キャプテンの嘆き
「なんてことだ」
新聞記事を見てキャプテンは頭を抱えた。
韓国の過激な団体が竹島奪回の為に漁船をチャーターし竹島に乗り込むと伝えていた。
「非武装の民間人です。気にする必要はないのでは」
「甘いぞ」
楽観的な部下をキャプテンはたしなめた。
「独裁政権の韓国だ。このような行動が韓国政府の許可無く出来ると思うか?」
「まさか韓国政府が行っている」
「最悪そうだろう。おそらく民間のなかで過激な奴がいて、そいつを黙認しているだけだろうが」
「しかし、韓国が日本の領土を侵犯するなど」
「いや、ここまでやるんだ。竹島を奪う。いや彼らの言葉で言えば奪回するのだろう。ここまでやってやらない、と言う選択肢はないだろう」
「外交的なブラフの可能性は」
「やり過ぎだ。そもそも在外公館の襲撃を許している時点で日本のことを友好国と思っていない。本来なら止めるべき立場だし、謝罪すべきだ。それを一切行っていない。謝る気が無い。このまま進める気だ」
「しかし、上陸しての占拠など領土侵犯で」
「国際法的には違反だ。だが、彼ら、そして韓国にとっては奪回であり正統だ。そして我々はそれを受けて立たねばならない」
キャプテンの言葉で部下はようやく事態の深刻さを理解した。
部屋の気温が下がったように思えたが、背中を冷や汗が流れる。
「直ぐにメンバーを調査するように命じます」
「頼む。出来れば最悪の事態となることは避けたい」
最悪の事態とは、もちろん武力紛争になることだ。
日本が韓国に負けるとは思っていない。
だが東西陣営の最前線で西側同士が戦うなど東側を利するだけだ。
なんとしても防がなければならない。
「佐久田さんを押さえないと拙い」
最悪なのが政府参与の佐久田さんだ。
日本が勝てる作戦を立てるだろう。
だが、韓国を完膚なきまでに叩きのめす作戦を立ててしまい、しこりが残りかねない。
なんとしても防ぎたかった。
数時間後、そのメンバーの情報がもたらされた。
「キャプテンの予想は当たっていました。全員、韓国軍の予備役です」
慌てた様子で言った。
「だが徴兵制の韓国では珍しくないだろう」
百万の現役と数倍の予備役が居るとされる北朝鮮の侵攻に備え韓国も膨大な現役と予備役を確保するため徴兵制を敷いていた。
そのため韓国の成人男性のほとんどが徴兵経験者だ。
中には警察へ回される者も居るがわずかだ。
しかし、キャプテンの部下は別の点で問題にしていた。
「全員の所属が特戦旅団です」
「なんだと」
特戦旅団は韓国軍の特殊部隊だ。
どの国にもいるが、韓国では珍しい。
規模が大きいのもそうだが、米韓連合司令部の指揮下にない、韓国軍、韓国政府が独自に動かせる部隊だ。
そして韓国大統領の全は空挺旅団、特戦旅団の出身である。
「統幕に竹島の守備を固めるように進言しろ」
「分かりました。しかし、北が実働演習中です。割ける兵力があるかどうか」
「竹島は小さい。三個小隊百名もいれば十分だ」
むしろそれ以上投入すれば過剰すぎて無意味、いや弊害さえ起きかねない。
「彼らをバックアップ出来る体制を整えてくれ」
「できる限り行うように伝えます」
それこそ至難である事は分かっていた。
北の侵攻に備えて多くの部隊が北海道に行っている中、韓国に対抗するための兵力を出すなど難しい。
「それを狙って、韓国と北が手を組んだのか」
「まさか……」
「あり得ないことではない。調べてくれ」
「はい」
早速、調査が始まった。
韓国と北日本が手を結んでいることを示し韓国が本気である事を、証明して武力紛争を未然に防がなければ、対応策をとらなければならない。
同時に竹島にも警備兵力が三個小隊九〇名に本部を加えた一〇〇名に増強され上陸を防ぐ手立てが打たれた。
さらなる強化を求める声もあったが、北日本が動員を含む演習が行われている状況では、回す余裕がなかった。
バックアップの体制はそのままだった。
それでも竹島に兵力を出したことは報道されたし、さらなる部隊増強も計画されていた。
だが手遅れだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます