サイパン島上陸
日本軍のマリアナ奪回作戦、最終段階となるマリアナ上陸は五月上旬にサイパン島上陸から始まった。
最初の侵攻は、夜に始まった。
海からではない。
硫黄島から飛び立った輸送機から次々と空挺部隊の隊員が降下した。
中野部隊を含む、彼らは降下直後から遊撃戦を展開。米軍を混乱させるべく行動を開始した。
直後、第二陣がやって来た。今度はグライダーが切り離され、そのまま飛行場へ強行着陸。
飛び出した彼らは飛行場の占領を始めた。
米軍が空から援護できないよう飛行場を抑えるのが役目だ。
陸軍の塚田少将率いる第一挺身集団、海軍の堀内大佐率いる横須賀第一特別陸戦隊を中心とする彼らは、飛行場攻撃のために用意された部隊だけあって行動は迅速だった。
地上に降り立った彼らは、各自目標へ向けて移動。
少数でも攻撃を行い、米軍の指揮系統や防御拠点を破壊し、麻痺させていった。
特に飛行場周辺は、昼間の攻撃と彼らの抵抗により離着陸不能となり、米軍は航空戦力を喪失した。
そして、夜明け頃より、第二艦隊による艦砲射撃が行われた。
目標への正確な射撃など不可能なため、島の各所を区切りそこへ、担当艦が砲弾を撃ち込む作業を行うのだ。
上陸予定地点周辺への猛烈な射撃により、上陸予定地点周辺はクレーター状となり壊滅したと思われた。
そこへ、陸軍の第五師団と第一及び第二海上機動師団が機動艇と二等輸送艦を先頭に上陸地点へ向かう。
機動艇も二等輸送艦も直接砂浜へ乗り付け部隊を上陸させるために開発された艦艇で、呼び名が陸軍が機動艇、海軍が二等輸送艦という違いだけだ。
陸軍と海軍で別々に計画されていたが、同じ目的なので、量産性と運用性を上げるためタイプが統一された。
他にも陸軍の揚陸艦や、海軍の一等輸送艦から大発が降ろされ、浜辺へ向かって突進していく。
「こりゃ、えらい光景だ」
洋上からこの様子を見ていた将兵達は久方ぶりの上陸作戦、恐らくマレー以来の作戦規模に感涙を流した。
無数の大発が日の光を浴びて敵に突っ込むなど、大戦中期以降なかった。
戦局が劣勢になり、中々大規模な上陸作戦が出来なかった事もあり、久方ぶりの大部隊に将兵達の士気も上がっていた。
「突撃!」
浜辺に機動艇がたどり着くと、ハッチが開かれ、中から歩兵と戦車が飛び出した。
三式戦車が砲撃を浴びせつつ、前進しトーチカとなって歩兵の盾となり橋頭堡を確保した。
海軍も、安田義達少将率いる特別陸戦隊複数個と特二式内火艇を出し上陸地点の確保にあたらせている。
しかし、米軍の反撃は殆どなく、彼らは順調にサイパンの内陸部へ進出していく。
また順調に進撃できたのには訳があった。
「おおい!」
上陸した部隊に駆け寄る人影があった。
サイパン島守備隊、第四三師団の生き残りであった。
去年のサイパン陥落後、ゲリラ戦を展開していた。
また、中野部隊の潜入工作員が密かに入っており、米軍の守備陣地を確認。
地形を把握し、上陸部隊を先導していた。
結果、日本軍は、迅速に内陸部への進出に成功した。
だが、完全占領は難しかった。
「飛行場にて敵の抵抗あり!」
「北部山岳地帯において敵の抵抗激しい!」
度重なる空襲により、米軍は地下退避壕を多数設置。
それらを、拠点に激しく抵抗していた。
勿論、支援に砲撃や空爆が行われたが、偽装するなどして発見を遅らせ、攻撃されないようにしていた。
激しい抵抗に流石の日本軍も制圧できず、苦戦を強いられる。
「米軍の抵抗が激しいです」
「これまでの相手と違うな」
日本軍は開戦劈頭の大規模な上陸作戦を迅速に成功させ、勢力圏を大きく広げた。
時に、倍以上の敵を相手に戦闘を行い降伏させたことさえある。
だが、それはあくまで治安維持を目的にした植民地軍相手だ。
警察が小銃と大砲を持った程度の戦力であり、完全武装で戦闘を目的とした軍隊、日本軍相手になど、数が多くても出来なかった。
一方、米軍は、完全な戦闘のために装備も訓練も積んでいる兵力が投入された。
サイパン島攻略に参加した第二七歩兵師団と第二海兵師団が投入され激しく抵抗する。
彼らは日本軍を真似て地下に陣地を作り、島の各所で抵抗する。
米軍は必死だった何しろ、日本軍に捕まったらとんでもないことになる。
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