サイパン島の日米陸上部隊司令部
「surrender! surrender!」
日本軍の猛攻にたまりかねた米兵が白旗を持ち両手を上げて降伏してきた。
「見つけたぞ! 米兵だ!」
「俺たちの町をよくも焼き払いやがって!」
「姪の仇だ!」
「stop! help!」
米兵の懇願は聞き入れられず、銃で撃ち抜かれ、銃剣で刺し殺された。
B29で待ちを焼き払われ被害に遭ったことのない日本兵はおらず、彼らの怒りは頂点に達していた。
特に航空隊関係者は徹底的に殺された。
「守り切れ! 飛行場は俺たちの陣地だ!」
ルメイは、部下に命じて徹底的にアスリート飛行場を守ろうとした。
飛行機の整備が専門の整備兵にそのような事は不可能に近かった。
しかし、日本軍の蛮行、降伏した米兵に対するリンチが相次いだため死に物狂いで反撃する。
無茶なルメイの命令でも彼らは必死に銃を持って抵抗し、陣地を守ろうとした。
だが、所詮は飛行場管理の兵士であり、陸戦の専門教育を受けた兵士を前にして敵うはずがなく、日本軍の猛攻の前に、徐々に追い詰められていく。
「司令官! 最早無理です。撤退を」
「ダメだ。ここを占領されたら空襲が出来なくなる」
「しかし」
「逃げ出す奴は軍法会議にかけろ!」
直後、司令部の近くで激しい爆発が起きた。
日本軍の戦車が迫ってきていた。
「日本軍の攻撃です! 敵の戦車がやって来ました。もう保ちません」
「だからどうした! 反撃して追い払え! 撃破しろ!」
頭に血を流しながらルメイは吠える。
「最早これまでです! 撤退してください!」
「だめだ! 飛行場と爆撃機を守り切れ!」
強硬に言うルメイを見て周りの幕僚は、頷くと、ルメイに掴みがかった。
「な、何をする」
ルメイはぐるぐる巻きに去れ
日本軍に降伏を直後、爆撃集団は申し込む。
だが、本土を空襲された日本軍は頭にきていて降伏を受け入れなかった。
そのまま攻撃し、捕虜は殺された。
日本軍の所業を見て蒼白となった彼らは、戦うしかなかった。
ただ、徹底防御を命じたルメイとは違い、彼らは戦いにくい平野から北部の山岳地帯へ撤退。
かつて日本軍が立て籠もった洞窟などを使い、米軍は死に物狂いの防衛戦を行った。
「どういうことだ! こんな小島を一日で制圧できないなんて弛んでおるのではないか」
サイパン島上陸部隊司令官、牟田口廉也大将は部下達に向かって叱咤する。
マレー攻略戦のあと、ビルマ方面の司令官に任命され、インド方面への侵攻を行った。
当初は、無謀とされ許可されなかったが、牟田口は独断、偵察行動と称して進撃するも、案の定、軍は包囲され窮地に立たされる。
丁度、日本海軍がインド洋で通商破壊作戦を行った影響により、インドの英国軍が窮地に陥ったため撤退したお陰で、危地を脱し、作戦に成功。
その戦功を以て、大将へ昇進し今回の作戦に抜擢された。
だがビルマの一件と、盧溝橋事件を引き起こした張本人である牟田口の指揮能力に陸軍の良識派は疑問を呈した。
牟田口に代わりインドネシア方面とソロモン方面で米軍を相手に戦った本間大将を推す声が強かった。
だが、緒戦のマレー作戦、さらにインパール作戦で陸海の共同作戦、上陸作戦を成功に導いた功績から、牟田口が選ばれた。
本間大将の場合、ジャワ以降は、ソロモンでの後退戦が多く、前進を良しとする中央での評価は低く、退けられ牟田口が任命される運びとなった。
「直ちに突撃し制圧するんだ! テニアンとグアムも残っている! 直ちに制圧するんだ!」
「了解しました。では私が前線に行き、指導を行いましょう」
「おお、行ってくれるか辻中佐」
辻政信。南方作戦の成功とインパール作戦の成功で本国に栄転。
マレー作戦とインパールで共に戦った牟田口の強い希望もあり、参謀として参加していた。
「直ちに行け」
「はい。すぐに片付けて参ります。しかし、閣下。時間を浪費することはありません」
「どういうことだ」
「既に橋頭堡は確保しており、大兵力を必要としていません。そこで、直ちにテニアン島へ侵攻し各島に橋頭堡を確保。確保終了次第グアムへ向かい、上陸。グアムにも橋頭堡を作り上げます。迅速に占領するため、兵力を有効活用するべきでしょう。軟弱な米軍などすぐに制圧できます」
「よし、その方針は良いぞ。直ちに実行しろ」
直ちに牟田口は辻の作戦案を承認し、実行を命じた。
海軍の安田少将は反対したが、陸軍の方が階級が上であり、阻止は出来なかった。
上級司令部の反対を期待したが、陸軍への配慮から、山口は口出しせず、大本営に上げられた。
そこで連絡会議が開かれたが、空になって帰還する輸送船に増援を乗せ、送り込む事だけを決定し、数日の時間を浪費したあと、牟田口の作戦は追認される。
当然の事ながら牟田口は迅速に、昭和陸軍流独断専行を行いグアムとテニアンへ上陸。
各島に橋頭堡を作り上げた。
だが、米軍の抵抗により、進撃と制圧は遅れた。
去年の撤退以降、各島でゲリラ戦を行っていた兵士を収容、後送したのが上陸作戦、唯一の成果とされている。
そして、ここが日本軍の作戦の最高潮となった。
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