし誰も動くな! 我々はザクセン伯爵様配下の者だ、お前達には聞きたい事が有るので警備隊詰め所まで来て貰おう」
「何事ですかな。私達は彼と話し合いに来ただけですよ」
「えー、テーブルの下でナイフを突きつけ、さっきは突き刺してきたよ」
「なんの冗談ですかな。私の連れは左右に座る二人だけですよ、他の人は貴方のお仲間なんでしょう」
「そうなの、では仲間に何をしようとお前に関係ないよな」
俺の周囲を取り囲む奴等にもフラッシュを浴びせ、鉄棒でぶん殴って転がす。
正面の男が口をパクパクしているが、金魚や鯉じゃ有るまいし餌はやらないぞ。
「お前はさっき香辛料って言ったよな、誰から其れを聞いて俺の所に来たのか、それを聞きたいって人がいるんだよ」
伯爵様配下の者達に引きずられて行く男が、最後まで俺を睨んでいる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
家に帰るとヘルド達の所が騒がしい、俺が階段を上がって行くと前を塞がれた。
「兄さん此処に何の用だね」
「えっ、其処のヘルドさんに用が在って来たんだけど」
「今忙しいから帰れ」
「そう、じゃー帰るから其処をどいてよ」
「お前舐めてんのか!」
隙だらけの男の足を掴んで引き倒して股間を殴りつけ、後ろで睨んでいる男の喉に突きをいれて排除する。
ヘルド達の部屋を覗くと5人の男とヘルド達が向かい合い、一触即発の状態だ。
こんな時は挨拶不要なので黙って攻撃開始、無防備な後ろから鉄棒の一撃で倒れ唸っている。
「此奴等どうしたの」
「エディさん・・・いきなり押し掛けてきて、俺達がエディさんとよく行動を共にしているから、知っていることを話せと喚きだしたんです」
呻いている全員を縛って下の空き部屋に放り込み、詳しく話を聞くことにした。
「お前こんな事して唯では済まさないぞ」
「あっお気遣いなく。ザクセン伯爵様から許可を貰って、俺を探している奴を捕らえているんだ。何の用で俺を探しているんだ、誰に頼まれたんだ」
「此れを解け! 俺達を誰だと思っている」
「唯の馬鹿だろう。死にたいなら何も言わなくてもいいぞ」
全員に猿轡をするが、抵抗する奴には遠慮なく鉄棒のお仕置き付きだ。
一番意気がっていた奴の股間に拳大の火球を埋め込む。
〈うおぉぉぉ熱い、止めてくれー〉
「俺の質問に答えろ。何の用で俺を探していたんだ、誰に頼まれた」
白目を剥いて失神してしまったので隣の男に聞くことにする。
「どう、お前も股間の黒焼きがお望みなら喋らなくても良いけど。どうする?」
非常に協力的な男でペラペラ喋ってくれたが、婆さんは俺が香辛料を森の奥で採取したと言ったのを信じず、裏家業の男を使って採取場所を聞き出せと依頼した。
ところが婆さんの守銭奴振りを知っている男達は、話を聞き出すだけで金貨5枚を支払うと言った。
婆さんが金づるを見付けたと知り、横取りする気になった様だ。
薬師ギルドは渋ちんで有名なのに、と言っても婆さんがギルマスで他に雑用係しかいない弱小ギルドだから、金のなる木を逃がしたくないのだろう。
冒険者ギルドに現れた奴らと此奴等、裏家業の連中に話が広がっていると思った方がよさそうだ。
《どうしたものかな》
《街の警備隊に引き渡せ》
《それじゃ、直ぐに釈放されると思うぞ》
《お前に手出しをすれば捕まる、と裏家業の連中に教える為だよ。伯爵に連絡して、冒険者ギルドで捕まえた奴らも此奴等も市内を引き回して連行してもらえ。後で釈放されたら此奴等のアジトに乗り込み、始末すればよいだけさ。証拠が無ければ良いんだろう》
《成る程ね、その手でいくか》
ヘルド達の所に暫く草原に行かない様に言い伯爵邸に出向く。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
昼間ギルマスと訪れた者だが、その件でお話ししたい事が在るので執事に取り次いでくれと頼む。
冒険者一人が来てそんな事を言っても通用しないのは判っている。
用が有るなら通用門に回れと怒鳴られたので、明日改めてギルマスと伺いますと伝えて引き下がる。
俺があっさり引き下がったものだから衛兵が慌てた。
俺の言葉通りなら昼に伯爵様と面会している相手の訪問を追い返し、翌日出直して来た事を知られたら自分が叱責されると思ったのだろう。
横柄に、取り敢えず執事殿に聞いてやるから待てと言われ待つ事に、直ぐに引き返してきて伯爵様がお待ちですと丁寧に招き入れられた。
ザクセン伯爵との話し合いはさくさく進み、翌朝捕まえた奴等を引き取りに来ることになった。
奴等の用件は判っているが、取り調べの後冒険者ギルドで捕らえた奴と同様に処罰する事になった。
・・・・・・
翌日20名程の警備隊の者が現れ、捕らえている7人を街の人々がよく見える様に警備隊本部まで徒歩で連行していった。
冒険者ギルドで捕らえた11人も、同様に晒し者にして連行したので一気に街の噂になった。
奴等を警備隊で取り調べている間、ヘルド達が集めた香辛料の実の選別をする。
大中小に分け虫食い等を弾き、大中小の三種と虫食いや歪な規格外品を夫々の壺に入れる。
梅壺くらいの壺三つに規格外品の壺一つ、大の壺が5割,中の壺が8割,小の壺が7割程度入っている。
規格外品が全体の3割強だが農作物でないのでこんな物だろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
数日後警備隊からの連絡を受け、翌日広場にて公開処罰を行うのでお越し願いたいと告げられた。
ヘルド達三人と公開処罰とやらを見学に行く、処刑ではないので殺す事はないらしい。
俺に絡んだ程度で死刑になるはずもないが、どんな処罰をするのかは興味が有った。
冒険者ギルドで絡んできた奴等が引き出されたが、皆やつれた顔で生気がない。
俺に話しかけてきた男が引き出され、市民に対する強要と殺人未遂の主犯として、財産の没収と鞭打ち50回の後、犯罪奴隷に処すと告げられ鞭打ちが始まった。
俺にナイフを突き立ててきた二人は、鞭打ち40回15年間の犯罪奴隷。
その他の8人は鞭打ち20回と7年間の犯罪奴隷と告げられ、鞭打ちの後引き立てられて行った。
これは多分に見せしめの意味が強い処罰だ、続くヘッジホッグの家に押し入った7人は前者と比べて割合軽い処罰となった。
股間を焼いたボス格の男が鞭打ち30回と罰金金貨50枚、その他の6人が鞭打ち20回と罰金金貨20枚、支払えない場合は借金奴隷と宣告された。
罰金は先だって通告されていた様で、鞭打ち刑が終わると身内の者に引き取られて帰って行った。
鞭打たれている最中に俺と目が合い、それ以後目をそらず睨み続けてきたが痛くも痒くもない。
これで終わったと思う程俺も奴も甘くはない、お前の考えている事をやらせる気は無い覚悟していろよ。
奴等の帰って行った場所は警備隊の者から聞いているので、陽が落ち皆が寝静まる頃に挨拶に出向く。
男達が帰って行った家は売春宿だ、部下も住み込みとは都合がよい。
クロウが先発で内部を探りに行き、ボスの部屋から挨拶回りを始める。
先ずクロウが侍らせている女達に目潰しをしてから、俺がボスの前にジャンプ。
ぎょっとしてフリーズ、覆面をしているが服装で誰だか判った様だが、突きつけられたショートソードに身動き出来ない。
最も鞭打ち刑の為に、背中が傷だらけでまともに動けそうもない。
手足を縛り猿轡をすると、前回の事を思い出したのか震えている。
女達は手を縛り目隠しだけして騒ぐと殺すと脅すだけにしておく。
クロウの案内で部下達がベッドで唸っている部屋に跳ぶと、介護している仲間や売春婦のお姉ちゃんがビックリしてフリーズ。
仕事が楽だわ♪
仲間の男達とベッドに転がる奴等を縛り、ボス格の男の部屋にジャンプして並べておく。
残りのチンピラ達は目潰しと腹に一発蹴りをいれ、口にボロ布を詰め縛って放置。
粗方かたづけると待機している警備隊の者を引き入れる。
警備隊の者は、邪魔な客の身元を確認した上で放り出している。
今夜は忙しい、警備隊の者が女達を一カ所に集めて見張る。
俺はここからが本番、階下の騒動を知らないボスに金庫を開けろと強要、気分はもう強盗♪
素直に開ける訳無いよな、目の前に拳大の火球を浮かべると瞬時に顔色が悪くなり震え出す。
流石はボス冷や汗を流し拒否するが、再び股間に火球を押し当てると絶叫しながら必死に頷いている。
猿轡をしているから可愛い絶叫だね。
金庫の中は証文と革袋が70~80、全てを余っているお財布ポーチに入れ、隠し金庫が有る筈だと脅す。
何かもごもご言っているので猿轡を緩めると、金を渡すから見逃してくれ逃がしてくれたら他のグループの秘密も喋ると必死に懇願してくる。
それは後ほど警備隊が追求する事だからスルーする。
聞かれた事に素直に従わないならと目の前に火球を作ると、俺がどんな人間か漸く理解したボスは素直に地下室だと喋る。
隠し金庫に案内させるが二度も股間を焼かれ、ガニ股で必死に歩く姿は滑稽である。
1階の用心棒の控え室が地下への入り口、巧妙に作られた長椅子の片方を持ち上げると階段が現れる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます