第28話 願い
「わたし、橋本美咲は、ずっと前からダイスケさんの事が異性として好きです」
「大丈夫…………じゃ、ありません。なんだか、フラフラしてきました」
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その”告白”に対して答えられないで居ると。ミサキが過呼吸で気絶してしまった。緊張する事で、そうなってしまうと言う事は聞いた事はあったけれど。目の前でそうなってしまうと、どうしたらいいか分からない。
両親を呼んだ方がいんだろうか……でも、それじゃどうして俺の部屋に来てるんだ? と言う話にもなりかねないし。さらに、もう両親にはこの事は話していると言っていた。となると、この状況は勘ぐられてしまうし………な。
「――――――どうしたら良いんだ―――――――」
とりあえず、気絶しているミサキをベッドの上に載せて「(気を失った人間って思ったよりも重たいな………本人には言えないけど。)」抱き上げて運んだついでに、呼吸は正常に戻っていそうな事を確認した。
ググって確認したが、パニック症候群? と言うやつかもしれない。緊張する事で呼吸がうまくできなくなるようだ。
と言う事は、さっきの返答がすぐに出来なかった事に対して緊張していたのであれば、起きた時に居なかったらまた倒れてしまうかも。ひとまず。ミサキの手を握りつつ彼女が起きるのを待つ事にした。
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ミサキがの顔色が良くなって来た様に見えた事で、気持ちが落ち着いて来たので、考え事が出来る余裕が出て来た。
今の関係が、おかしいと気づいてから予感はあったが、ミサキから俺に対して異性として好意を抱いていると"告白"された。もしかして―――かもしれない。とは考えていたが、まさか兄から聞くだなんで出来なかったんだ………。
もし『違います。気持ち悪いですね。もう、話しかけないでください』だなんて、言われたら、ショックで立ち直れないよ。今まで、本当の兄妹だと思いこもうとして接してたから余計に………。
ミサキの顔を眺めながら、指先で髪の毛先を遊びつつ。目の前の娘が、義妹になった頃を思い出していた。
小学校に入ったばかりの時期に、両親を事故で亡くして一人きりになった後、うちに引き取られてきたんだ。
当時うちに来たばかりの頃は、なんだか暗い子だな。と思った。今思えば、気を使わないとならない、突然増えた家族にお互いに戸惑っていたんだ。
しばらくしてからミサキは、ずっと新しい家族に対して、敬語使う様になってお手伝いもする様になった。そうすると、母親も義妹を見習ってお手伝いしてね。お兄ちゃんなんだから。と言われてしまった。
その後から、彼女からは良く「兄さん、兄さん」言われる様になったんだ。親戚付き合いの時は『ダイスケ君』『ミサキちゃん』と呼び合ってたのに…………。
兄として振る舞ってねにと言われてからは、呼び捨てする様になった。
その後、ミサキが書類上でも義妹になって、学年があがった頃。妹が虐められそうになった。
それは、授業参観の日に親が来てないと言うことが話題にあがってしまったあと、からかいを受ける様になって、学校で泣き出してしまった。
もしかしたら、それは男子が女子の気を引こうとする様な行為の結果だったのかも知れなかったが。両親を亡くしたばかりの子供に取っては残酷な話だった。
その頃はまだ、新しい兄妹としての距離感を測りかねていた。でも、学校で泣いて居るミサキをみてからは、放って置けないと気づいた。それからはいつも一緒に帰る帰る様にすることにした。
その後から、スキンシップを良くする様になったのを覚えている。
当時は、兄として認めてくれたのかも知れないと思っていたが、もしかしたらあの時すでに異性として好意を持たれていたのかもな。
俺はと言うと、小学生の男子なんて、色恋沙汰なんてほとんど興味ない時期だったし。中学なれば話題に上がってくるが、その時はミサキはまだ小学生だったし。接点はほとんどなかった。
まぁ、ミサキが中学2年になった時「あれ? 俺の妹って、美人じゃない?」とは思いはじめてたが………もうその頃には、妹としてしか見ない様にしていたしな。
色々と思い出して居ると、ミサキが目を覚ました。
『良かった』そう思って、思わず抱き寄せてしまった。
「大丈夫か? さっきまで気を失ってたんだぞ」
「んんぅ? 兄さん?」
「あぁ、お前の兄さんだ。お前だけの兄だよ」
「わたし………だけの?」
「あぁ、そうだよ」
「―――――わたしね。心配だったの」
「なにか、心配させてたか?」
「だって、もう直ぐ家を出て行っちゃうから………」
「まぁ、大学は東京行くつもりだしな………」
「わたしね。ずっと一緒に居たいの…………ダメかな?」
「いや、それは………」
「兄さん"も"、居なくなったら…………耐えられないよ。だから……思い出が欲しいです」
「思い出って?」
「――キスしてもらえませんか? そうしたら、頑張れる気がします」
そう言われたので、少し離れてミサキの顔を見ると。不安そうに揺れている瞳から一筋の涙が流れていた。それを指で拭つつ。
「…………1度だけなら」 そう言ってしまった。
「はい………お願いします」
――――――――1度だけとは言ったが、これで、もう後戻り出来ないだろうな。と言う予感があった。
つづく
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あとがき
ちょっとだけ。先っちょだけだから。
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お知らせ
キャライメージ
近況ノートに投稿いたしました。
https://kakuyomu.jp/users/kaisetakahiro/news/16816927863054579280
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