夜の海で対決

 深夜零時。

 魔王城は静かだった。準備と片付けで疲れ果てたんだろう、城の者達が爆睡している時間──。


「レッド! お前どこに行ってたんだ。アニキの葬儀は俺が全部やっといたからな」


「ありがとうございます」


「ついでに新しい魔王はお前だと手続きもしておいた。まだ子供だからってぶーたれる奴もいたが、俺が後見人に付く事で黙らせておいた」


「ありがとうございます」


「アニキがいなくなって心細いだろうが、心配すんな、俺がついてる。仲良くやろうぜ」


 レッドがうつむいているのを見て、クマ男は頭をかいて外を見る。「夜空を見ながら語り合おうか」と言い出して外に出た。

 クマ男は手の平から出した水で船を作り、陸地も部分的に海に変えて移動して行く。本物の海に突入し、小さな離れ小島に着いた。ザバッと船は海の中に姿を消した。

 水の魔法使い相手に、夜の無人島──。

 ぼくたち、ちゃんと生き残れるのかな。カマキリさんを信じよう。


「さあて、なんか話があるんだろ?聞いてやるよ。ここなら邪魔者はいない」


「事件に、ついてですが……」


「なんだハッキリ喋れ。くだらない内容ならもう帰るぜ。明日からやる事が沢山あるんだからな」


 レッドの腕をぎゅっと掴んだ。視線が合って、レッドはコクリとうなずいた。


「父上を殺害したのは、叔父上ですね」

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