第24話 遊星探偵は少女に戻る


「そんな特殊な身体じゃあ、さぞ生きづらいだろうな……でも、その力が欲しいからと言ってトラックで撥ねて体の一部を奪うなんて許せないな」


「その通りです。敵はリーダーを失って判断能力を欠いた四十九体を脅迫し、司令塔を返して欲しければ自分たちのビジネスに協力しろと迫りました。しかし変換作業は過酷で、エネルギーを使いすぎると『星屑』はもしかしたら死んでしまうかもしれません。そうなったらもう、能島さんは元の能島さんには戻れません」


「……本当に、危ないところでした」


 自分に関する話を隅の方でじっと聞いていた能島が、ようやくぽつりと言葉を漏らした。


「リーダー不在の逆境で一生懸命元のキャラクターを復元していた『星屑』たちを追い詰めた『プラネタリーノ』とその手下たちは、きついお灸を据えられなければなりません」


 璃々砂がやけに仰々しい言い回しで一連の謎解きを締め括ろうとした、その時だった。


「その仕事、俺たちにも手伝わせてくれませんかね」


 突然、エントランスの方から声が飛んできたかと思うと、二つの大柄な影がロビーに姿を見せた。


「あなたたちは……」


 申し訳なさそうな表情を浮かべながら僕らの前に現れたのは、大曲と坂森の二人だった。


「リサイクル会社は辞めました。退職金代わりにこいつを社長の――プラネタリーノの元から失敬してね」


 大曲がそう言って僕らに見せたのは、黒い輝きを放つ隕石だった。


「大きさからすると、結構な力を持っていそうな石ね」


「こいつの力を使えば機械も動かせるし、来訪者との相性次第では念動力もつかえるはずです。現に俺はこいつの力を使って能島さんのバイクを修理しました」


「私のバイクを……」


 大曲はすまなそうに言うと、「ここの裏手に置いてあります」とつけ加えた。


「随分と更生したじゃない。よっぽど私の「メテオストーム」が痛かったらしいわね」


「もうあんな技を喰らうのはごめんです。……そうだ、罪滅ぼしのついでにここのアトリウムも修繕させてもらいますよ」


 大曲が殊勝な態度で言うと、和人が「そうだ、ちょうどいい。仕事を辞めてきたのなら、お二人ともうちで働いてはいかがです?働きによっては給料を弾みますよ」と言った。


「本当ですか?」


 二人が顔を見あわせたのを見て、僕の隣にいた門馬が「いい話じゃないか。……畜生、カメラを持って来ればよかったな」と呆れるような言葉を漏らした。


 ――やれやれとんだ探偵ごっこだったな。それにしてもとんでもない町に引っ越してきちまったもんだ。


 僕は謎解きを終えて得意満面な璃々砂を見ながら、それでもこの不思議な少女の近くにいたらCMのイマジネーションに困ることはないだろうなと妙な期待を抱き始めていた。


              第一章 〈了〉

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遊星探偵メテオラ 五速 梁 @run_doc

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