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殺人の疑いが晴れたことで、彼のなかで私は助手に格上げされたらしい。
それが喜ばしいことなのかは甚だ疑問だが、いつになく機嫌の良い彼を見て、ひとまずは良しとすることにした。
図書館へ到着すると、私たちはいつものようにコンピューター利用室へ向かった。
手錠がないおかげで、今日はコンピューターの操作が大いにはかどる。
遊間が新聞を読み進める速度には到底かなわないのだが、それでも手錠をかけられていた頃に比べると段違いの速さだ。
川を塞ぐ岩が崩れると、せき止められていた川の水が勢いよく流れ出すように、事態というものもまた、一度動き出すと急に進展しだすものなのかもしれない。
昨日までの停滞感が嘘だったかのように、私たちの探し物はその日のうちにあっさりと見つかってしまった。
――小学校の裏山に少女の変死体、首を絞められた形跡も。犯人は近所に住む男子中学生か。
パソコンの画面に表示されたその見出しが目に映り込んだ瞬間、私は喜びのあまり、その場で小躍りしそうになった。
「あった! ありましたよ、遊間さん!」
私が上げた歓喜の雄叫びを聞くや否や、遊間はパソコンを操作する手を止め、私の座る椅子の背もたれに片手をつき、画面を覗き込んだ。
「お手柄だ、助手」
彼はそういうと、記事の概要を手帳にすらすらと書き込んでいった。
「ふむ、記事の日付は一九九七年……今から約二十年前の出来事か。随分、昔だな。場所は、
「やはり?」
私が発した疑問の言葉を無視して、遊間は筆を進めていく。
「少しばかり調べものをしていく」
遊間はメモを取る手を止めると、元居た席に座りなおし、またパソコンを操作し始めた。
「私も手伝いましょうか?」
「なに、手伝いは必要ない。すぐに終わるちょっとした調べものだ。きみはその辺で適当に時間を潰しておいてくれ」
遊間に申し出を断られて、手持無沙汰になった私は、仕方なく図書館の中を散策することにした。
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